シュシュ

ミステリを中心に読書の記録や感想など投稿します。たまにミステリ風味のオリジナル小説も投…

シュシュ

ミステリを中心に読書の記録や感想など投稿します。たまにミステリ風味のオリジナル小説も投稿します。2024年1月から開始。

マガジン

  • 主に読書の記録

    読書の記録や感想をまとめています。本格ミステリが多いと思います。

  • 大阪彩ふ文芸部

    • 38本

    書くのは、楽しい。 あなたも何か書いてみませんか? 2024年1月より、彩ふ読書会は文芸部活動を行います。 大阪会場の読書会に過去一回以上参加経験のある方でしたらどなたでも部員になれます。入部・退部は自由です。 入部お待ちしております!

  • 雑記

    あれこれ思ったことを記します。

  • 小説_聖徳をまとう

    ミステリー風味のオリジナル連載小説です。 あらすじ/ 出来心から娼婦ユミの跡をつけた私だったが、不注意がきっかけでそのストーカーじみた行為はユミ本人に知られるところとなる。ユミは自殺するが、やがてユミと、私の同窓生・美月とが同一人物であることを示唆する情報を得て、私は困惑する。何故なら美月は、ユミの自殺より以前、一年以上前に既に事故死していたから。ユミは「身バレ」を苦に自殺したのか。先に事故死していた美月との関係は。そして、聖徳太子伝説の眠る地で新たな殺人が。見え隠れする「歯」にまつわる縁起。聖徳太子の歯は何故盗まれたのか。

最近の記事

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聖徳をまとう_一/ストーカー(1)

  ◇  仕事をやめて地元に帰ることにした。  早朝、引っ越し業者に少ない荷物を預け、地下鉄で名古屋駅へ向かった。懐が寒いので新幹線は使わない。名鉄百貨店前のナナちゃん人形に横目で別れを告げつつ近鉄特急の乗り場を目指す。およそ二時間電車に揺られ、十年ぶりの大阪に降り立った。  アパートは既に契約していたが実際に目にするのは初めてだ。大阪南東部に位置する富田林市、その北の玄関口にあたる貴志駅至近に私の新たな寝床はあった。三階建て鉄筋コンクリート作りの古アパート。一階部分の

    • 檜垣澤家の炎上(レビュー/読書感想文)

       檜垣澤家の炎上(永嶋恵美)  を読みました。新刊です。  初読みの作家さん。文庫書き下ろしにして、800ページ近い大作でしたが、一気読みでした。  ひとこと、感想としては――  次の朝ドラの原作、これで良いんじゃないでしょうか。  明治から大正の時代、横浜の商家を舞台にした――これはもはや「大河小説」と言って良いと思います。主要な登場人物の多くは女性。あらすじにもありますが、政略結婚、軍との交渉、一族の秘密など陰謀渦巻く時代に智略、謀略をめぐらせる女傑たちの物語です

      • 神器―軍艦「橿原」殺人事件―(レビュー/読書感想文)

         神器―軍艦「橿原」殺人事件(奥泉光)  を読みました。2009年の作。  さて、「文豪」という言葉を贈りたい作家さんは人によって意見がわかれそうです。既に歴史的な評価の定着している過去の作家を除いて、存命の現役作家限定となると尚更ですね。本好きのあいだなら結構盛り上がりそうな話題かもしれません。文芸一般(ジャンルレス)であれば、村上春樹さんの名を挙げる人が多そうでしょうか。  あくまで個人的な意見ですが、もし、私が現在存命のミステリー(をよく書く)作家を対象限定にするな

        • 読んだら最後、小説を書かないではいられなくなる本を読んで

           読んだら最後、小説を書かないではいられなくなる本(太田忠司)  を読みました。新刊です。  いわゆる小説書きのノウハウ本です。作者の太田忠司さんは狩野俊介シリーズなどで有名なミステリ作家さんです。  個人的にこの種の本をしっかり読んだのは久しぶりでした。  早々に脇道に逸れるようですが、これまで私がいくつか読んできた小説ノウハウ本のなかで強く記憶に刻まれているものを挙げると以下の2冊です。いずれも読んだのは20年近く前。せっかくなのであわせて紹介します。 1、作家・

