医学論文解読 : 不明確な有機食品の健康効果
この論文は2016年に欧州議会(European Parliament)によって行われた有機(オーガニック)食物の健康効果の調査だ。オーガニックの食品基準(農薬、肥料の制限など)にはズレがあるため、正確な調査が難しく、論文数もかなり限られている。その限られた研究結果をつなぎ合わせたのが本論文であり、本日時点での最も信憑性のある結論といっても良いと思う。
結論としては、有機食品と慣行食品による健康差には有意なのが概ね認められていない。正確な言い方をすると例えば野菜に関しては、有機と慣行栽培との間に残留農薬などの違いはある。有機食品には残留農薬が検出されないものが多い。ただ慣行農業でも人体に影響のあるレベルでの残留農薬ではないため、健康影響にまで至っていないということだ。ただし論文でも、子供や妊婦は微量でも影響を受ける率が高いため、オーガニックが推奨される。
また、畜産物に関しては抗生物質を極力使わない有機飼育の方がオメガ3脂肪酸の保持割合が高い。ただ熱した場合はオメガ3脂肪酸は消失するため、健康への好影響には届かない。
結局オーガニック食品は健康的というイメージはあるものの、健康だというエビデンスは乏しいのが事実だ。
本記事の主題ではないが、一方で慣行農業や遺伝子組み換えを使用する農業だと、農業土壌が痩せていくという事実もある。時間をかけて土を作り何百年も続けることができる有機農業と比べ、化成肥料は収穫を即行で増大させるが、土壌微生物が減っていき、土壌が農業には適さなくなるという現象がある。また農薬が土壌汚染もおこす。英国の環境庁によると、年々農業可能な土壌が減っていっていることが報告されている。
「健康への配慮」も「環境への配慮」も選択だ。この両方、あるいはいずれかに対する投票をしていきたいと思う。