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冬の光② Town&Country 年末編

皆さん、明けましておめでとうございます。
寒いけれど、快晴が続く関東のお正月。新年を迎えると年末の気分がすっかり消えてしまいますが、2024年末も美しい光景をたくさん見ることができました。忘れる前に記録しておきたいと思います。

2024年の御用納めは12月26日でした。場所は東京・銀座の場末です。
昨日までクリスマス一色だった街が、一夜明けると手のひらを返したようにお正月ムードに包まれます。街には門松が並んでいるけれど、どのお店の人も、日付が変わってから大急ぎで飾ったものと思われます。


御用納め。

僕はこの、クリスマスから大晦日に至る、名付けようのない年末の一週間がとても好きです。

銀座和光の門松は、竹の先端が平らに切られた寸胴型。

もともと門松は、写真のような"寸胴型”が基本だったそうです。
これを最初に斜めに切り落としたのは徳川家康とのこと。三方ヶ原の戦いで武田信玄に惨敗した後、「次こそは信玄の首を落としてみせる」と、物騒な誓いを立てて切り落としたのが始まり。という説があります。

そのような血なまぐさい説がお正月にふさわしいとは思えないけれど、節を入れて竹を斜めに切り落とすと、その切り口は人が大笑いしている顔にも見えます。ということで、縁起が良いという理由で広まったという説を僕は支持します。そう言われてから改めて見ると、たしかに笑った顔にしか見えなくなりますよ。

ちなみに寸胴型は、お金を積み上げたような形をしている、ということで、商家を中心に広まったのだとか。おカネを貯めたい人は、ぜひ寸胴型で。

有楽町で逢いましょう。

普段、銀座から家に帰るときは地下鉄に乗るか中央通りを東京駅まで歩くのですが、たまには気分を変えて有楽町からJRに乗ってみようかな、と。
ここは日比谷なのか銀座なのか。昭和の昔に日劇が消え、新聞社も消え、そごうデパートも消え、今ではその名も色褪せた有楽町。昭和の香り懐かし有楽町。
などと思いながら歩いていたら、何と、交通会館の一階で、靴磨き職人さんたちのイベントが開かれているではないですか。

写真ではわからないけれど、革靴を履いたお客さんたちの長い行列ができていました。

かつて、新橋や有楽町の駅前では普通に見かけた靴磨きの職人さんたち。東京名物として歌にもなった靴磨き。最近は磨くような靴を履かない人が増えたせいか、職人さんの高齢化のせいか、すっかり見なくなっていました。が、ご覧の通りです。若い職人さんも増えているんですね。揃いの帽子とボウタイが粋です。
おしゃれの前に身だしなみ。そんな古めかしい言葉が、有楽町の片隅には生き残っているようでうれしいです。

僕が東京都民だった頃、パスポートの申請に来ていたパスポートセンターは、かなりの混雑でした。年末だからかな?

1965年竣工。パスポートセンターのある東京交通会館の階段ホールには、大理石モザイク壁画の矢橋六郎による『緑の散歩』。一見の価値ありです。

けっこう賑わっているので、調子に乗って銀座インズ2へ。

社員編集者だった頃、たびたび来ていた店も生き残っている。
こういう何気ない飾りも、平成令和にオープンした店では見なくなったでしょう?

この『銀座インズ』と、隣の『西銀座デパート』は首都高速の下にあります。その屋根代わりの首都高KK線は廃止され、2030年代を目標に『Tokyo Sky Corridor〔コリドー)』と名付けられた遊歩道となるらしい。
銀座を取り囲む空中回廊ができるという、とても夢のある楽しみな計画。ではあるけれど、有楽町駅前の、この昭和のまんま生き残ったような空間も、バッサリと再開発されてしまいそうな予感。
昭和のムード歌謡の第一人者、フランク永井さんが歌った有楽町を味わいに行けるのは、今のうちかもしれません。

あ、ついでに加えておくと、江戸の南町奉行所は、有楽町駅前の丸井のあたりにあったそうです。

夕暮れの東京駅。

そのまま乗り換えて帰ればいいものを、やはり降りたくなる東京駅。時刻はちょうど日が沈むくらい。駅舎の窓に灯りが入る頃の東京駅は、空と駅舎の光の変化を楽しむことができます。ライトアップされた夜の駅舎よりも尊いかもしれない。

