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#17 あなたの「白」はどんな色?|美しくて怖い、さまざまな白

「スナックテレカン」は、北海道と京都に住むミニマム経営者の宿木雪樹(@yuki_yadorigi)と瀬良万葉(@seramayo)が、業務終わりにお酒を飲みながらZoomでしゃべるだけの番組です。

このnoteでは、Podcastの内容の一部をテキストにまとめています。今回は北海道の雪景色や韓国人作家ハン・ガンさんの代表作すべての、白いものたちのをテーマに、「白」という色について話しています。一部抜粋なので、おもしろそうと思ったらPodcastで聴いてみてください。

(本noteは2024年11月21日の配信を文章化したものです)

この日は「白い」お酒を飲みながらおしゃべり

宿木雪樹(以下「雪樹」):北海道の冬って寒さや雪かきなど大変なこともあるけれど、すべてが白く覆われるあの世界が、私はすごく好きなんです。雪の白ってただの白じゃなく、陽の光を浴びて発光する白なんですよね。

あと、雪の上に落ちる木の影が青白くて、光る白と影の白の組み合わせは、一面が雪に覆われた世界でしか味わえないもので、美しいと感じます。私が北海道に移住した理由はいくつかありますが、冬の雪景色もその一つです。

瀬良万葉(以下「万葉」):雪の白さって、ほかにはない独特の白さですよね。京都も雪が積もる日はありますが、すぐに溶けて下にあるものがあらわになるんです。だから、見渡す限り真っ白な世界は、本当に北の方に行かないと見られないんだろうな。

雪樹:北海道に旅行に来られる方には、交通の便などの理由で「冬はあまり来ない方がいいよ」とアドバイスしてしまうんですけれど、景色の美しさでいったら、世界が真っ白になる冬が一番かもしれません。

万葉:白といえば、ノーベル文学賞を受賞された韓国の小説家、ハン・ガンさんの作品『すべての、白いものたちの 』について、先日雪樹さんと話したんですよね。

チョゴリ、白菜、産着、骨……砕かれた残骸が、白く輝いていた――現代韓国最大の女性作家による最高傑作。崩壊の世紀を進む私たちの、残酷で偉大ないのちの物語。

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雪樹:そうそう。私がハン・ガンさんを知ったのは、ノーベル文学賞受賞がニュースになった日の万葉さんのXポストがきっかけでした。

雪樹:受賞作品も気になったけれど、私は白という色に思い入れがあるから、『すべての、白いものたちの 』というタイトルを見て、この本から読んでみようと思ってたんです。実際に読んでみたら、すごく良くて……!

万葉:いいですよね。おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり、つき、こめ、はくもくれん……といった白いものがキーワードとして出てくる物語なのですが、なんていうか、詩を読んでいるような気持ちになります。

雪樹:「こういう白です」という説明はまったく出てこないのに、その白がめちゃくちゃ解像度高く想像できる文章ってすごいなと思って。

万葉:何か、色を触っている感じ。触っているし、その色に感情が存在しているっていうか……。

雪樹:わかる。おくるみだったら、色だけじゃなくて、素材の凹凸や生地の手触り、影の色まで含めて、ありありと想像ができてしまいます。

万葉:これはぜひ読んでほしい作品ですね。

雪樹:物語としてどうかというより、五感を手繰り寄せるみたいな、感覚的なものが好きな人にすごくおすすめしたいです。

小口側から見てとてる、色味、彩度、手ざわり、さまざまな白の存在

万葉:私、最初に読んだときに、「これ(韓国語から日本語に)どうやって翻訳するんだろう」って考えました。

雪樹:この作品の翻訳、難しかったでしょうね! もとの言葉が持っていた感覚を、しっくりくる日本語にできる翻訳者さんのセンスは本当にすごいと思います。詩的に凝縮された言葉で書かれた『すべての、白いものたちの 』を、他言語にする行為、普通に考えたら無理でしょう。

万葉:でも、 斎藤真理子さん(※この本の翻訳者さん)のおかげで、見事な日本語で読めるのだから、ありがたいですよね。

私は厨二病時代、好きな色は黒で、嫌いな色が白だったんです。白ってすぐ汚れるから、その弱さが嫌だと思ってたんですよ。中学生っぽいでしょ。黒はすべてを吸収するから、そうありたいと思っていたのかも。でも、最近、白って結構強くて、いろんなものを跳ね返しているって気づいたんです。

雪樹:そうですね。あとね、白って底知れない怖さもある色だと思います。曇り空って灰色のイメージですけど、北海道では雪がすごく降ると空が薄く真っ白に曇る日があるんです。そういう日には、距離感がつかめなくなります。地面も雪に覆われ、空も白い雲に覆われた風景はすごく怖いです。

万葉:それは不安になりそうですね。

雪樹:闇夜の怖さ、黒の怖さは、「見えない」のが理由だと思うんですよ。でも、うまく言えないんですけど、白は見えない怖さというよりも、その色自体の怖さがかなり強い気がしています。

万葉:確かにそうかも……。

雪樹:白って、さっき万葉さんが言っていた「弱さ」みたいなものの裏に、実は底知れぬパワーみたいなのを持ってる色かなって思っちゃいます。

万葉:言われてみれば、死に装束も白だし、白無垢もウェディングドレスも白いし、白って境目にある色なんですかね。

雪樹:そうかもしれない。白って、やっぱりどこか死に近い感じがします。喪服は黒だから、黒も死に近い色なのかもしれないけれど、何となく黒って人間が作り上げた死のイメージのなのかなって。

万葉:わかる気がします。黒のほうが生きている人間に近い。

全編はPodcastにて

今回のnoteは「#17 あなたの「白」はどんな色?」からの抜粋です。Podcastではもっとたくさん話しているので、ぜひ続きを聴いてみてくださいね。

ご感想やリクエストがあれば、このnoteへのコメントか、Podcast「スナックテレカン」へのお便り受付フォームまでお気軽にどうぞ。

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