【スペイン巡礼7日目】人生の答え合わせ
2024/05/31 スペイン巡礼7日目
【 Estella - Los Arcos 21.4km 】
星の降る街を出て、歩き始めた朝。
30分ほど歩くと見えてきたIrache(イラーチェ)
ここを通るのをとても楽しみにしていた。
なんでかというと、この辺りはブドウの栽培が盛んで、イラーチェには蛇口を捻るとワインが出てくる場所があり、巡礼路でも有名だ。
ワクワクしながら到着!
朝からワインなんて、贅沢。
このために日本で折りたたみのシリコン製のカップを買った私は、ギリギリまでそのシリコンカップを使うか、巡礼者のシンボルのホタテ貝を使うか悩んでた。
それなのに、
それなのに...
ワインが出なかった。
薄い赤色の水がチョロチョロ出てくるだけ。
ガッカリした。
ワイン工場に併設されたこの蛇口は、おそらくワイン工場がオープンするのと同じ8時に出てくるようになるのでは?と他の巡礼者が話していた。
あと1時間も待てない私は写真だけ撮って、先に進む事にした。
ちなみにここのURLから、この場所のライブ映像が見えるらしい。
近くにいた巡礼者は、遠く離れた国の息子さんにURLを送り、カメラに向かって手を振っていた。
こんな時、彼氏でもいればとつくづく思う。
彼氏もいなければ、ワインも出ないので、再び歩き始めた。
今日はロスアルコスまでに、12km何もない道を歩かなくてはならない。
何もないとは、本当に何もない。
小さな町もない、ということはバルもない、トイレもない、水飲み場もない。
ただただ、茶色い道が続いてるだけ。
その道をただひたすらに歩きながら、考えていた。
この道では考える時間がたっぷりとある。
社会人になり、忙しく働きまくっていた日々の隙間を取り戻すかのように。
スペイン巡礼を始めて1週間。
私は何故この道を歩いているのだろう?
何を求めてここへ来たんだっけ。
歩き終えたら、何か変わってるのだろうか。
もし何も変わってなかったら?
スッキリするどころか、モヤモヤしてきた。
私、このままでいいんだろうか。
人生に対する答えが見つからない。
そんな事ばかり考えていた。
夕食はアルベルゲで食べることにした。
メキシコ人のファンカルロス、アメリカ人のジェシーとミミ、オランダ人のレナータと同じテーブルになった。
みんな私よりも年上で、落ち着いている。
スペイン巡礼の恒例行事の“Why Camino?”
”どうして巡礼をしてるの?タイム”が始まった。
ミミは元々バックパッカーで、息子達が大きくなったからカミーノに挑戦することにしたらしい。
ファンカルロスは、最近離婚をして第二の人生を歩み始める前の時間だそう。
私は、なんだか今の人生に疲れちゃって...と話し始めた。
30歳になって思ったんだけど、40歳の時にもこの気持ちを抱えたまま生きたくない。
やりがいも分からず、働くために生きているような毎日が過ぎて、周りと比べたり、肩を並べるためにあれこれ考えたり。
初日に出会ったジョンが教えてくれた「Burned out」「心身共に消耗し、燃え尽きた状態」
その一言を放った瞬間、レナータが私の手を握ってくれていた。
彼女は「分かるよ、その気持ち」と伝えてくれた。
ここでは誰もジャッジをしない。
こうしたら?ああしたら?なんて人はいない。
ただ耳を傾けて寄り添ってくれる、そんな人が多い気がする。
年齢も国籍も違うし、育った環境も文化も違う。
世界中から様々な価値観を持った人間が集まるこの巡礼では、みんなそれぞれ色んな思いを抱えて歩いてる。
だけど、どんな理由であれ、同じ道を歩く仲間だと思った。
みんなの「答え」が、この道で見つかりますように。
そんな気持ちで眠りについた。