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#75『透明な夜の香り』(著:千早茜)を読んだ感想【読書日記】
千早茜さんの『透明な夜の香り』
第6回渡辺淳一文学賞受賞作です。
「ナツイチ2023」の対象文庫にも入っています。
※渡辺淳一文学賞は、人間心理に深く迫る豊潤な物語性をもつ小説作品が顕彰される、集英社により創設された文学賞
読んだきっかけ
「ナツイチ2023」の対象文庫で気になった1冊です。
視覚によって情報を得る小説で、香りをどのように表現するのか気になりました。
このような方にオススメの本です
香りにまつわる小説が読みたい
料理が好き、お花が好き
最近、生活が乱れがちな感じがする
あらすじ
香りは、永遠に記憶される。きみの命が終わるまで。
新・直木賞作家が紡ぎだす、秘密の香り。
「言葉の意味を越えて、嗅覚が際立つという稀有な体験をさせてくれる小説である。」小川洋子(解説より)
元・書店員の一香は、古い洋館の家事手伝いのアルバイトを始める。そこでは調香師の小川朔が、幼馴染の探偵・新城とともに、客の望む「香り」を作っていた。どんな香りでも作り出せる朔のもとには、風変わりな依頼が次々と届けられる。一香は、人並み外れた嗅覚を持つ朔が、それゆえに深い孤独を抱えていることに気が付き──。香りにまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。
感想
読みながら香りがほのかに漂う感じがした
彩りが溢れている様々な料理やお花も印象的
読書では視覚によって情報を得るため、嗅覚を使うことはほとんどないでしょう。
しかし、本作は香りに関する繊細な表現から、香りがほのかに漂う感じがしました。
匂いと香りの捉え方が変わった感じがします。
匂いは人の心を映し出している。香りは生きる力を与えるが、苦い記憶を思い出させることもある。
香りで記憶が甦ることは確かにあると思いましたし、匂いの良し悪しは瞬間的に分かるとは限らないんだなと思いました。
彩りが溢れている様々な料理やお花も印象的です。
1つ1つが繊細で鮮やかな感じが文章から伝わってきて、日々の生活を整える気持ちにもさせてくれました。
でも、物語はどこかほの暗い感じで、登場人物からは秘密の匂いがプンプンする。
そして、ラストはドキッとする香りがしました。
僕だったら、朔さんにどんな香りを作って欲しいと頼むだろうか?
印象的なフレーズ
「嘘は臭う」
香りは脳の海馬に直接届いて、永遠に記憶される。
「どうして人は欲望を隠そうとするんだろう。自分にまで嘘をついて」
「心の中には森があるんですよ。奥深くに隠すうちに自分も道に迷ってしまうんです」
「匂いは残るんだよね、ずっと。記憶の中で、永遠に。みんな忘れていくけれど」