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「地域」の見え方が変わった南小国での一夏。【ワーバケ2024体験記】

こんにちは!南小国町のワーキングバケーションに参加した武村です。東京の大学の教育学部に通っている4年生です。
今回は、夏のワーキングバケーション(以下「ワーバケ」)での経験についてご紹介します。

今回の記事を寄稿した武村です。

南小国で行なったこと

Instagramのストーリーで流れてきた広告をきっかけに、「教育」で地域おこしができることに惹かれて南小国に行くことを決めました。
地域おこし系のインターンシップは農業やフィールドワークメインのものが多く、教育や福祉の現場に入れるのは少し珍しいと思ったのも理由のひとつです。

募集記事の一部。

そんなこんなで7月24日から8月9日に南小国に行くことを決めましたが、その時すでに7月半ばで、採用通知が来たのはワーバケ1週間前でした。決まったその場で飛行機を手配したものの、初の熊本上陸なので南小国のイメージもあまりついておらず、とにかくドキドキワクワクしていたことだけはよく覚えています。

卒論の関係でワーバケ初日はオンライン、南小国に行くのは3日目からでした。初日にオンラインで自己紹介はしていたものの、SNSのグループトークで他のメンバーたちが一緒に自炊している様子など、仲良さそうにしている写真を見て、途中参加でも大丈夫か不安でした。しかし、行ってみると温かく迎えられ、観光コースの2人、教育コースの2人とすぐに打ち解けることができました。

初日のオリエンテーションでの自己紹介の様子。

南小国での2週間は濃く、一口に語れないのですが、「ワーク」としていたのは「子どもデイサービス」(通称:子どもデイ)のスタッフです。教育コースの学生3人で、近所の中高生や高校生のボランティア、社会福祉協議会の職員さんとともに、20人程度の小学1〜3年生を見ていました。
活動時間は朝8時半から夕方5時までで、私たち学生は学習時間のサポートにも取り組んでいましたが、子どもたちにとって1日のメインは午前中にあるプールのようでした。屋外プールでは子どもたちと水をかけ合ったり、追いかけっこをしたりしていました。

私は1年生向けの水深の浅い小さなプールを見ていることが多かったのですが、その1年生プールに2・3年生の子たちが遊びに来てくれることが度々あり、学年関係なく遊んでいる姿が印象的でした。
また、子どもデイに来る顔ぶれは固定ではなく、小国郷の小学校数校から集まるうえ、夏休みだけ帰省で南小国に帰ってきている関東在住の子どももいました。初対面でも物怖じせずに話しかけ、午後にはまるでみんな知り合いかのように仲よく遊ぶ社交性にいつも驚かされていました。

勉強時間のサポートにも入りました。

スケジュールに関して、参考までに最終日のプレゼンで使用した資料を貼っておきます。

5人の学生に対して、レンタカー1台、レンタサイクル4台が用意されていたため、土日や業務後は観光に勤しんでいました。南小国町の黒川温泉や押戸石、小国町の北里柴三郎記念館、阿蘇市のローズガーデン、大観峰、大分県の別府・由布院、熊本市内など、様々な場所に5人で行きました。楽しかった写真をいくつか載せておきます。
小国郷のお祭りに行った他、宿泊先の1階のバーで知り合った小国町の人に誘われて、地域のバスケチームの練習やビアガーデンにも参加しました。

黒川温泉にて。
南小国を飛び出して、阿蘇市などの近隣地域にも行きました。

ワーバケを通して学んだことはたくさんあります。この記事が長くなりそうなので、項目ごとに箇条書きで書こうかなと思います。

学んだこと

教育・地方行政について
課題は「町」それぞれ
町に小学校が3校ある良さと、それゆえの課題を感じた日々でした。高校で半数近くが寮生活をするというのも衝撃的でした。町長や町役場、教育委員会の方との話を通して、隣の小国町とも課題の差異を感じ、「町」それぞれ課題があるという当たり前のことに気づけました。

町役場職員の方々との座談会。

生活力
自炊力
学生5人で夕飯の積立をして、ほぼ毎日みんなで自炊していました。ほぼ初めて料理する子もいて楽しかったです。
・車の運転技術
東京ではペーパードライバーでしたが、南小国では出勤や買い物、観光のために運転することが多々あり、運転への抵抗感がなくなりました。

得た変化

「地方」と一括りにする危うさを感じられるようになりました。私が今回ワーバケで設定していたテーマは、「南小国町に住む子どもたちの姿や子どもを取り巻く環境について語れるようになる」ということでした。

期間中に私たちが考えたイベントとして、子どもたちに自分と町でお気に入りの場所を絵に描いてもらいました。

そのテーマを達成するにあたって、保護者、南小国町の教員の方、社会福祉協議会の方々、町長、町役場職員の方々など、子どもたちだけでなく、子どもたちを取り巻く地域の大人たちの話を聞くことを意識していました。それを通して、南小国町の大人たちが「南小国に生まれてきたからこその経験を積んでほしい」と考え、それぞれ動いていることに感動しました。

