誰も私を知らないところへ
うつの症状が、明らかに軽くなったきっかけは、A町からZ市への引っ越しでした。7年前のことです。
私のことを誰も知らないところで、新たな生活を始められる。
私の存在を、誰の記憶からも消してしまいたい。その願いが少し叶う。今よりは生きやすくなる希望。
A町の人たちは、いい意味で仲間意識が強く、悪い意味で群れが多かった。あくまで私の主観的感想だけれど。
群れの仲間は、情報を共有しなければならない。他人の出身地や出身校、家族構成、勤め先、それに元カレ元カノ情報、大抵のことは知っていた。恐ろしい…
なんの役にたつんだろう?なんでそんなに知りたがるんだろう?なんですぐ人に喋るんだろう?
人の目を気にしすぎてしんどい私は、「自分が思うほど人は私に興味がない」とは思えなくて、ちょっとした雑談にも気を使っていた。
義母に誹謗中傷を広められ、ノイローゼになっていた私は、A町の人は、義母が広めた噂をさらに広めていると思い込んでしまい、外に出られなくなった。
だから、Z市に引っ越すことは黙っていた。長男は社会人に、次男は高校生になっていたので、保護者の付き合いもなかったし、今後付き合いを続ける気もなかった。
新たな土地での生活は快適だった。隣近所は知らない人。A町よりは都会寄りで、旧家も少なく、人付き合いはドライ。我が家には、小さい子どももいないので、その点においても気が楽だった。
引っ越しは、家庭の事情で決まったことで、私のうつ病とは直接関係はない。引っ越しの予定がなければ、また無理をして、焦って、求人を探して働きに出ていたと思う。
幸い、引っ越しという大きな環境の変化が、寛解状態へ向かわせてくれた。荷物の整理は心の整理に繋がり、積み上がっていくダンボールの数だけ、私の心は軽くなっていった。
新しい環境に慣れるまで、仕事を探すのは一年後にしようと決められたし、何に焦ることもなく穏やかに過ごすことができた。
一年後。私は社会復帰する。その時の話はまた別の機会に…