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日本が「eスポーツ後進国」になったわけ

ゲームは遊び。という概念が変わり始めている。

30代以下のアメリカ人は4割近くが「eスポーツ」をスポーツだと認識し、IOCは2025年を目処にオリンピック競技への追加を検討することを決めた。

しかし、任天堂やソニーを擁する日本はこの流れに乗り切れていないように思える。主に経済的な側面からeスポーツの現状を俯瞰し、この国の行く手をはばむ「パソコン、教育、価値観」について考えたい。

eスポーツとは

そもそも、eスポーツとはなんだろう?

まだ新しい概念なので様々な定義づけがあるが、おおむね共通しているのは「ビデオゲームを使ったスポーツ」ということ。つまり、あくまでもスポーツである。プレイヤーは称号や賞金などをかけて争う。

その歴史は思ったよりも長く、1972年までさかのぼる。スタンフォード大学の生徒たちが「Spacewar」というゲームで競い合い、勝者はローリング・ストーン誌の年間購読権を勝ち取った。

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1981年のスペースインベーダー記録会にて。

その後タイトーが発売した「スペースインベーダー」などが世界を席巻し、街角のアーケードでゲーマー同士が火花を散らす光景は万国共通になっていく。1983年にはゲームのアメリカ代表チームが設立されるなど、栄華を極めた。

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90年代に入ると任天堂のファミコンやソニーのプレイステーション、そしてパソコンを使ったオンラインゲームが登場。主戦場は家の中へと移る。

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カプコンが発表した「ストリートファイター2」はリアルな格闘技に通じる駆け引きやトーナメント制を採用し、本格的なスポーツ性を備えたゲームの草分け的存在といえるだろう。

他にもスポーツゲーム(サッカーならウイニングイレブン、野球ならMLB The Showなど)もこの時期に多く生み出され、いまも根強い人気を誇る。

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ちなみに任天堂は1990年から「ニンテンドー ワールドチャンピオンシップ」をアメリカで開催し、国際的なゲーム(eスポーツ)の盛り上がりを支えていた。マリオやテトリスなどの定番ゲームを舞台に、代表選手たちは超絶プレイを繰り広げた。

2000年代以降は、インターネットの普及を背景にコンピューターゲームが台頭していく。

リーグ・オブ・レジェンズ (LoL)PUBG、そしてフォートナイトなど、MMO=大規模多人数参加型オンラインゲーム現在の覇者と言って良いだろう。

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有名プレイヤーは大会で多額の賞金を得られるほか、YouTubeなどで動画配信をすることで広告収入も期待できる。さらにビデオゲーム自体が市民権を得たことで、他のスポーツと同じようなプロチームがいくつも誕生した。

さらにTwitchやDiscord、ゲーミングPCなど、よりゲームを楽しむための産業も急成長中だ。

海外ではパリ・サンジェルマンやASローマなどの有名スポーツグループもeスポーツ専門のチームを創設している。

2020年時点で、eスポーツの市場規模は100億ドル=1.1兆円ほど。5000億ドルとも言われるスポーツ界全体の大きさには程遠いが、年次20%近い成長を続けていくと見られている。

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↑ eスポーツ業界のカオスマップ

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野村総研のリサーチによれば、2019年に賞金総額が一番高かったのはフォートナイト。70億円以上の換算だ。

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観客一人あたりの収益は他のメジャースポーツと比べてまだまだ低い。

日本の現状

では、日本の現状はどうか。結論からいうとかなり遅れをとっている。

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eスポーツの国別アクティブプレイヤー数のランキングを見ると、日本は11番目。ゲーム産業が強いイメージのある国にしては意外に少ない。

また、2020年の市場規模はわずかに76億円あまり。上記のように1.1兆円と言われる世界の市場規模と比較しても、年々成長しているとはいえ、日本の存在感が薄いこともわかる。

