廃遊園地の殺人(レビュー/読書感想文)
廃遊園地の殺人(斜線堂有紀)
を読みました。2021年の作。
私が斜線堂さんの作品を読むのは二作目です。
前に読んだのは第21回本格ミステリ大賞の候補作にも選出された『楽園とは探偵の不在なり』(2020年)。ふたり以上殺した者は文字どおり地獄に落とされる世界で起こる連続殺人――というパラドックスな謎がとても魅力的な特殊設定ミステリでした。
さて、今回は、『廃遊園地の殺人』です。
本作の舞台は、20年前に起こった銃乱射事件により廃園となった遊園地「イリュジオンランド」。
現在では、在りし日の姿は失われ、すっかり廃墟と化したその地に複数の招待客が集う場面から物語は始まります。
それにしても――
ここまで架空のロケーションへの共感を極めようとした作品も珍しいのではないでしょうか。
なにしろ巻頭には本作の舞台である「イリュジオンランド」の園内ガイド(!)が4ページにわたって(しかもカラー!!)収録されています。
念のため。私が読んだのは文庫版です。
ミステリ好き界隈では、いわゆる作中の「見取り図」に興奮する(!?)という人は少なくありません。
たとえば館ものであれば建物全体の見取り図が巻頭に収録されていたり、あるいは事件現場を表す図が途中挿入されていると嬉しくなるといった具合ですね。
本作の園内ガイドもその延長と捉えることは出来るのですが、無駄に(失礼)労力がかかっていて個人的には素晴らしいと思いました。ワクワクさせられます。
本格ミステリを謳う本作なので、もちろんこうしたツールは単なる装飾ではなく、しっかりと推理の「補助線」として機能することはここで申し上げておきます。
メイントリック自体はオーソドックスなものですが、一方で、解決編で展開される事件解明のロジックではしっかりと遊園地の構造が織り込まれており、この点こそ本作の真骨頂であると感じさせられました。
キャラ読みもする私としては、コンビニ店員の廃墟(好き)探偵という設定もキャッチーで良いと思いました。
探偵役の眞上さんは戦闘能力高めで頼りがいがあります。ハードボイルド作品は別として、本格ミステリではフィジカルに強い名探偵は意外と少ないんですよね。
(さて、どうしてなのでしょう――)