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1000日チャレンジ 798日目 猪熊弦一郎「マティスのみかた」読了記録

ゴールまで202日

★BMI:24.4

★マティス展にあわせて読んでいた猪熊弦一郎著「マティスのみかた」を読了したので記録に残しておきたい。

「マティスのみかた」(猪熊弦一郎著;作品社;2023年
発売日 ‏ : ‎ 2023/4/18
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本 ‏ : ‎ 208ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4861829704
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4861829703
(以下、出版社web siteから引用)「「誰でも、ただちに、マチスは好きだと言い得るが、解ることは、難事中の難事である」
ウォーホルも憧れたことでお馴染み、フランスを代表する画家アンリ・マティス。猪熊弦一郎のデッサンを見たマチスが「うますぎる」と戒めたのは良く知られていますが、本書はそんないのくまさんがマチスの芸術について、巨匠マチスについて、マチス先生について書いた評論とエッセイで構成された一冊。100を超えるマチス作品、それをやさしく正直な言葉で伝えるいのくまさん。たしかに「解る」まではいかないにせよ、きっと「好き」をもうちょっと大きな声で言えるようになるはず。」

猪熊弦一郎(1902-1993); 香川県高松市生れ。東京美術学校で藤島武二に師事し油彩画を学ぶ。1936年に新制作派協会を結成。東京、パリ、ニューヨーク、ハワイなどで様々な芸術家たちと交友。『小説新潮』の表紙絵、三越百貨店の包装紙、慶應義塾大学学生ホールやJR上野駅中央改札の壁画などを手掛けた。

(感想)
★マティスと直接会って話をした著者ならではのエピソードで綴られたアンリ・マティスの評伝。日本で初めての大規模なマティスの回顧展が開催された1951年(当時、マティスは存命)前後から、1993年までに様々な雑誌などの寄稿を集めた構成になっている。著者によるマティスの画風の変遷の記述が、とてもわかりやすく、その内容に沿ってマティスの作品が100点以上掲載されている。
★知人を介してニースのアトリエを訪ねた際も、その後、パリのアトリエを訪ねた際も、マティスは東洋人の若い画家を丁寧にもてなしたようだ。その際、完成間近の作品を前に、その前段階を撮影した写真を時系列に並べて、どのようにして完成に至ったのかも教えてくれたというエピソードは印象的だ。多くの印象派の画家がそうだったように、マティスも日本の浮世絵などの平面的に単純化する絵画に影響を受けていたということもあったようだ。その際、一緒に行った友人が、「これは完成しているのか?」と失礼な発言をして赤面したという話もおもしろい。
★著者は、同時代のマティスのライバルであるピカソは天才だが、マティスは、「努力の作家であり、非常に常識的な作家」(本書p.135)と記している。「彼のいわゆるマティス形式は、彼が自ら育て、作り、完成した彼自身のスタイルであって、生まれながらにして特異なくせを持っている画家ではない」(本書p.135)と。それゆえに、マティスは一つの作品を描く前に、多くのデッサンをするのだという。著者も、画家にとって大切なのはデッサンだと、それが基礎なのだと語っている。自分は抽象画を描くからデッサンは必要ないなどという画家はだめだと。確かに、今回の東京都美術館のマティス展で観たマティスのデッサンはどれも素晴らしいものだった。
★著者は自身の描いた絵をマティスに見せた時に「うますぎる」と言われたそうだ。マティスは、「わたくしは、けっしてうまく描こうとしたことはないのですが、絵のうまいという技術は描けば描くほど、自然に備わってくる、それでいいのです。ところが、現代の絵描きはどうにかして、うまくなろうと努力をしている。うまくなる必要はないのです。むしろ子供の心のようになって一生懸命に描けばよいのです。」(本書p.202-203)と解説したそうだ。
★やはりレベルの高い芸術家同士の対話はおもしろい。できれば、この2人の対談を生で観たかったなあと思った。いのくまさんの解説を読んだうえで、もう一度、マティス展に行ってみたくなった。


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