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パソコン、教育、価値観

タイトーのインベーダーゲーム。任天堂のマリオ、ポケモン、スマブラ。ソニーのプレイステーション。ゲーム業界の歴史を通して、日系企業・作品は世界的な影響力を持ち続けている。

ではなぜ、日本は「eスポーツ後進国」に甘んじているのか。それを解く鍵はパソコン、教育、そして価値観だ。

まずパソコンについて。何を隠そう、ゲームの主戦場はパソコンだ。2019年の調査では開発者の6割以上が支持した。

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無論コンソール(プレステなどのゲーム用筐体)も根強い人気を誇るが、LOLやDota 2のようなeスポーツの人気タイトルはパソコンでしかプレーできないものが多い。つまり、パソコンの普及はeスポーツの浸透に欠かせない。

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グローバルな目線でいえば、子どもが家でパソコンを使うことはごく当たり前のこと。オンライン授業がブームになる前から、宿題やテストの多くは電子化されていた。

そのため、親にゲーム機をわざわざお願いしなくてもネット上の無料登録だけで友達と遊べてしまう。たしかにeスポーツを極めるなら高スペックの専用マシンが必要だが、入り口は広く開かれている。

対して日本。10から17歳を対象にした内閣府の調査を見てみると、パソコンを利用している子どもは16.1%と圧倒的に少ない。上にあげたアメリカの1/4以下だ。

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所持率ベースで比べても、他の先進国より以上に低い水準がわかる。ちなみにスウェーデン(人口わずか1000万人)以外は日本よりもeスポーツのアクティブプレーヤー数が多い。

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ちなみに韓国でパソコンが一般化した背景には、1998年の経済危機により失業者が溢れる→ネットカフェの需要が激増する→政府が高速インターネットを整備する、という流れがあったという。まさに「雨降って地固まる」話。

また、教育現場でのゲームに対する風当たりは未だに強いように感じる。スマートフォンの普及で自分たちもゲームをするようになったものの、子どもに限っては「ゲームは勉強の邪魔」と考える親が多い。

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これに拍車をかけるように、日本のゲーム会社もeスポーツ文化の創造には消極的だ。

例えば任天堂は前述の「ニンテンドー ワールドチャンピオンシップ」を2017年以降開催しておらず、スマブラやスプラトゥーンなど人気ゲームのコミュニティへの貢献も最近になってようやく始めた次第。

古川社長はこう語っている。

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任天堂が行っているゲームイベントは、経験、性別、世代を問わず、幅広く遊んでもらうために行っているものであり、プレーヤーが賞金を巡りステージで競い、その様子を観客が見て楽しむという、一般的なeスポーツシーンとは異なるものを提供できているのが任天堂の強みであるとしています。

つまり、まだeスポーツをプロ競技とは見なしていない。ゲーム=あくまでも娯楽という伝統的な価値観が強く残っているようだ。

ソニーは比較的積極的にコミュニティ形成を支持しており、グランツーリスモなどは公式のプラットフォーム上で世界中のプレイヤーがゲームへの愛を爆発させている。

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加えて近年の「闘会議」や「東京ゲームショウ」などeスポーツ大会への賞金提供も記憶に新しい。しかし冷静に見ると、特にグローバルな視点では、表舞台に立っているとはいえない。

通常のスポーツに比べて明らかに競技人口が若いeスポーツにおいて、「子供が参加しづらい」という状況は致命的だ。

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ITや教育、そして古い価値観。この国の慢性的な課題が、eスポーツの発展を妨げている。

参考情報

この記事を書いた人

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Neil(ニール)
ecbo (荷物預かりプラットフォーム) とプログリット (英語コーチング) でUI/UXデザイナーとしてインターン。現在はIT企業でデザイナー。 ハワイの高校。大学では法学を専攻。もともとはminiruとしてnoteを運営。

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Shawn(ショーン)
学生時代は3社のスタートアップでインターンを経験した後に外資コンサルに新卒入社。大学では経済学専攻。趣味は旅行とDJ。好きな映画はデビッド・フィンチャーの「Fight Club」。

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