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        聖徳をまとう_一/ストーカー(1)

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        記事

          鬼神の檻(レビュー/読書感想文)

           鬼神の檻(西式豊)  を読みました。新刊です。  突然ですが、皆さんは文庫巻末によくある「解説」を本編より先に読みますか? それとも本編の読了後に読みますか?  私は先に読むことが多いです。ちなみに本編と同じくらい解説を読むことも好きです。そんな人への配慮なのでしょう。特にミステリー小説の解説ではネタバラシに繋がる記述のある場合は大抵その手前で[注意]を促してくれています。「この解説は本編読了後にお読みください」と。親切ですね。  何を言いたかったかと言いますと、本作

          鬼神の檻(レビュー/読書感想文)

          聖徳をまとう_八/縁は導く(2)

           前話はこちら   ◇  正面から大股で歩き迫るのは紛れもなく因縁の男だった。  まるで意想外の邂逅であったが不思議と感情は波立たない。未だこちらの存在に気が付かない様子の男――八城の顔を私は無遠慮に見据えた。不意に私が立ち止まったため、隣でたたらを踏む雄平。もの問いたげな友人を私は黙したまま手をかざすことで制する。  ややあって八城と私の視線は交錯した。刹那、向き合う男の体躯から伸びる長い足はその場で静止した。二メートルに満たない距離を挟んで互いを凝視する暫時。路地

          聖徳をまとう_八/縁は導く(2)

          暗幕のゲルニカ(レビュー/読書感想文)

           暗幕のゲルニカ(原田マハ)  を読みました。2016年の作。  ピカソの大作〈ゲルニカ〉を巡る実話に着想を得たアートサスペンスです。  本作は、大戦下の欧州と2001年同時多発テロ以降の現代、ふたつの時代の物語が交互に進行する構成を取ります。前者はピカソの愛人であり写真家のドラ、後者は同時多発テロで夫を亡くしたキュレーターの瑶子を中心に〈ゲルニカ〉を守り、そして〈ゲルニカ〉と共に戦争に抗う人々の姿が迫真の筆致で描かれます。  さて、この記事の投稿日から遡ること4日前の

          暗幕のゲルニカ(レビュー/読書感想文)

          日本扇の謎(レビュー/読書感想文)

           日本扇の謎(有栖川有栖)  を読みました。新刊です。  有栖川版・国名シリーズ30周年記念の最新作です。  愛蔵版のハードカバーバージョンも同時発売していますが、私はノベルス版で読みました。ノベルス(新書判)で小説の新作を読む体験も今は貴重になってしまいましたが、中高年世代はノスタルジーを刺激されます。この判型かつ厚めの紙の手触りだけで新刊ミステリーを読んでるって実感が湧いて嬉しくなります。  今もノベルス判で新作が出るミステリーと言うと、京極夏彦さんと森博嗣さんの作

          日本扇の謎(レビュー/読書感想文)

          俳優探偵 僕と舞台と輝くあいつ(レビュー/読書感想文)

           俳優探偵 僕と舞台と輝くあいつ(佐藤友哉)  を読みました。2017年の作。  佐藤友哉さんは2001年に「フリッカー式〜鏡公彦にうってつけの殺人」でメフィスト賞を受賞デビューしています。  当時は、私がメフィスト賞作品をはじめとして講談社ノベルスにどっぷり浸かっていた時期で、佐藤友哉さんの鏡家サーガにも結構ハマっていたことを覚えています。「エナメルを塗った魂の比重〜鏡稜子ときせかえ密室」、「水没ピアノ〜鏡創士がひきもどす犯罪」等など。懐かしい。  その後、佐藤さんは

          俳優探偵 僕と舞台と輝くあいつ(レビュー/読書感想文)

          伯爵と三つの棺(レビュー/読書感想文)

           伯爵と三つの棺(潮谷験)  を読みました。新刊です。   潮谷さんは2021年に「スイッチ」でメフィスト賞を受賞デビューされています。私は、デビュー作「スイッチ」と、受賞後2作目にあたる「エンドロール」を読んだことがあります。  さて、新作の「伯爵と三つの棺」です。タイトルは、ディクスン・カーの「三つの棺」を引用していますが内容的には特に大きな類似はありません。  時代はフランス革命期、欧州のとある王国が舞台です。あらすじを読んだとき、私好みの物語ぽいなと思ったのと同

