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繋がりで広がる、一若手作業療法士のキャリアの視点

こんばんは。
メディカルゼミの政清莉穂です。

今回私がインタビューをさせていただいたのは、
作業療法士の爲國友梨香さんです。

先日、Twitterのスペースにて開催中の#若者会議2023
私がスピーカーとしてお招きいただいたのですが、
爲國さんが#若者会議2023の運営をされていたことがきっかけで
今回のご縁をいただきました。

改めて、この度は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!


作業療法士を目指したきっかけ

りほ:
では早速インタビューを始めさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
まず、爲國さんが作業療法士を目指されたきっかけを教えてください。

爲國さん:
私が作業療法に興味を持った最初のきっかけは、高校時代の同級生です。
彼女はSMA(脊髄性筋委縮症)を患っていたんですが、
それでも大学に進学したいという想いを持って生活されていたんです。
その子に関わる人の中に作業療法士さんがいて、
その子から作業療法士という仕事の魅力を教えてもらったことが
1番最初のきっかけですね。

加えて、私の祖母が認知症で施設に入っていたので、
そういう人たちが地域で今まで通りに近い形で暮らせないかという考えや、
それをサポートしたいという想いがあって作業療法士を目指しました。

りほ:
ありがとうございます。
爲國さんはそのご友人との出会いが、
作業療法士を目指されるきっかけだったんですね。

私もそうなんですが、医療従事者を目指す学生の多くが、
自分自身や周囲の人に何らか医療に関する出来事があったことが
きっかけになっているように思います。
特に言語聴覚士なんかは、
そういう機会がないとなかなか知ることもないですよね。
そういう自分に近い原体験がある方は、より明確な目標を立てられたり、
モチベーション高く頑張れたりするのかなという印象なんですが…

爲國さん:
確かにそうですね、その通りだと思います。
私も今は、作業療法士として病院で働き続けるというよりは、
地域に出て生活に根ざした場で活動したいと思っているんですけど、
そのきっかけは祖母や友達との出会いですし、
後からお話しする大学時代の活動もつながるものがあるかなと思います。


レジデント制度について

りほ:
ありがとうございます。

では、次の質問に移らせていただきます。
爲國さんは大学で4年間学ばれた後に、
広島大学病院でレジデント作業療法士として働かれていたとのことですが、
なぜその制度を活用しようと思われたんですか?

爲國さん:
大学の時って、実習で初めて実際の現場を見るわけじゃないですか。
その時に、
いかに自分の机上の知識だけでは太刀打ちできないか
っていうのを実感すると思うんですよね。
大学ではいわゆる机上の解剖学や生理学、作業療法の概論といった
ことはしっかり教えてくれるんですが、
現場でのアセスメントの仕方対象者の生活の見方といった
作業療法士ならではの視点で臨床での介入をするというのは、
もう「現場に出て学べ!」というか、実践主義という感じで。
なので、私が卒業する時って、大学での机上の知識と現場をつなぐ研修
というのがほとんどなかったんです。

広島大学病院のレジデント制度では、
「オンザジョブトレーニング」=「仕事をしながら学ぶ」というのを軸に
置いていて、それが先ほどお話しした大学での知識と臨床をつなぐような
役割だったんですよね。私はその先駆的な取り組みにぜひ参加して、
今後の卒後教育を一緒に考えていきたいと思ったので、
レジデント制度に応募したという経緯があります。

りほ:
なるほど、ありがとうございます。
私も病院実習の時に、「教科書っぽいね」と言われたことがあって。
爲國さんのおっしゃる通り、
机上の知識と臨床での知識の深め方は違うんだと実感しました。

爲國さん:
そうなんですよ。
現場に出たら、教科書にあるような単疾患のみの方って
ほとんどいないんですよね。
そうなった時に、教科書だけを見て、
現場に出たらいきなり「自分なりに見ろ!」というのは、
あまりに酷な話じゃないですか。(笑)

例えば複数の疾患をお持ちの方の場合に、
それぞれの疾患によってリスク管理が異なるので、
どちらを優先するかといったことを考えないといけないですよね。
そういうことは、
臨床業務で経験を積みながらでないと学べない部分だと思うので、
そのような部分でレジデント制度は良かったなと思います。


学生時代にやっておいて良かったこと

りほ:
確かに、それはすごく大切なところだなと思いました。
ありがとうございます。

では、次の質問に移らせていただきます。
爲國さんが大学生活の中で、やっておいて良かったなと思われることはありますか?

