#26 『噛みあわない会話と、ある過去について』(著:辻村深月)を読んだ感想
辻村深月さんの『噛みあわない会話と、ある過去について』
辻村さんの作品を読んだのは、昨年12月の『冷たい校舎の時は止まる』以来2か月半ぶり。
2023年になってからは最初に読んだ作品です。
あらすじ
感想
「黒辻村」が前面に出ている1冊
どの短編もゾワッと怖さを感じさせる
でも、実は少しの希望もある?
どこか不穏な雰囲気のある4編による短編集。
どれも「過去」の出来事がきっかけで物語が動いていきます。
辻村深月さんは、ハッピーエンドで温かい読了感がある作品が多いです。
しかし、本作は人間が持つ闇の部分に触れていて、モヤモヤとした読了感がある「黒辻村」が前面に出ています。
本作で感じたのは、言った方は曖昧な記憶でも、言われた方はしっかりと覚えているし、人をどこか見下していると痛い目に合うことです。
また、誰かが幸せかどうかを勝手に決めつけてはいけないとも思いました。
いじめや毒親とは言えない微妙な関係が言語化されていて、どこかリアリティがありました。
はっきりしてないグレーな部分だからこそ、大した問題ではないと表立って話題にしないところもありますよね。
どの話もゾワッと怖さを感じさせる終わり方でしたが、実は少しの希望もあるのではと思いました。
現実世界での戒めになるのもその1つかもしれません。
人と人が完璧に噛み合うことはない。
でもたとえ噛み合わなくても、相手の気持ちを理解できるようにはなりたいですね。
《気になったこと》
幼少期は目立たなかったりイタイ子だったりして、良い扱いを受けなかった。
そんな人が、有名人になって過去にそこまで執着するのだろうか?
読了後にそんな疑問を持ちました。
ちょっと器が小さくないか?逆にリークされたらどうするんだ?
実は彼らも人をどこか見下していて、後に痛い目に合うんじゃないか。
そんな気がしたんですよね。
それを考えたら、さらにゾワッと怖さを感じました。