3. シリコンバレー上陸
アメリカ西海岸旅行6日目。
ついに、シリコンバレーに乗り込む日がやってきた。
サンフランシスコの安宿をさっそうと出発した僕たちは、Milbrae(ミルブレー)駅へと向かう。シリコンバレーに通じる名物鉄道に乗り換えるために。
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カルトレイン
どこまでも広がる青空を見ながらホームのベンチに寝そべると、とても開放的な気分になった。
地元(東京)はもちろん好きだけど、人や建物の密集に息苦しさを感じることもある。うとうとしていたら、轟音とともに大きな電車がやってきた。
Caltrain(カルトレイン)は、サンフランシスコとシリコンバレーをつなぐローカル鉄道。写真のようにグレーと赤の車体が特徴だ。
10ドルそこそこの運賃と、以外に快適な乗り心地。コスパはかなり良いかもしれない。
連日10キロ以上歩いていた僕らは、ここぞとばかりに爆睡する。
ミルブレーを出発してから1時間ほどたって、終点のSan Jose Diridon(サンノゼ・ディリドン)駅に降り立った。
シリコンバレーに着いての第一声は「あったかい!」だった。15℃をわずかに超えるほどだったサンフランシスコに対して、こちらは30℃に届こうかという陽気。
湿気も少なく、ハワイにそっくりの懐かしい感触だ。日陰はそよ風が心地よい。
二人は大きめのスーツケースを転がしながら、予約していたエアビーの部屋を目指す。
インテル・ミュージアム
アジア系ホストの立ち会いのもとチェックインし、軽く荷解きしたころには午後の2時をまわっていた。
しかし僕らに休む暇はない。はじめてのウーバーを呼び寄せ、シリコンバレー最初に目指したのは「あの会社」だった。
Intel(インテル)。一度は聞いたことがある名前だと思うが、何の会社なのかご存知だろうか。
簡単にいえば、彼らはコンピューターチップを作っている。いまみなさんが手にしているスマホやパソコンを人間に例えれば、脳や神経といえばわかりやすいかも。
今や様々なプロダクトやソリューションを手掛けるインテルは、現代世界に欠かせないと同時にシリコンバレーを古くから支えてきた会社でもある。
そんな自社の歴史と哲学を伝えるため、本社横に併殺されているのがインテル・ミュージアム。
創業者のロバート・ノイスやゴードン・ムーアの思想や会社の成り立ちだけでなく、プロセッサの仕組みや原材料、そして未来に向けた取り組みまで、まさにインテルのすべてが紹介されていた。
多くの展示の中で、一番心に残ったのはこれ。
インテルは今でさえ巨大企業だが、その旅路は技術者たちの夢からはじまった。こうしたロマンとテクノロジーの系譜は現在のシリコンバレーにも脈々と受け継がれていると思う。
ちなみにインテル・ミュージアムは入場無料。売店はここでしか買えないグッズも多く取り揃えているので、ぜひ行ってみてほしい。
最高の刺激をもらい、僕らはまたウーバーを呼んだ。
アップルの世界
イノベーションの代名詞であり、シリコンバレーを代表する企業。それはアップルだ。
もしあなたがそう思わないとしても、Apple Park Visitor Ceenter(アップルパーク・ビジターセンター)は行く価値があるスポットだと思う。
クパティーノ(サンノゼから車で20分ほど)の自然豊かなエリアにたたずみ、日当たりと風通しの良い空間は「これぞシリコンバレー」という雰囲気。
子どもから大人まで、世界中から集まったテクノロジーファンたちが楽しそうにはしゃぐ様子は、今でも忘れられない。
またもや大満足の僕たちは、アップルの本社ビル「インフィニット・ループ」に足を伸ばした。
実は、この時乗せてもらったウーバーのドライバーとのやり取りが強く印象に残っている。
メキシコからの移民とおぼしき彼は、ふとこう言った。
これを聞いて僕たちは二つの意味で驚いた。
まずはウーバーがそのような行動を取っていること。ビジネスである以上しかたない(タクシー運転手も同じようなことをするし)けど、ユーザーとしては気分が良いものではない。
ふたつめはドライバーの彼がそれを教えてくれたことだ。どこからどう見ても観光客の若者二人と、わずか5分ほどのライド。アプリに従って少し遠回りをしてもバレないし、バチも当たらないだろう。
それでもフェアに目的地まで素早く送り届けてくれたことに感動した。
なんだか温かい気持ちになった二人は、お待ちかねの本社に到着した。
ビジターセンターと違い、中の見学はできなかった。それでも併設されたアップルストアに滑り込み、ここでしか買えないというマグカップを購入。ちなみに磁器は長崎県の名産「波佐見焼」で、スティーブ・ジョブスが日本に造詣が深かったことを思い出す。
クパティーノの夕日
せっかくなので、クパティーノを散歩してみることにした。
本当に自然が豊かで綺麗な町だ。東京やニューヨークのような高層ビル群はないが、テクノロジーや思想の面では何十年も先にいっていることは確かなこと。
天気がよく、一年中過ごしやすい気候。なんだか楽観的でポジティブになれる。これはシリコンバレー全体にいえると思うけど、ここでは特にそう感じた。
インフィニットループから10分くらい歩くと、ショッピングセンターを見つけた。
こちらも品が良く、高校生のときに溜まっていたマノア・マーケットプレイスとは違うなーとしみじみする。
はじめて訪れたのに、クパティーノは「住みたい」と思えるくらい心地よい。海外でこんな気分になったのは初めてだった。
帰りのバスが動き出すと、夕闇に包まれた大通りは段々と小さくなっていく。
部屋に着いた僕らはくたくたに疲れていたけど、大事な仕事がひとつ残っている。食料と水の調達だ。
本来ならシリコンバレー初日を豪快に祝いたいところだが、前夜のカニ事件(第二話参照)のせいで質素に済ませるしかない。近所のスーパーで水とパン(翌日の朝ごはん)を買う。
帰り道はやっぱりカニの話になる。カニを食べていなかったら、このパンを40個は買えたな…という「カニ算」まで飛び出す始末。食べ物のありがたみを久しぶりに感じた。
交互に持った水は重かったけど、僕たちの足取りは軽かった。今日はワクワクするものをたくさん見れたし、なにより僕らはひとりじゃない。
シリコンバレー初日はあっという間に過ぎていった。(続く)
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