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#12 高校時代の青春を思い出す『桐島、部活やめるってよ』(著:朝井リョウ)を読んだ感想
朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』
朝井さんのデビュー作であり、映画化もされた作品です。
あらすじ
映画化大ヒット青春小説!
バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こして……。至るところでリンクする、17歳の青春群像小説。第22回小説すばる新人賞受賞作。
感想
まるで高校時代に戻ったかのようなリアル感が溢れる描写
タイトルだけは知っていて、原作も映画も見てなかった本作。
桐島を何とかして部活に戻そうぜっていう熱血青春小説だと思ってました。
それは自分の勝手な思い違いでした(100%そうだったわけではないですが)
ただ、これほど青春というものを感じさせる小説はなかったかもしれません。
高校時代の、勢いのまま生きる様子、甘酸っぱい恋模様、クラスでの立ち位置など。
決して爽やかさだけでない、どこかほろ苦さを感じさせる部分も描かれていて、高校時代に戻ったかのような気持ちにさせるくらいでした。
あとは、話し方とか使っているアイテムとか……
まさにその通りだったわ!ってくらい。
そして、クラスでの立ち位置。
「上」なのか「下」なのかの分かれ方についての描写が共感しかありませんでした。
ただ、本作を読んで思ったのは、立ち位置が「上」か「下」かに関係なく、
みんな、それぞれに青春というものがあり、光の部分と影の部分を持っているんだなということ。
「上」の立ち位置でも影の部分があり、悩みが尽きない。
その中で、それぞれが学校という狭い社会の中で懸命に生きている。
高校時代にこのことを知っていたら、もっと伸び伸びできたかもなって思いながら読んでいる自分がいました。
本作は、それぞれの登場人物たちの視点からの話。
その繋がり、すれ違いも絶妙な感じで良かったです。
その中で特に好きな話は、涼也、宏樹、かすみの話です。
立ち位置が違う者同士のやり取りってこんなにワクワクドキドキするんですね。
印象的なフレーズ
人間関係は硝子細工に似ている。見た目はとてもきれいで、美しい。太陽の光を反射して、いろいろな方向に輝きを飛ばす。だけれど指でつっついてしまえばすぐに壊れるし、光が当たればそこら中に歪んだ影が生まれる。
自分は誰より「上」で、誰より「下」で、っていうのはクラスに入った瞬間になぜだかわかる。僕は映画部に入ったとき、武文と「同じ」だと感じた。そして僕らはまとめて「下」なのだと、誰に言われるでもなく察した。
察しなければならないのだ。
思ったことをそのまま言うことと、ぐっと我慢すること、どっちが大人なんだろう。こうやって、狭い世界の中で生きていると分からなくなる。