#27『爆弾』(著:呉勝浩)を読んだ感想
呉勝浩さんの『爆弾』
2023年(第20回)本屋大賞ノミネート作品です。
また、『このミステリーがすごい! 2023年版』(宝島社)国内編と、『ミステリが読みたい! 2023年版』(ハヤカワミステリマガジン2023年1月号)国内篇で1位を獲得しており、第167回直木賞候補作にもなっています。
あらすじ
感想
緊張感漂う頭脳戦にハラハラ
衝撃よりはジワジワくる感じ
誰しもが「欲望」という無敵のカードを持っている?
『爆弾』は、立場や境遇が違う警察官たちによって物語が進む群像劇。
迫りくる爆発までのタイムリミット、事件の全貌、そしてスズキタゴサクとは一体何者なのか?
その中での緊張感漂う頭脳戦にハラハラしました。
それは同時に消耗戦でもあり、スズキの長い会話には神経がすり減らされます。
読了後は疲労感に似たようなものがありました。
社会的に失うものが何も無い、いわゆる「無敵の人」スズキタゴサク。
しかし、彼の予言は次々と当たり、どこか余裕を感じさせます。
ただ気持ち悪いだけでなく、知性を兼ね備えているような感じで怖くなりました。
スズキの得体の知れなさは、ここ最近の読んだ本の登場人物の中で1番かもしれません。
本作の1つのキーワードは「仲間」と「欲望」ではないかと思います。
「仲間」が傷つけられたことやそれぞれが持つ「欲望」によって、心情に変化が生まれる。それが、警察官たちの行動にも表れます。
行動の中には、命令無視や周りからは理解されないことも。
こういった「欲望」によって、実は警察官たちも「無敵の人」になっている。それは、決して彼らに限られるものではなく、誰しもが「無敵の人」になる可能性があるのではと思いました。
警察官たちの感情が揺さぶられる姿に、僕の感情も揺さぶられました。
衝撃よりは考えさせられることが多い作品だと思いました。
最も考えさせられたのは「命の重さ」についてです。
命は絶対的なもので本来優劣はありません。
でも、それぞれがランク付けして相対的に見ている。
中盤のある出来事は「命の重さ」が問われていますが、ラスト以上に強く印象に残りゾッとしました。
印象的なフレーズ
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