新巻鮭
玄関の柱に錆びた五寸釘が
打ち付けられている
何に使うかっちゅーと
年末に贈られた新巻鮭を吊るすんだ
水分を飛ばすために
北関東の空っ風はよ
びゅんらびゅんら吹くからよ
新巻鮭はいい感じでしまっていく
蠅もいねぇような
真冬の昼間に
猫が柱に爪を立てる
新巻鮭まで届かねぇ爪を歯を
甘えながら怒りながら
とっかかりのねぇ垂直の柱にある新巻鮭
ありゃ、お前のことだよ
おれの垂直の彼方にいるお前は
寒風に晒され銀の鱗を輝かせている
魅力的でよぉ~そりゃ
どうしても取れない猫はよ
身体を柱に擦り寄せて
うっとりする
どうか!どうか!おまえ!
居てくれ!
ここに!
おれは猫にも
鼠にもなる!
手に入れられなくても!