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富士さんのもとでの平等。
今年の新緑の季節、静岡からの帰りに新東名高速から見た富士さんが、あまりにきれいだった。西に傾いた太陽を背にした富士さんは、まるで巨大な如来のようだった。名付けて富士如来。あの日以来、僕は富士山のことを富士さま、あるいは富士さんと呼ぶようになった。
拝みたくなるくらいの美しさだったけれど、高速道路でクルマの運転中に拝むわけにも行かないので、また改めて来ようと思って約半年。
そして、ようやくその日がやって来ました。天候が落ち着いた立冬の2泊3日。富士さんの周りをぐるりと一周。ということで、富士さん一周のガイドを始めます。
旅のスタートは御殿場駅から。
あのとき富士如来を見たのは新東名高速の御殿場インターの手前だった。いちばんの見どころは裾野インターの辺りだと思うので、まずはひとつ手前の御殿場で下りる。あとは富士さんの周りを一周する、国道469号を基準に移動する。
この道は一周107km。ちょうど御殿場から東京まで行ける距離だ。富士さんって大きいのだ。聞くところによると、この道を自転車で一周する「フジイチ」というコースもあるらしいけれど、アップダウンが多くて大変だろうな。
とりあえず御殿場駅に来たものの、駅前の富士さんの位置にはビルがあって、眺めることができない。なんかもったいないな。富士さんは誰のものでもないのだから、駅という公共の場所からこそ、ゆっくり眺められる状態であってほしい。
ということで移動する。469号には向かわずに、この日に予約しておいた宿に移動する。先にチェックインを済ませてしまおう。
そして市街地を抜けると、間もなくご本尊が姿を現しました。
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宿にチェックインし、落ち着く頃には、日はかなり傾き始めていた。その宿は、敷地内にビール工場があったり、温泉があったり、いくつかのタイプの違う宿が点在していたりで、かなり楽しめる施設だった。ということで、この日はここまで。
この宿の敷地には毎年10月上旬か3月上旬にかけて、毎晩イルミネーションが輝くトンネルがあるので、ご存じの方も多いことでしょう。
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そもそも自宅を出た時間が遅かったので、その日の富士さんは御殿場から見たのみになってしまった。翌日も晴れの予報だったので、ちょっと油断しておりました。
晩秋の富士山麓は、ススキの嵐が丘。
そして翌朝、おはよう富士さん。
ちょうど日が昇ったところで、葛飾北斎が描いた、凱風快晴そのものの富士さんを見ることができました。ホクサイ先生は、あの絵をどこで描いたのだろう?
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朝から温泉に入り、朝食を済ませ、再び御殿場駅に戻る。その日は国道469号線を、イチから走り直してみようと思ったからです。が、あれ? 富士さんが見えない。天気がいいのに富士さんが見えない。
この日は日の出とともに気温が上がったので、富士さんとの気温差で雲が現れたのかもしれない。新幹線から見ると、晴れているのに富士さんだけが見えないことがあるけれど、まさにあの状態なのだと思う。
御殿場を出ると、間もなく須山エリア。自衛隊の北富士演習場がある辺りです。僕が高速道路から富士如来を見たのは、このあたりのはず。しかし富士さんだけが見えないのです。
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それにしても、ここのススキの草原は広大でオミゴト。ススキの穂が逆光を受けてキラキラと輝いています。実を言うと雑誌の撮影で、たびたび富士山麓には来ています。しかし仕事となると、日があるうちにサクサク効率よく撮影を終えることしか考えないから、実はこれほどのススキの景色なんて見ていなかったんですね。
ということで気を取り直し、過去の経験に基づき、視点をススキに切り替える。そのついでに、僕がいちばん好きな富士さん撮影スポットにご案内しましょう。それは下の写真です。少し期待したんだけど、やはり雲しか見えない。
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待っても雲は晴れそうにないので移動する。今回の富士さん一周は、次回のためのロケハンということにしよう。などと思いながら走り始めて間もなく、また新たにススキの名所に辿り着きます。ここは国道469号線からは外れるけれど、十里木高原方面から、富士宮市内に向かう道沿いにあります。トイレ付きの駐車場も完備。
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そして間もなく、道は富士市街へ。高台からはしばらくの間、駿河湾を望むことができます。
