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阿蘇の春を行く。―押戸石の丘の野焼き

※特別に許可を得て撮影させていただいております。

南小国町ではまだまだ肌寒い日が残る3月、各地域で「野焼き」が行われます。

一般的に「野焼き」とは「野外で植生を焼却すること」を言いますが、「野焼き」は阿蘇の春の風物詩として挙げられます。
今回は、その春の風物詩をダイジェストでお届けします。

文字通り、野を焼きます。

阿蘇では「野焼き」が1000年という単位で人々の営為として行われてきました。

野焼きが行われ続けてきた理由は、枯れ草の除去、低木の生長を抑え、森林化を防ぎ、牛馬の餌(ネザサ・ススキなど稲科の植物)の生長を促進し、さらには枯れ草が流れて谷を埋め、川をせき止め、崩壊を招くのを防ぎ、また火災を防ぐためでもあった。その結果、草原が維持し続けられ、動植物の生育に力を与え、水資源が確保され、土地保全につながり、牧畜業の繁栄をもたらし、地域への経済効果を産み、また草原景観が観光に役立ってきた。

阿蘇ユネスコ ジオパーク

草原が原野として今も残っているのは、度重なる噴火、降灰などにより、森林化が妨げられたことが一因であるが、放牧、採草、野焼きなど、人が手をかけて維持してきた結果が大きい。つまり、この草原は自然と人間との共生で千年以上維持されてきた二次草原であり、歴史的産物である。

阿蘇ユネスコ ジオパーク
燃やし始めの押戸石の丘。

この日は連日の晴天と、空気の乾燥、風の強さもあり、見晴らしの良い押戸石の丘周辺は、火の回りもよくあっという間に燃えていきました。

ちなみに、今回の舞台である押戸石の丘は、こちらの記事でも触れているTOP画像の撮影地でもあります。


大体の間隔で火を点けていきます。
一瞬で燃え広がっていく様子。

これだけの規模で行うので、もちろん危険と隣り合わせ。
実際に現場にいると、炎との距離が離れていても結構な熱さを感じます。

どの順番でどの方向に向かって火をつけていくかは、風の流れを読みながら決めていきます。
熱と煙の影響で後景が油絵のように。
斜面を一気に燃やし尽くしていく炎。
草の爆ぜる音、空を舞う燃え殻。
燃えない木は水分を含んでいるから、とのこと。
普段の景色とは異なり、黒と煙で覆われています。
燃え終わった押戸石の丘の斜面。

というわけで、阿蘇の野焼きをダイジェストでお送りいたしました。

文化として続いている野焼きですが、高齢化や人口減少等を理由に、担い手不足も問題として挙げられます。
そこで、ボランティアとして一般の方も野焼きに参加することが可能となっています。
詳細は、公益財団法人 阿蘇グリーンストックのHPに野焼き支援ボランティアの情報がございますので、こちらをご確認ください。


ちなみに、候補に挙がってボツになったタイトルは
「阿蘇の熱い春 ~温泉地だけに…Hot Spring…ってコト!?~」
でした。

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