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[TechGALAイベント参加レポート]生成AIで組織を生まれ変わらせろ!~集団知が未来を切り拓く~

生成AIは、技術革新だけでは真価を発揮しない。その可能性を最大化する鍵は“集団で学ぶ“文化の構築にある。本セッションでは、「生成AI EXPOのデータ」を交えて「生成AIを活用できない組織は淘汰される」という危機感を共有しながら、集団知が組織の限界を超える具体的な方法論を議論します。最前線の事例を通じて、生成AI時代における組織進化の道筋を解き明かし、未来を切り拓くための実践的なインサイトをお届けします。

登壇者

髙橋 和馬

富士フイルムシステムサービス株式会社 / IKGAI lab.オーナー
富士フイルムグループ横断で生成AI教育を実施。営業職や製造業、自治体業務など幅広い業種に対して、教育コンテンツを作成し社内の生成AI人材育成に携わる。社外では生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」のオーナーを務め、NewsPicksやインプレスにて年間150本以上の記事を執筆および監修。他、企業登壇多数。

田中 悠介

Givin' Back株式会社 取締役 / 金券ショップ犬山 代表 / 生成AI EXPO実行委員会 代表
東海地域を拠点に活躍する⽣成AI分野のリーダー兼犬山市の金券ショップオーナー。「⽣成AI EXPO」を名古屋や犬山市などの東海地区で開催し、累計3,000名超を動員。愛知県や岐阜県、名古屋市などと連携し、地域の課題解決とAI普及に尽⼒する。清華⼤学卒業後、トヨタグループやスタートアップでの経験を活かし、⼈材開発や経営改善を推進。東海から全国へと⽇本の⽣成AI分野を牽引し、地域と技術を結ぶ社会イノベーターとして注⽬されている。

池田 大喜

製造業 生成AI推進者 / Think IT「Gen AI Times」編集長 / IKIGAI lab.メンバー
インプレスのThink ITで「Gen AI Times」で連載し、「半歩先の未来」をテーマに発信。生成AIに関するイベントで東海地域を中心に登壇。地元三島でイベントを実施。

細山田 隼人

日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社 生成AI推進プロジェクトマネージャー / EFEコミュニティプロジェクトマネージャー / IKIGAI lab. メンバー
日本ペイントグループ横断で生成AI導入を実施。現在は生成AI×ビジネスプロセス、パフォーマンス向上などに応用した取組みをけん引。また、「コミュニティ」「テクノロジー」「組織という⼒学」を活⽤して、従業員の潜在力開放を支援すべく、日本ペイントグループの公式コミュニティEFE(Engagement for Employee)をけん引。これら社内活動を外部にも拡張させ、誰もがいきいき/ワクワクと働き、目的をもって⽣きられる世界の実現を目指している。

イントロダクション

生成AIの導入が加速する中、多くの企業が直面しているのは、単なる技術導入を超えた組織変革の課題だ。マッキンゼーの調査によれば、生成AIは業務の75%に適用可能とされる。特に顧客対応などのフロント業務では、その効果が顕著に表れると期待されている。

しかし、注目すべきは生成AIに対する関心の所在だ。生成AI EXPOの参加者データによると、現場社員が34.3%、経営層が16%を占め、中間管理職よりも現場と経営のトップが高い関心を示している。この特異な分布は、生成AI導入が従来のIT施策とは異なる様相を呈していることを示唆している。

組織変革の3つのアプローチ

富士フイルムの事例:段階的な全社展開

富士フイルムシステムサービスの高橋和馬氏は、全社的な生成AI導入を推進する中で、独自の段階的アプローチを確立した。「当初は社内でガバナンスの観点から使用制限がありました。そこから、いかに全社展開していくかが課題でした」と高橋氏は語る。

同社の特徴は、グループ横断で9,000人規模のコミュニティを活用した展開方法にある。高橋氏は活用段階を6段階に分類し、「認知」から始まり、「個人での使用」「業務での活用」を経て、最終的には「組織プロセスへの組み込み」「自社製品への統合」を目指すロードマップを描いている。

現在は「個人の業務への活用」フェーズにあり、特に営業職向けの教育に注力。全国の営業支店を巡回し、実践的なワークショップを展開している。「理論より実践。実際に使って業務改善を実感してもらうことが、定着への近道です」と高橋氏は強調する。

