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一寸先は光(あるいは、腹の立つ女)

3年ぶりに、アイコンを変えました

photo by 瀀さん


26歳で書いた前作
『あなたを食べて生きてきた』が二〇二二
お披露目した日に撮ってもらった写真を、
記念に、ずっとアイコンにしていました

次に満足いくものが書けたら変えよう、と
願掛けのつもりでした

ようやく新作zineを出せて
たくさんの、本当にあたたかいご感想、
そして沈黙にも
生きてきた時間まるごとを、抱きしめていただきました

ご褒美のような年の瀬でした
椎名林檎のLive、大好きな人たちとの再会、
敬愛する調香師のsaklaus narika さんに、
zineをイメージした香りもつくっていただいて

zine『はなせなかった』をイメージして
調香していただいた香り

いつもの美容室plateauxでは、向田邦子hairにしていただき
すっかりその気になって、一人、再読祭をして
その圧倒的な才にぶん殴っていただき
世界一好きなエッセイ「手袋をさがす」に、何度目かの大号泣をして

新作完成記念、とかなんとか
各方面に言い訳にならない言い訳をしながら、
大好きなお店physisで一目惚れした
ヴィンテージのコートを、思い切ってお迎えして

初詣で袖を通したそのコートは、あたたかすぎて
三が日は家の中でも毎日着て
気がついたらキラーチューンを口ずさんでいた

なんだか無性に、生きていることがうれしくて
これまで出逢ってきた方々の笑顔に照らしていただいた、
有り難い年明けでした

禍福は糾える縄の如しと言うから
幸せであればあるほどこわくなるけれど
だからこそ、生きるって、こういうこともあっていいんだ、という
そんな尊い気持ちを、書き残しておこうと思いました

このコート着てるところ撮って、と頼んで
お正月にお散歩に出かけたときの写真
肝心のコートはあまり写っていませんが、
奇跡の一枚があったので、近影としました

奇跡の一枚

それはかわいく撮れてる、とか、綺麗に写ってるね、とかでなく
作り笑いばかりうまくなる私の内側が取りつくろえずに表出した、
その一瞬をとらえられてしまった、と感じる
そういう意味の、奇跡です



子どもの頃は、笑っていない顔の方が好きでした
カメラを向けられると、どんな顔をしていいかわからず
歯を見せて笑っているような写真はあまりない

参考画像


20代前半は、どうしたら少しでもかわいく写ることができるのか、気にするようになりました
楽しくなくても微笑むことに慣れたのは
レンズの前だけではないかもしれません

あらゆる情報や言葉の蓄積が、自分を測る、ものさしでした
撮られた写真を見ては悲しくなり
ときに、しばらく使いものにならないほど落ち込みました
恥ずかしいですが、当時は切実でした

最近は少し考えが変わってきて、写りの良し悪しよりも
内面の葛藤が映り込んでいるときこそ、うれしいと感じる
これはそんな数少ない一枚です

姿なんてどうでもいい、とはまだなれなくて
何年経っても撮られることに執着してしまうのは
歳を重ねた先にこそ、
自分の本当の姿のようなものがあるのではないかと
在りたい自分に、いつか出逢えるのではないかと
いつまでも諦められずにいるせいでしょうか



zine『はなせなかった』に登場する、はたちのわたしは
己の内面や外見、そして好きな人にも、
醜さや弱さ、ずるさを、どうしても許せなかった
そんな潔癖も、少しずつやわらいできたように思います

その都度、ちゃんと怒って、地団駄を踏んで
諦めと、すこしの自信がついてきたのかもね

これから、どんな顔になっていくのかな
あわてたり、取り乱したり、恥をかいたり
怒ったり、浮かれたり、落ち込んだり
思い切り泣いたり、笑ったりしながら
美しい顔、じゃなくて「いい顔」を目指して生きたい

この写真、母(毒舌)からは(おそらく)愛を込めて「腹立つ顔」と言われましたが、笑
かえって、私らしいかもと思いました

たかだか写真一枚に、これだけ長々と書かないと気が済まない性格です
愛想笑いの関係性の先で深く関わってみると、たぶん腹立つ女です

でも、おもしれー女、と言ってくださる物好きな方も
お一人かお二人、いるかもしれません
そんなあなたに生かしていただいて、
あとふた月ほどで、29歳になります

20代最後の年の抱負は「円熟」としました
一層自分を叱って、笑って、まるく熟していきたいです

二〇二五もよろしくお願いします



己と刺し違える覚悟で、あれを書いたこと
一度、ちゃんと刺し違えたこと

私はすぐ忘れて、いじけはじめるから
せめて山茶花の鮮烈な紅色と、このコートに託す

一寸先は光であること
何度見失ったとしても、ちゃんと思い出せるように

フィンランド製のコート!

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