          伯爵と三つの棺(レビュー/読書感想文)

          カミサマはそういない(レビュー/読書感想文)

           カミサマはそういない(深緑野分)  を読みました。2021年の作。  深緑さんの作品は、これまで「戦場のコックたち」と「ベルリンは晴れているか」を読んだことがあります。どちらも文句無しの傑作です。 https://www.chikumashobo.co.jp/special/berlin/    深緑さんという作家の個人的な印象を述べますと、東京創元社のミステリー新人賞でデビューされているだけあって、やはりその作品の多くにミステリーの風味をおぼえつつも、ただ、作品全体

          カミサマはそういない(レビュー/読書感想文)

          くらのかみ(レビュー/読書感想文)

           くらのかみ(小野不由美)  を読みました。  2003年の作ですが、20年を経た2024年の7月にして初の文庫化です。  冒頭からいきなり脱線しますが、初の文庫化というと最近はマルケスの「百年の孤独」が話題です。こちらは日本国内では1972年出版以来の出来事。ミステリ界隈では、伝説のメフィスト賞作品である古泉迦十の「火蛾」が昨年、こちらは23年の時を超えて文庫化されました。私は重厚端正なハードカバーも大好きですが、やはり文庫は持ち歩きしやすいですものね。こうしたトレンド

          くらのかみ(レビュー/読書感想文)

          聖徳をまとう_八/縁は導く(1)

           前話はこちら   ◇ 「なんであんなこと言うたんや?」  見送りに出てくれていた平塚母娘が古書店内に引っ込むのを見届けるや、早々に雄平は口を開いた。 「あんなことって?」と、私。 「わかってるくせに」  雄平は大袈裟に鼻を鳴らす。  ――私のまわりにオーラは見えますか? 「正直、一瞬、変な空気になってたで」  雄平の忌憚の無い物言いに思わず私は苦笑を漏らした。 「悪かったよ。ちょっとタイミングが唐突すぎたかな」 「まぁ、ええんやけど。でも、ほんまになん

          聖徳をまとう_八/縁は導く(1)

          密室偏愛時代の殺人 閉ざされた村と八つのトリック(レビュー/読書感想文)

           密室偏愛時代の殺人 閉ざされた村と八つのトリック(鴨崎暖炉)  を読みました。新刊です。  本作は鴨崎さんの「密室◯◯時代の殺人」シリーズ三作目です。これまで「密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック」「密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック」が発表されています。 「密室◯◯時代の殺人」シリーズは必ず上記一文のインサートから始まります。詭弁かどうか。いや、なんとなく説得力を感じてしまうのは私だけでしょうか?  本作に限らずなのですが、作者である鴨崎さんの「密

          密室偏愛時代の殺人 閉ざされた村と八つのトリック(レビュー/読書感想文)

          天狗屋敷の殺人(レビュー/読書感想文)

           天狗屋敷の殺人(大神晃)  を読みました。新刊です。第10回新潮ミステリー大賞最終候補作。  https://www.shinchosha.co.jp/book/180286/  山奥の屋敷を舞台にした、遺産相続に端を発する連続殺人事件です。 「わからんのか? つまり犬神家状態ってわけだよ」と、もう言ってしまってますものね。横溝正史オマージュに満ちた作品です。  とは言え、当の横溝作品ほどおどろおどろしい雰囲気ではなく、キャラクター造形もラノベ的なので本家への愛を込

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          砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(レビュー/読書感想文)

           砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(桜庭一樹)  を読みました。2004年の作。作者の桜庭一樹さんは「私の男」(2008年)で直木賞を受賞しています。  私が桜庭さんの作品を読むのは2作目です。ずっと以前に日本推理作家協会賞受賞作の「赤朽葉家の伝説」を読んで以来です。 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を手に取ったのは、なんとなく重厚長大ではなくコンパクトな名作を読みたい気分だったからです。実際、本作は文庫版にして200ページに満たないボリュームです。  毒親に翻弄される子供

          砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(レビュー/読書感想文)