爲國さん:
私は長崎大学医学部保健学科の卒業生なんですが、
総合大学には「医学部だけのサークル」というのが意外と多くあるんです。
私はそういうサークルではなくて、
「グローカル人材育成プログラム」という、他の学部の方はもちろん、
留学生や外国語を使われる多文化社会学部の方など
多様な方々が集まっているサークルによく参加していました。
また、「縁joyプロジェクト」という長崎県庁や労働局の方と一緒に
学生がイベントをつくるという活動にも参加していました。

このように、医学部だけでない場に出て行ったことで、
社会人基礎力と言われるような企画力やコミュニケーション力が
身についたなと思います。
医療系以外の人がどういう視点を持っているのか
ということを学べたことは、
臨床現場でのコミュニケーションや研究の計画の進め方、
企業とコラボしたイベントの立ち上げといったものの基礎力にも
なったなと思いますね。
なので、自分が所属している学部とは違う学部の人と関わるというのは、
すごく大事なことだと思います。

りほ:
そうですよね。
特に、私たちはコロナ禍と同時に大学生活が始まったので、
サークルの活動や他学部の人と会う機会というのは、
大学内では非常に少なかったなと思います。
だからこそ、自分から学外に出て積極的に活動すること、
そういう機会を自分で取りに行くことが大切だと思いますね。

爲國さん:
そうなんです、ほんとに!
他学部の人と気軽に話せるのって大学時代だけなので、
ぜひそういう機会を大切にしてもらいたいです。

りほ:
そうですね。
私も他学部の方との関わりを通して、
自分の視野を広げるという意味ではもちろんですが、
改めて自分が学んでいる医療や福祉について
考え直したり言語化したりするきっかけにもなっているので、
非常に貴重だなと感じます。

爲國さん:
そうですね。私もりほさんと同じような経験をしたのが、
先ほどお話しした「グローカル人材育成プログラム」です。
留学生と話す時に、自分の専門領域を英語にして、
自分なりの解釈で伝えるって難しかったですね。(笑)
良い経験になったなぁと思います。

りほ:
なるほど、確かにそういう機会はなかなかないですもんね。

爲國さん:
そうそう。あと、海外の人と関わって思ったことは、
まずは日本のことを知らないと話せないから、
現場を掘り下げるっていう今のりほさんの取り組みは、
すごく良いと思いますよ!

りほ:
そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます。

私がこのインタビュー活動を始めたのは、
大学3年生で病院実習に行かせていただくにあたって、
臨床のことを全く知らない状態でポッと現場に行ってしまったら
どうなってしまうんだろう…という不安があったので、
大学1年生の時からぜひ現場の方にお話を伺いたいなと思っていました。

ただ、4週間の病院実習を終えた今、
改めてこのようにインタビューをさせていただくと、
これまでとはまた違う視点でお話を聞くことができているように思います。

では、次の質問に移らせていただきます。
爲國さんが臨床に出られて感じられた、
大学時代の学びとのギャップがあればぜひ教えてください。


大学時代の学びと臨床とのギャップ

爲國さん:
これって、ぶっちゃけ話でも大丈夫ですか?(笑)
1つ目は、先ほどもお話ししたように、
単疾患ではなく複数の疾患が併存している方が多いから、
教科書通りの見方や評価、リスク管理が通用しないということですね。
例えば評価についてなんだけど、
作業療法士の分野だったら、「はい、ここは何度!」っていう風に
緻密に測ることはほとんどないということを知りました。(笑)

2つ目は、大学って作業療法士なら作業療法士、言語聴覚士なら言語聴覚士
っていう専門分野の勉強だけしかしないことが多いですが、その知識が
意外と別の分野で活かせるんじゃないかと思うことが結構あります。
ただ、今そう感じるのは、当時と比べて自分の視野が広がったから
という捉え方もできるかもしれません。

あとは、人脈の大切さを感じます。作業療法士はもちろん、理学療法士や
医師、看護師、企業といったつながりを通じて、新しい取り組みだったり
研究だったりが立ち上げやすいなと思います。
なので、大学時代に人脈を作っておくのも大切ですし、
社会人になってからも人脈は大切にした方が良いと思います。
大学では教えてもらえないけど…(笑)

りほ:
そうですね、ありがとうございます。
2つ目にお話しいただいた、専門分野外でその視点を活かせるというのは、例えばどういった場面でしょうか?

