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人の想いを受け継いで愛し合うこと

今年の春、友人が突然、
3haくらいある農場の代表になった。

千葉北インターの近く。
車通りの激しい国道16号線を少し入ったところに
「タンジョウファーム」はある。

大きなトチノキが目印の
そこにだけ人が吸い込まれていく
異なる空間。

タンジョウファームは、
牧場やレストランもあって
食事に来る人だけでなく、
体験農業に来る人、草取りに来る人、
来る人たちが笑顔で帰っていく場所になっている。

初めは25年以上前に農場長と友人が
PTA活動で出会ったことが始まり。

かねてから農業に興味のあった友人は
野菜作りや牛の世話を手伝った。

牛たちの堆肥を活用した
タンジョウファームの野菜や果物は、
みずみずしくておいしい。

見た目はコロンとして
かわいらしいナスやら
産毛がふさふさしたオクラ。
野菜は年間100種類以上、収穫できて、
ブルーベリー摘みもできる。

直売所の「タンジョウファームマーケット」では
季節の野菜や色とりどりの珍しい西洋野菜が
所狭しと並んでいる。

店の前に立ったら、
どれを買うか迷うに違いない。

「採れたての野菜や果実を調理して、
多くの人に召し上がっていただきたい」

循環農業を目指していた
農場長と友人の想いが形となって、
11年前には「タンジョウファームキッチン」が開店した。

採れたて野菜のランチを食べると
皆、笑顔になる。

満足するから「生きる力」がわいてくる。

タンジョウファームに来たからこそ得られる「幸せ」。

命に触れることが好きな農場長の目指した「夢」だった。

そこには自分たちが作り出すもので
誰かを幸せにできるという
確固たる自負があった。

東京に住んでいる私は
段ボールに入ったタンジョウファームの野菜が届くと
実家の母から届け物があった時と同じような愛を感じる。

農場長の愛が友人へと受け継がれ、
それを私が受け取る。

そういった小さな循環農業運営が
農場長の死によって、
途絶えかけようとした。

今日という日が明日へ同じように
簡単には続かないことを思い知った。

「どうしたらよいだろう」

人はそれぞれに想いがあり、
わかり合うことは難しい。

「明日も同じ」を続けることも
難しい。

それでも遺された者たちは
未来へと生きていかなければならない。

ならば私は人の想いを受け継いで
未来永劫、愛し合いたい。


いつまでもタンジョウファームが変わらず
そこにあるために、
農場長の魂が宿っているだろう
トチノキに見守られて
今日も友人はガチョウに追われながら
厨房へと向かう。








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