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休んでいいよ、が聴こえない

五月半ば、残業中に突然、 左耳だけ音が低く聴こえた夜がありました 音響の機械が壊れたのだろうと思ったのですが、 帰宅して、部屋の電気をつけて音楽を流したとき、 はじめて自分の耳の問題だと気がつきました そこから病院に行き、 あれよあれよと言う間にメニエール病の診断を受け、 何もかも追いつかない中で、 お仕事をしばらくお休みすることになりました 限界が何回来ても、何回もやり過ごして、 うん、なんとかやれている、 と思っていたこの生活と、 コントロールできているはずだった体と

    • 映画『浮雲』に愛と性の哲学で挑んだ

      私はずいぶん前に、 恩師のことを恩師、と呼ぶことをやめた 恩師、のことを 恩師、と呼んでいるうちは それは 思慕を言い訳にした依存だと思うようになったから 「あの人のおかげで今の私がある」 そう言い切ることの快感は 確かに知っているが たったひとりとの、 たったひとつの出逢いが すべてを決めるわけではないと いまの私は知っている 5年間の学生生活の最後に書いた この短い論文 たった1年だけ通った、 もうひとつの母校からの卒論として 因縁と呪いへのひとつの決別として 生き

      • つべこべ言わずに書くのよ

        って、何回言ってもらっても忘れるんだからね 2023/11/19 1年ぶりに逆卷亭に遊びに行った日記 1年前 2022年の秋、 突然、「古本つかみどり大会」のおふれが出た 新居に移るにあたって処分予定の膨大な蔵書を 好きなだけ持って行っていい、との呼びかけに釣られて、 ひとり電車に揺られ、戸畑まで出かけた 車窓から、旺盛に伸び広がる葛の緑をずっと眺めていた 「鍵はかけてないから、勝手に入って、 勝手に取って行っていいっすよ」 そう聞いてはいたものの、 いざ当日、知ら

        • 『水俣・福岡』展の覚書 知らないから知ることから始めた だが、 なぜ、こんな目に合わなければならないのか なぜ、私だったのか その問いには覚えがあった なくした声 取り戻したのは書く力 書けなさが思い出させた描く力 描くことの先に居た人たち 見た景色 風 山 土 庭 根を生かすために花は枯れた あわいの先にみた神々の祝宴 狐の嫁入り 坂口恭平のうた 渡辺京二の手料理 カワイソウニ 不知火海 蛸 アルテリの赤 椿の赤 かつて私の身に起こったことは引き抜いても引き抜いても生

        休んでいいよ、が聴こえない

          点と線

          さびしい夜にはSNSに何かを上げたくなる 私には恋人がいて 古いものだがカメラも持っていて 写真をたくさん撮る 素敵な恋人の素敵な写真を載せたいと思うが なかなか最後のボタンが押せない いいね機能のある場所に 大事な人をさらけだすことによって 私はなにを得ようとしているのか なにをたしかめようとしているのか まだわからないから わからないことにしていたいから わからないふりをして さびしい夜にはボタンを押さずにいる できるだけ手っ取り早く できるだけ、傷つかない方法で

          点と線

          あなたを食べて生きてきた

          zine『あなたを食べて生きてきた』 お手に取ってくださったみなさま、 改めてありがとうございます。 はじめて一人でつくったzineです。 さらけだすzineピクニック vol.3にて お披露目しました。 さらけだすzineピクニック主催のなかむらみさきさん、 目の前で読みながら大号泣してくれた成実(ナルミニウム)さん 二人に手を引かれて、zineのいろはも分からず(後にそんなものは無いと知る)参加した第一回zineピク、 推察シリーズの先に、こんな景色があるなんて、 一

          あなたを食べて生きてきた

          立ち止まっている人にだけ見える景色がある

          「自分の中に毒を持ちなさい」という恩師の言葉が、 私をずっと支えている 野球観戦の日だった 豪速で飛んできたホームランボールが私が1秒前まで座っていた席に弾けて、 ドームの天井の穴から夜空に跳ねた 間一髪で避けた 骨にまで響く重い音がした もう何年も前のことなのに、白球が目前にきた時に死を覚悟したあの感覚が、 まだ私の首のあたりをぞわっとさせる ぎりぎりまで避けることができなかったのは、鈍臭さのためだけではないだろう いつ死んでも良いと思っていた 大学2年の冬、籍を置いて

          立ち止まっている人にだけ見える景色がある

          『推察』より「ガチ恋オタクは他者を知る あるいは夜半の明星」

          ある朝、目を覚ましたら、あなたがいなくなっていた。 さようならの手触りははじめからそこにあったし、手を伸ばせば伸ばすほど、熱が高ぶれば高ぶるほど、別れの確信は強まっていった。 あんなに近くにいたはずなのに、生きながらにして、手の届かない場所に行ってしまった。いや、はじめから二人の間には圧倒的な距離があった。 別れの確信が強まるにつれ、その事実から目を逸らすために手を伸ばしてきたのだろうか。今となっては思い出せない。 あなたと共にあった自分の心までもぎ取られたような心地がす

          『推察』より「ガチ恋オタクは他者を知る あるいは夜半の明星」

          1に手を伸ばして8を選んだあなたへ

          推しが新曲を出す 今日の疲れ全部飛んだ これから満月に近づいていく上弦の月を選んだあなたが好きだ そして、遠い故郷の名前を曲名に据えたと知って苦しくなった 家族の反対を押し切って、飛行機で一人異国に飛び立ってから、 どれだけのものを細い背中に背負い続けてきたんだろう 10代の彼がその覚悟を決めた時、世界はこんなじゃなかったはずだ 家に帰れなくなったら 二度と家族に会えなくなったら 仲間が兵役に行くことになったら 現実の出来事として今それらが目の前にあるあなたのこと、私は

          1に手を伸ばして8を選んだあなたへ

          「推すこと」について本気出して(二人がかりで)(zine作って)考えてみた

          2021年春。 偶然に「推し」と出逢い、瞬く間にガチ恋オタクと化した私。 理性も、圧倒的な距離も、家族も恋人も友人も、当時の感情の暴走を止めることはできなかった。 激しく加速する恋に引き摺られながら、自業自得な孤独の中で、私は日毎に消耗していった。 走り疲れ、ふと隣を見ると、 同じ頃にK-POPアイドルグループに凄まじい加速度と熱量でのめり込み、連日連夜が完全に躁状態の成実さんがいた。 そっちは毎日パーティーみたいで楽しそうだな...と私がぼやけば、そっちこそどうしてそんな

          「推すこと」について本気出して(二人がかりで)(zine作って)考えてみた

          アイドルをやっていた頃の話

          をまだ書いたことがない。何かを書きたい朝なので挑戦してみる。 ・ 大学3年の頃、アイドルグループのスカウトを受けた。当時所属していたアカペラサークルのステージを偶然見ていた事務所の社長が、人づてに声をかけてくれた。 ・ 瞬時に「お断りしよう」と判断した。アイドルという存在は、なんだか苦手だった。自分から最も遠い存在だと思って生きていた。 ・ 私がテレビを一番見ていた高校生の頃は、秋元康の全盛期だった。AKB48は「神7」の時代で、制服を着た「かわいい」女の子たちが、甘い

          アイドルをやっていた頃の話