日が西に傾き始める頃、富士さんは徐々に神秘の姿を現す。
富士宮の市街地を通過し、道を富士パノラマラインに変え、富士さんの西側を北へ。朝霧高原、富士五湖へと続く、牧草地とキャンプ場の多いエリアです。
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途中の道の駅で休んでいたところ、少しずつ裾野が見え始めた。やがて山頂らしきものが見え隠れを始めたので、少し移動しながら待機する。するとですね…
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道路脇の駐車スペースには、次々と乗用車が現れ、駐車し、誰もがカメラを取り出す。すぐに隠れるので、「富士さん、頑張って!」と言ってる人までいる。この辺りを走っていた人は、誰もが同じことを考えていたのだろうか? 脇見運転に注意しましょう。そしてクルマを降りた誰もが、山頂を眺めて幸せそうな顔になる。やはり富士さんは、特別な存在なのだ。
そのまま道なりに走り続けると、間もなく本栖湖。この西岸のキャンプ場からは、千円札の裏に描かれた富士さんを見ることができる。はずなんだけど、相変わらず雲に隠れてしまったので通過。その隣の精進湖でひと休みしてみるかな。
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それにしても、このまま帰ってなるものか。夕方過ぎに冷えてくると、再び富士さんは、その全貌を現すはず。このまま河口湖に向かい、どこかで一泊しよう。実は河口湖の近くに、ぜひとも訪ねてみたい場所があるのだ。そこには明日行くとして、手頃な宿を探す。
実は、河口湖畔はホテルがバカ高いのです。外国人観光客仕様の宿も多く、観光バスがバンバンやって来るので、さらに値段は高騰する。
地味なビジネスホテルが取れたので、ひと安心して河口湖へ。そしてそこで僕が見たものとは…
河口湖にて、ついにお出まし。この姿を目に焼き付けておかねば。
河口湖大橋辺りの渋滞に捕まっている間に、雲がだいぶ晴れてきていた。橋の東側で見た富士さんはご覧の通り。
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河口湖大橋の東側、観光ホテルが建ち並ぶエリアには、湖畔に沿って遊歩道がある。けっこうな人出なのだけど、まったく日本人とすれ違わない。欧米系の観光客は二割ほど。あとはアジア系の観光客と思われます。
ようやく姿を現した富士さんに、誰もが喜び、誰もが自撮りをして、あるいは大きなカメラを取り出して、撮影に余念がない。
家族で観光に来ている人たちが多いようだ。だから一人で歩いていると、撮影を頼まれることが多い。任せなさい。どこの国の人かはわからないけど、国に帰った後で、日本の富士さんの写真を見ることだろう。それがいい思い出であってほしいものです。
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彼らのようすを見ていると、最初は写真を撮るのに一生懸命。しかしやがて、撮影をやめて、誰もがぼんやりと富士さんを眺めるようになる。なぜなら、いよいよ夕焼けが始まったからだ。
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富士さんは、多くの日本人にとっておなじみの山ではあるし、神秘的な”霊峰”というバイアスがかかる。だから富士さんの美しさを客観的に見ることは難しい。
一方で、外国人観光客が住む国にも代表する山や風景はあるはずだ。おそらく彼らにとって、かけがえのない故郷の山に違いない。そんな彼らの目には、富士さんはどのように映るのだろう? 外国人にも富士さんは大人気のようだけど、やはりこの山を見ると、日本人と同じ気持ちになるのだろうか? これは絶対的に美しい山なのだろうか? これはけっこう興味のあるテーマです。
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富士さんが姿を現すと、こうして人が集まってくる。そして富士さんを見ると、老いも若きも、男も女も、右の人も左の人も、誰もが幸せそうな顔をする。そんな存在が、この世の中で他にあるだろうか?
富士さんは、誰に対しても平等なのだ。たまにもったいぶりながら現れるけれど、誰の前にも平等に現れ、誰に対しても同じ喜びを与える。
しかも裾野は広く、山脈という徒党を組まない孤高の独立峰。こんなに美しい山が、日本で一番高い山でもある。この国に富士さんがあることに、もっと感謝しなくてはいけないな。
なお、この投稿では、まだ富士さん一周を終えていません。この翌日には、富士吉田市の本町二丁目商店街(わかるかな? あの、商店街の向こうの富士さんが、とても大きく見える商店街)と月江寺(げっこうじ。いい名前ですね)に寄り、しみじみ感じ入ることがあったのです。が、この投稿が長くなったので、今回はこれにておしまい。続きは次回にまとめます。