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ただただ描写不足 「ウィッシュ」 感想 第11回

お久しぶりです、雪だるまです。今回はディズニー100周年記念作品の「ウイッシュ」の感想を述べていきます。また、同時上映の「Once Upon a Studio」の感想も少し書きますが、オマケ程度に思っていただければ幸いです。


そこまで悪い作品じゃない

世間的には酷評の多い本作だが、個人的にはそこまでヒドい作品には思えなかった。点数をつけるとしたら75点くらいだろうか。歌や映像はいつものディズニーの高クオリティなので上映中は十分楽しめたと思う。
だが世間的な評価が全て的外れかといえばそんなことはなく、共感できる部分もいくつかあった。
そのあたりは人物描写の描写不足が原因だと感じたのでそのあたりを中心に書いていこうと思う。

ナルシストだが悪いやつではないマグニフィコ

本作のヴィランであるマグニフィコだが、公式では最凶のヴィランと紹介されている。それは半分正解で半分不正解だ。
確かにマグニフィコは人々から大切な願いを接収し、ロザス王国のためになる願いしか叶えなかった。だがそれが独善的な行いかといわれればそうとは言い切れない。
ロザス王国は貧しい人に服や住居を無償で提供したりなど社会福祉も充実しており、冒頭で主人公のアーシャが平和と言い切るくらい安定した幸せな国である。更に叶えなかった願いは悪いことに使うわけでもく大切に保管されている。冷静に
みれば彼はヴィランというより賢王なのだ。
最終的に国民が自分自身ではなく自分の魔法で願いを叶えてもらうことにしか興味を持ってないことに絶望した結果、禁断の魔法に手を出し、みんなの願いを利用して凶行にはしってしまった。だが序盤は立派に王様をやっていただけに最後の一方的にマグニフィコが悪者にされる展開は賛否が別れて当然だろう。

マグニフィコは孤独である

本作で最も描写されるべきだったところ、それはマグニフィコの孤独という闇である。両親の死後、彼は独学で魔法を身につけ1代でロザス王国を築き上げた。そしてロザス王国には大臣などはおらず、政治は基本的にマグニフィコ単独で担っている。王国の危機を感じた際には愛する妻にも距離を置きたがる素振りを見せた。彼はおそらく今に至るまで自分一人で努力しのし上がり、人を心から信頼することを知らずに生きてきたのだろう。だから幼い頃に親を亡くしたアーシャに自分を重ね、歩み寄るために保管している願いを見せた結果酷い奴だと罵られ、愛すべき国民が自分の魔法にしか興味がないと知ったときの彼の絶望は計り知れないだろう。この辺の孤独と絶望の感情をマグニフィコの過去も含めてしっかり描写していれば、この映画に対する評価も結末も違っていたと思う。

アーシャは優しい?

本作の主人公アーシャは優しすぎると周囲から評価されているが、視聴者目線では優しいというより正義感が強いというような印象のほうが強い。
祖父の願いが叶えられないと分かった時も一方的にマグニフィコを糾弾したし、自分の行いのせいで家族が住居を追われることになっても、家族の心配よりも願いを開放することに執心していた。正直行き過ぎた正義感が一人歩きしているような印象しかなく、人によってはテロリストと変わらんと思われても仕方がないだろう。
そもそも主人公の強みが優しさなのならマグニフィコを一方的に悪として責めるのではなく、歩み寄って孤独に寄り添うのが主人公のすべき行動だったのではなかろうか?
孤独により暴走した王様が主人公によって人を信頼することを知り、共に禁断の魔法を封印するために奔走するストーリーなら幅広く受け入れられたのではなかろうか。

音楽、演技、映像はいい

先述している通りストーリーは改善の余地ありだが、音楽などはディズニーらしいハイクオリティだった。
音楽自体も耳に残るフレーズが多く、思わず口ずさみたくなるほど聴きごたえが良いし、それを歌う福山雅治や生田絵梨花、その他声優の歌声も良かった。
映像面でも他のディズニー作品と比べて大きく印象に残るところは少ないが、クオリティーや演出のレベルは高く見応えがあるものだ。
また本作で主役を演じた福山雅治と生田絵梨花はいずれも声優の演技に違和感はなく、特に生田絵梨花に関しては自然なミュージカルパートも含めてハマり役だった。福山雅治はミュージックパートも含めて最後まで福山雅治だったが、それでもマグニフィコという人間をしっかり演じきれていたと思う。

脚本が現代的すぎる

マグニフィコ周りの心情描写が少ないことは先に述べたが、そもそもこういった悪と社会的正義が混在する複雑な悪役はどちらかといえば現代的な悪役であり、ディズニーのような分かりやすく善悪が別れているクラシカルな作風と合わないのではないかと思う。そこを理解して新しいディズニーとして再構築出来れば良かったが、本作はそこを無理矢理クラシカルな型に押し込んだ結果、安定した国を運営していた王が一方的に悪者にされるという歪なストーリーになってしまったのではないかと思われる。逆にそこをうまく再構築出来ていれば近年のポリコレで敬遠されていたディズニーに再び注目を集める素晴らしい作品になるポテンシャルはあったと感じた。決して良作ではないが、駄作と言い切るにはあまりにも惜しい作品なのだ。

脳死で楽しめ

正直ストーリーについて深く考察してしまうと、どうしても納得できないところは出てしまうので、脳死で歌とミュージックだけ楽しむのがこの作品の相応しい楽しみ方だろう。実際歌は耳に残るし、マグニフィコのミュージカルパートはその前の演説のパートと相まって一緒に「なんて無礼な」と叫びたくなってしまうほど夢中になれた。
何だかんだディズニーのファンには楽しめる作品だったと思う。

おまけ:「Once Upon a Studio」について

同時上映だった「Once Upon a Studio」についてだが、かなり良かった。
内容は退社して誰もいなくなったディズニースタジオの壁の絵から歴代のディズニーキャラが飛び出し100周年を祝うというものである。
内容自体は企業の周年ムービーでありがちなアイデアではあるが、映像が素晴らしかった。2Dのアニメキャラたちが背景の現実のスタジオに無理矢理合わせてる感じもなく動いているのは凄いと思ったし、そもそもディズニースタジオをじっくりカメラで追って観察できること自体新鮮だった。キャラの動きも個性があり、そのキャラの作品を見たいと興味をもたせる内容だったと思う。
派手さは無いが、ディズニーファンもそうでない人も納得できる素晴らしい作品だったと思う。


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