これだけ広場が広いと、外国人観光客のキャリーバッグもそれほど気にならない。
あの灯りを見ていると、お酒が飲みたくなりますよね。
ステーションギャラリーではテレンス・コンラン展。コンランの作品についてはいろいろ印刷物で見ているし、ここに踏み込むとラッシュアワーまで見てしまいそうなので、後ろ髪を引かれつつも入らず。
駅ナカの居酒屋さんで、秋田の『新政酒造』による貴醸酒を一杯だけ。

ということで、東京での御用は納まりました。めでたしめでたし。

「夜行」という言葉が生きている、バスタ新宿。

翌日は、夜行のバスで福島に帰るというワカモノを見送りに新宿へ。
バスを待つ間、年越し蕎麦にはまだ早いけれど、高島屋の12階で蕎麦を食べているうちに、大東京は夕焼けに染まって行きました。

絶え間なく電車が通る新宿駅南口。何時間でも眺めていることができそう。

ここからは都庁のプロジェクションマッピングを見ることができるのだけど、あれほどつまらないものは写真も動画も撮る気にもなれず。
リオデジャネイロ五輪の閉会式で魅せた、次回開催都市東京のプレゼンテーションは素晴らしかった。日本にだって優れたクリエイターはいるのに、なぜ行政が作ると、あんなに恥ずかしいものになってしまうんだろう?

そこで思い出したのが、パリのノートルダム寺院が再建され、披露されたときのイベント。最初にこの映像を見たときは圧倒されました。都庁のゴジラと比べるなんて畏れ多いほどですが、ぜひぜひご覧ください。

さてと、気を取り直して新宿駅南口に降ります。
ここはかつて、広大な操車場でしたっけ。今ではとても居心地の良いスペースに生まれ変わりました。再開発が大っ嫌いな僕でも賛成できる一例。ベンチだけではなくて、テーブルまであるなんて有り難いです。コンピュータを開いて、軽く仕事をする人もちらほら。どうか皆さん、きれいに使いましょう。
僕はここから、絶え間なくやって来る電車を眺めているのが好きです。

一日の乗降客数350万人という、世界一の巨大鉄道駅。普段は全国の”無人駅鑑賞”を趣味とする僕としては、どこを見ていいのかわからないくらいデカい。

そして、ワカモノを見送りにバスタ新宿へ。
そうだよな。かつて、遠くに行くときは「夜行」が当たり前だった。旅行でも、故郷の家族に会いに行くにも、一晩乗り物に揺られて行ったものですよ。
ここに来ると、そんな時代の空気が蘇る。

故郷に帰るために、こうして長い列に並んで切符を買う人たち。胸がアツくなりますな。

一般の人を写すのは遠慮したいので写真は撮らないけれど、待合室は年末の混雑の真っ只中。いろいろな地方の言葉が聞こえてきます。
バスタ新宿には、昔の上野駅のような郷愁がありますね。かつてのブルートレインの代わりをバスが担っているからかも。
この季節、東京や近郊に住む多くの人にとって、遠い地方に故郷を持つ人が羨ましくなるのではないでしょうか。僕もどこかに帰りたい。

そして、神奈川県から見送る夕日。

自宅に戻り、人並みに年末の片付けやら買い物やらを済ませて大晦日。
近所の神社では年明けの準備を終えていました。
つい二週間前までは黄葉の盛りを迎えていた銀杏の木も、すっかり葉を落として冬の備えを終えています。

樹齢400年近いと言われる巨樹なのです。
12月31日、神奈川県の日没は16時38分。

一年でいちばん日没の早い時期とは言え、いちばん早いのは12月5日から7日の間で16時28分。冬至の12月21日は16時32分。今はもう、少しづつ春に向かっているのです。

2024年最後の夕焼け富士の上には、小さな雲が散らばっていました。
夕日を眺めていたカップルは、まるで劇画のようなシルエットを描いています。
日没後30分くらいのグラデーションで仕上げ。寒い中、待った甲斐がありました。

ということで、2024年は静かに過ぎて行きました。
21世紀に入って四半世紀め。2025年は平和で穏やかな年でありますように。
今年もよろしくお願いします。










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