日本ペイント・オートモーティブコーティングスの事例:ボトムアップによる浸透

日本ペイント・オートモーティブコーティングスの細山田隼人氏は、2023年3月のGPT-4登場を機に、ボトムアップでの全社展開をスタート。わずか3名のチームから始まった取り組みは、現在マンスリーアクティブユーザー50%超という驚異的な普及率を達成している。

同社の特徴は、「非コア業務」から「コア業務」へのシフト戦略にある。「社内資料作成や会議準備など、本来は顧客や従業員との関係構築に使うべき時間が奪われている。この非コア業務を圧倒的に削減し、本質的な価値創造にシフトすることが狙いです」と細山田氏は説明する。

製造業DX推進の新しい波:26歳の挑戦

製造業のDX推進プロジェクトマネージャーを務める池田大喜氏(26歳)は、若手ならではの視点で組織変革に取り組んでいる。「個人で現場を回っていては限界がある。だから『池田を増やす』ことにしました」と池田氏は語る。

その手法は斬新だ。困りごとの共有からスタートし、同じ課題を持つメンバー同士をマッチング。さらに、解決策を持つ人材との橋渡しを行い、小さな成功事例を作り出している。「わくわくする未来像を共有し、それを実現するための仲間づくりが重要です」と池田氏は強調する。

集団知がもたらす3つの価値

1. モチベーション維持と学習スピードの向上

「1人で学んでいると、自分のやっていることは独りよがりなのではないか、と不安になる時期が必ず来ます」と池田氏は指摘する。集団での学びは、その不安を解消するだけでなく、相互の「ありがとう」という言葉が自然と生まれる環境を作り出す。さらに、共有されたビジョンが、単なる現状把握から未来志向の「わくわくする」目標へと発展していく効果も見られる。

2. 心理的安全性の確保

富士フイルムの高橋氏は、9,000人規模のグループ横断コミュニティの中で、あえて小規模なサブグループを作る重要性を説く。「大きなコミュニティでは発言のハードルが高くなります。まずは小さな場で練習し、徐々に発信の範囲を広げていく。その過程で自然と心理的安全性が醸成されていきます」

3. 組織の壁を超えた知識共有

日本ペイント・オートモーティブコーティングスの細山田氏は「ホームからアウェイ、そしてアウェイがホームになる」という興味深い視点を提示する。「最初は自社の価値観が全てだと思っています。しかし、他社との交流で新しい価値観に触れ、それが自分の居場所になっていく。そして最後に、その経験を自社に持ち帰る。この循環が組織進化の原動力になります」

実践者たちが語る明日からの具体的アクション

わくわくの共有から始める

「DX推進は1人では辛くなりがちです。わくわくしていないと誰も興味を持ってくれません」と池田氏。自身の推進活動で最も重視しているのは、テクノロジーそのものではなく、それによって実現できる未来への期待感の共有だという。

半径5mからの仲間作り

細山田氏は「半径5m」という具体的な距離感を提示する。「大きな変革を目指すあまり、遠くを見過ぎてしまいがち。まずは近くの仲間から始めることが重要です」。さらに、「問いを立てる」という視点も強調する。「従来は問いを解く力が求められましたが、これからは問いを立てる力が重要になります」

熱量の高い場所への積極的な関与

「最も熱い場所へ行け」というのは高橋氏からのメッセージだ。「生成AIに興味を持つ人は、必ずアウトプットしたがります。その声に応える人がいないと熱量は下がってしまう。だからこそ、徹底的に返信し、対話を続けることが重要です」

未来への展望

各社の時間軸は様々だ。製品開発部門では10年、20年先を見据えた検討が行われる一方、営業部門ではより即効性のある活用が求められる。日本ペイントの細山田氏は「現在のGPTがベースのソリューションが3年後も主流かはわかりません。だからこそ、ウォーターフォール型ではなく、コアとなる価値を中心に据えた柔軟な組織変革が必要です」と語る。

結論

生成AI時代の組織変革において、最も重要なのは「人の心」という意外な答えが浮かび上がった。技術革新は確かに重要だが、それを活かすのは結局のところ人であり、組織の文化だ。製造業各社の取り組みは、個人と組織の壁を超えた「集団知」の可能性を示している。そして、その集団知を育む土壌として、心理的安全性やコミュニティの重要性が改めて浮き彫りになった。

生成AIという新技術は、私たちに組織の在り方そのものを見つめ直す機会を提供している。それは単なるデジタル化や効率化を超えた、より本質的な組織進化への扉を開くものかもしれない。

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