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#3 『此の世の果ての殺人』(著:荒木あかね)
2023年最初の読了本は江戸川乱歩賞受賞作の『此の世の果ての殺人』
偶然にも、物語の日時は現実と同じく年末年始!
あらすじ
小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める――。
感想
無法地帯と化した日本。もはや自動車免許は関係ない中で教習が行われている。しかも、その教官と生徒がその後犯人を追う。
そのシュール過ぎる設定に序盤から惹き込まれた。
電気やガス、通信のインフラがストップしているなどの非日常が淡々と描かれている点が、さらに興味をそそった。
犯行のトリックよりも、
どうせみんな一緒に死ぬのが決まっているのに、犯人はなぜ人を殺したのだろう?
なぜ彼女たちは警察でないのに犯人を追うのだろう?
小惑星が衝突する日(人生最後の日)、彼女たちは何をしているのだろう?
このような点が気になっていた。
登場人物たちを突き動かすものは何か。
それは、人間誰しもに備わっている「感情」だと思った。
人間はどんな状況下でも感情には抗えない。それは時に非情さを生む。でも感情があるからこそ人の繋がりが生まれ、互いに支え合っていける。
また、人間の命の重さについては本当に難しい問題だなと考えさせられた。
物語を通じて変化する小春の感情に心が揺さぶられた。
ちなみに犯人は予想できなかった。小春と同じく心にぽっかりと穴が開いたような感じ。
そして、自らの生き方について問いかけられたかのようなラストシーン。
現実の世界でも、時間が有限なのは同じ。
後悔しないために、やりたいことは積極的にやろうと思った。
印象的なフレーズ
「地球が滅びる前から、この世の全ての事象は広い意味で無意味なものなんだよ。それでも無意味な行為を止められないのが人間だ。ほら、人間はいつか必ず死ぬし、カレーを食べてもいつかは排泄物になるよね。それでも私たちはカレーを食べる」