#58『ままならないから私とあなた』(著:朝井リョウ)を読んだ感想【読書日記】
朝井リョウさんの『ままならないから私とあなた』
読んだきっかけ
あらすじとタイトルが気になり手に取った1冊です。
妙に気になるタイトルは、読み終わって「なるほど!」と納得しました。
このような方にオススメの本です
朝井リョウさんの作品が気になっているが、まだ読んだことがない
色んな価値観に触れたい
人間関係について考えたり、悩んだりすることがある
あらすじ
感想
対立する価値観の両者に共感でき、どちらも正解なのだと思った
自分の考えを押し付けず、相手の気持ちを思いやる「想像力」は失わないようにしたい
何気ない青春の一コマからここまで話を広げられるのは凄い
生きている中で必ず発生するであろう人間関係。それは、レンタルすることでも成立するのか。それとも、人間は何でもさらけだせるからこそ関係が生まれ、そうでないと意味がないのか。
技術の進歩によって世の中は便利になった。その方が無駄なことは少なくなるから良いのか。いや、たとえ不便で無駄なことがあっても、だからこそ生まれることがあるのではないのか。
本作の「レンタル世界」「ままならないから私とあなた」の二篇の物語は、どちらもそれぞれの価値観が対立しています。僕はその両者に共感でき、どちらが正解かどうかではないと思いました。その中で感じたのは、自分の考えを押し付けず、相手の気持ちを思いやる「想像力」は失わないようにしたいことです。本作に限らず、人間が持つ価値観や世の中の物事には正解はない。だからこそ、理解できないの一言で片づけるのではなく、その先を考えられるようになりたいと思いました。
この1年でもAIなどによる技術の進歩が加速しているのを感じるのもあって、今読むからこそ考えさせられる部分がありました。「人間がやっていることはAIに奪われる」というフレーズはニュースなどでもよく見かけることがあります。その中で、新しいものができても、それに人間的な何かが宿るという薫の言葉に共感しました。この世界に人が存在する以上、人間的な何かが失われるというのはないと思っています。だからといって安心していいわけでもないですけどね。
何気ない青春の一コマからここまで話を広げられるのは凄いの一言です。
「レンタル世界」のラストには驚いたり、物語の展開も見どころです。伏線の繋がり方もきれいで好きなんですよね。また、本作は読みやすくて刺さり方も強烈ではなく、心地よい印象がありました。朝井さんの小説が未読で、作風がどのような感じなのか気になっている方にもオススメだと思います。