教育長からもお話を伺いました。

ワーバケ参加前は、都会と地方とを二項対立的に考えがちで、地方の課題をやや画一的に捉えていたように思います。今回南小国町へ来て、複式学級の小学校があっても小学校を3校残す理由や、山村留学や学童保育を行っていない背景など、町の取り組みとその裏側を聞けたことで、地域によって課題が違うだけでなく、同じ課題でも場所によって背景が異なり、真に画一的な課題などないんだと気づきました。

町長とも直接お話をさせていただきました。

来春から公務員として働くことが決まっている中、地方それぞれに課題があることや地方自治の大切さを実感を持って知れたのは、国や都道府県、市区町村などレイヤーの存在を大切にして今後政策に向き合うことができそうで、とてもよかったと思っています。

関係者の方々を前に発表しました。
発表の時です。

また、地域と主体的に関わっていこうと思えたのも、ワーバケで得た変化です。ワーバケ参加前は、東京に住んでいるのもあり、地域のお祭りや習い事などにあまり関心がありませんでした。加えて、運動が本当に苦手で、地域のスポーツチームの練習に参加するなど夢にも考えていませんでした。宿泊場所の下のバーに顔を出してみて、小国町の人に誘われた地域バスケチームの練習に参加したのは、ワーバケ中だったからです。

しかし、そのバスケの練習でこどもデイサービスの保護者や、小国町の地域おこし協力隊の方、黒川温泉でリゾートバイト中の人など、たくさんの知り合いができました。さらに、南小国町のチーム対抗のスポーツ大会やお祭り、小国町のビアガーデンでも、どんどんつながりが増えていきました。そこから、地域コミュニティに積極的に参加する楽しさを感じました。

南小国町スポーツトーナメント(通称:MOST)

今後、南小国、小国郷でできたつながりを大切にするとともに、自分のルーツのある地域、地域コミュニティに主体的かつ積極的に関わっていこうと思っています。

今やりたいこと

南小国から戻ってきてから、「自分にとっての理想の教育とは何だろう」と考えるものの結論がつかない日々を送っています。言語化するためにもさまざまな学校、町を見ていきたいと考えています。
また、私が行ったのは夏だったので、冬の南小国にも行ってみたいです。気温−14度の世界を体験してみたいです。

プールではなく、川で遊ぶこともありました。

おわりに

「ワーキングバケーション」、ワーバケって良い言葉ですよね。「地域おこし協力隊インターン」や「ワーキングホリデー」という名称も魅力的ですが、「バケーション」とオリジナルな要素を足したネーミングで募集しているのも南小国らしい気がします。
本当に働きつつ、南小国だけでなく阿蘇や熊本、大分まで観光し、「最高のバケーションが過ごせたね」と、ワーバケ後もメンバーみんなで話していました。

発表後に記念撮影。
教育コースでお世話になった社会福祉協議会の佐藤さんと、観光コースでお世話になった観光協会の森永さんと。

南小国のワーバケは個人的にこんな学生に向いていると思います。
当てはまる方は、来年度以降のワーバケ参加をぜひ考えてみてください!
南小国の優しい人々、豊かな自然が待っています。

・自然に触れたい
車からペルセウス座流星群が見えたり、川も水路も水が透き通っていたりと、豊かな里山があります。
温泉が好き
日本有数の黒川温泉があるほか、200円で入れるほど温泉が身近です。
人の温かさを感じたい
人との関わりでも都会では得られない経験ができました。「こんにちは」と見知らぬ人にも挨拶をする文化が残っており、道ですれ違う地域の方から挨拶された時は驚きました。また、ドラッグストアやコンビニに立ち寄った際はこどもデイの子やその保護者、地域のバスケチームの練習などで知り合った方など、知っている人に居合わせると声をかけてもらえて嬉しかったです。
・地方での教育を考えたい
電車が通っていない町、少子化が進む中あえて小学校3校を残している町です。教育委員会、町役場、町長ともに教育に熱量を持っており、刺激となること間違いなしです。
・観光による地域振興に興味がある
物産館と観光協会が併設しており、自然の観光資源がとにかくたくさんあり、ドローンや渓谷の貸し切りプランなどユニークな観光の売り出し方をしているのも特徴です。”南小国ならでは”の観光のあり方を考えることを通して、地域独自の魅力を発見する目が養われると思います。

東京に戻ってもたびたび思い出すほどに、南小国での経験は私の中で大きなものでした。また、そこで出会ったメンバーとの絆もかけがえのないもので、今度遊びに行こうと計画を今立てているほどです。南小国で出会った人々、そして得られた経験全てに感謝しています。

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