卒部式で伝えたかったこと。これまで見てきたこと、考えたことの整理。
息子は野球が大好きです。私はずっとスポーツは苦手でした。運動が嫌いというわけではないのですが、特定のスポーツに一生懸命打ち込んだ、夢中になって楽しんだ、という経験はありませんでした。
彼が小学校卒業と同時に学童野球の卒部にあたり、これまでを振り返りました。私はただただ応援していただけですが、子どもたちの素直な涙に感動したり、話を聞くことで自分の偏った見方に気づいたりする機会をくれました。そのときの思いを忘れないように、書き留めておきたいと思います。
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息子は野球が大好きでしたが、クラブチームへは同学年では一番遅く入部しました。練習をよく見に行きましたが、経験の差はかわいそうなくらい歴然としていました。それでも一生懸命で、週末の練習を心待ちにしていました。
なかなかうまくいかないときには、練習中にひねくれてグラウンドでコーチに諭されてたり、メンバーと喧嘩したり、見守ってくれてるママさんが声をかけてくれたり、そんなシーンも見てきました。
試合では選手として出場できる機会は多くはありませんでした。それでも自分にできることとして、声を張って応援し、特にボールに触れるボールボーイは、「これだけは誰にも負けない」と全力で取り組んでいました。
また、野球はミスがつきものだから、ミスをしないように一生懸命練習するそうです。それでも試合でミスをしてしまった時、ベンチや応援席からグラウンドの選手にかけられる声は「切り替え!切り替え!」「次!次!」という言葉です。
ミスをした本人が一番よくわかっているから、その挽回に全力で集中する。特に試合中はいつまでもくよくよしていたら、次のプレーに支障がでるからでしょうけれども、そういうのって、すごくいいなぁ、素晴らしい!と思いました。
ですが、いざ息子がミスをすると、「なんで!?」と怖い顔になって叫んでいる。
「せっかく出してもらえた機会なのに、なんでここで失敗するのぉ!?」
「またやっちゃったぁ!?」
この矛盾からはなかなか脱出できず、、、、。
「見ているより、難しいんだよ!ママもやってみたらわかるよ!」
そうですよね。はい、すみませんでした。
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6年生になってしばらく経った頃、今までやったスポーツの中で、何が一番好き?と聞いたところ、野球!と即答されました。「だったらもう少し早く野球に転向したほうがよかったね」と私が思っていたことを口にしました。
「そうだよ、もっと早く始めればよかったよ!」とやはり言うかな、と思ったのですが、次のような意外な言葉が返ってきました。
「いや、そうは思わないよ。僕が入ったとき、みんな僕よりとってもうまかったから、早く追いつきたいと思って一生懸命練習できたし、頑張れたんだ。だから、僕はこれでよかったと思っているよ。」
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決して長い期間ではありませんでしたが、みんなと一緒にできた練習や試合では、一生懸命に取り組むからこそ、ひとり悔し涙を流したり、みんなと声を上げてよろこんだり、様々なことを感じてきたのだと思います。
そうした経験のない私からは、思い出される一つ一つの場面がとても輝いて見えてきました。でもその輝きの中にいる、輝きを放っている当の本人たちにはどんな景色が見えていたのかな。
入部が遅くても「それでよかったと思う」「早く追いつきたくて一生懸命練習できた」という言葉から、当の本人は変えられない過去を憂うことはせず、目の前の、そしてその先の目標をしっかり見定めて行動していたことがわかりました。
だからこそ、練習や試合で起こったことに対してのとらえ方も向き合い方も、きっと私が思うようなこととは全く違っていたのでしょう。
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6年生になり、たくさん試合に出る機会があると思ったら、コロナウイルス感染拡大の影響などで、多くの試合が中止になりました。
それでも、見事なホームラン第一号を見せてくれました。
努力は報われるし、報われるように努力する。ピンチの時こそ大きな声を出す。お互いに声をかけ合う。最後まであきらめない。
文字にすると平易ですが、それらを体現して結果を出す、それをあなたはまざまざと見せてくれました。同じように、私もあなたにこれから何かをみせることができるでしょうか。
ひとつだけ確かなことは、今後も応援をし続けたいと思うことです。
卒部、おめでとう。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。