
黄土館の殺人(レビュー/読書感想文)
黄土館の殺人(阿津川辰海)を読みました。
新刊です。
阿津川版館シリーズの3作目にあたりますが、作者的には館四重奏シリーズというそうです。
紅蓮館、蒼海館に続いて黄土館です。地水火風の四元素になぞらえているので、次作が風モチーフの最終作になるのでしょうか。台風ですかね。
土壁の向こうで連続殺人が起きている。
名探偵(ぼく)は、そこにいない。
孤立した館を連続殺人が襲う。
生き残れ、推理せよ。
シリーズ累計18万部
若き天才による驚愕必至の「館」ミステリ
☆☆☆
殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。そのとき土砂の向こうから女の声がした。
声は、交換殺人を申し入れてきた――。
同じころ、大学生になった僕は、
旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、
荒土館に滞在することになる。
孤高の芸術一家を襲う連続殺人。
葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。
さすが阿津川さんと言うべきクオリティでした。
ひとつひとつのトリックは新規性の高いものでは必ずしもありませんが、複雑かつ緻密なプロットに配置されたそれらの解明を犯人特定のロジックに繋げる手腕こそが真骨頂です。すごいです。
土砂崩れで分断された館の内と外の二元中継的なストーリーは、どことなく有栖川さんの「双頭の悪魔」や、二階堂黎人さんの「人狼城の恐怖」を思い出しました。(物語の展開はまったく違いますよ)
講談社文庫はいつからか新品だと本屋さんに並んでいる時点でビニール包装で密閉されるようなっていますが、本作については、包装を破いたあとにペラペラとページをめくることは厳禁です。親切な図解が多いので、ちらっと目に入っただけで致命的なネタバレを食らう可能性大です。
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