願いごと
暗くなりかけた夕方、歩いている子どもが「あれなに?」と指さすので空を見上げた。
チカチカと明滅するあかりが、雲を引きながら下降していく。
「飛行機じゃないかな」
言いかけた瞬間、その横に、全く別の種類の光が、スゥーッと尾を引いて流れるのを見た。
「えっ」
「流れ星!?」
ナントカ流星群の時ですらまともに見られたためしがないのに、こんなにも偶然に、一筋の流れ星をみられるものだろうか。驚いて目を凝らすけれど、もう光は見えない。
ああ、でも。
隣で空を見上げて、「ながれぼしかなあ」とピカピカの顔をしている子は、たまたま早起きした朝に外を眺めて、虹を発見してしまうような子だから。
そういうことも、あるのかもしれないなあ、と思った。
「ねがいごといわないとだね」
子どもが言うのに、もう流れちゃったよ、と答えて歩き出す。
どうか。
この先も、空を眺めて、きれいなものを見つけて笑える平穏が、ちゃんとここにありますように。