爲國さん:
それこそ、先日#若者会議2023で話題に上がった株式会社Canvasのような、
働く場の分析だったり、私たちってリハビリだけに目が向くけど、
まず自分たちが働いている環境の改善だったりにも役立つと思うな。
リハビリだけじゃなくて、産業分野教育分野
地域の活動にもすごく活かせると思います。

りほ:
なるほど。
例えば言語聴覚士だと、
基本的には
コミュニケーション障害のある方とコミュニケーションを取ることが仕事
と考えると、そのためにはまず
コミュニケーション障害のない方と円滑にコミュニケーションが取れる
ということが前提になると思うんですね。

そう考えると、
コミュニケーション障害のある方と関わる中で意識が必要なこと、
例えば声の大きさ話す速さ抑揚の付け方
非言語コミュニケーションツールの活用などのポイントなどを、
もう少し自分の日常生活に落とし込んで、
それを自分のスタンダードにするっていうことが
大切なのかなと思うことがあるんですが…

爲國さん:
うんうん、そういう視点だと思います。

りほ:
なるほど。これをもう少し発展させていくと、
爲國さんのような「作業療法×〇〇」という思考に
たどり着けるんでしょうか…
ちょっと、私にはまだ程遠いですかね…(笑)

爲國さん:
いやいや、私もまだまだなんですけどね(笑)
でも、本当にそういう視点だと思います。
病院だけ、対患者さんだけの視点じゃなくて、
日常にその知識が落とし込めないかなとか、
働く人や高齢者に活かせないかなとかっていうような
領域を変えた視点は大切だし、
臨床現場に出たらもっと広がるなと思いますね。

りほ:
それはすごく楽しみです!
先日の病院実習でも、
患者様とのコミュニケーションについて、バイザーの先生から
「本当に初めて!?とっても落ち着いてるね!」
と言っていただいたんです。
実際は内心すごく緊張していたにも関わらず、
どうしてそう見えたんだろうと考えた時に、
これまでのZoomでの1on1の経験が活きたのかなと思いました。

初対面の方と1on1をする時って、
「話し始めはどうしよう」「どうやって話を展開していこう」
って考えるんです。
それって患者様とお話しする時も同じだなと思って。
事前の情報収集共通の話題探しリアクションの取り方といったように、
私がこれまで1on1をする時に意識していたこと、やってきたことを、
思いがけず活かすことができて良かったなと思いました。

普段、爲國さんが患者様とコミュニケーションを取る上で、
気をつけていらっしゃることや意識されていることってありますか?

爲國さん:
あります、気をつけていること!
臨床現場に出て、先輩方を見ていると、
「医療従事者は上、患者さんは下」
っていう思い込みがある人が多いんです。
患者さんが何か話そうとするのを遮って、全部教える。
「〇〇しましょう、◇◇しましょう」って
一方的にプログラムを振っていく、指示をするっていう人がいるんだけど。

意外と、対等な立場で、
「病室で何してますか?
 今日は〇〇のニュースがありましたね!テレビ見ましたか?」
のように、患者さんの生活やこれまでの生活背景を掘り下げていくと、
それこそプログラムに必要な情報が出てくることもあるんです。
なので、私は意識して患者さんと対等な立場で話すようにしてるし、
こちらから話し過ぎないように気をつけています。

「名前は?」「生年月日は?」「家族構成は?」っていうような
マニュアルに沿って質問するっていう場合もあるんよね。
そんなのイヤやん?(笑)

りほ:
そうですね(笑)
一問一答みたいな形式だと、話も盛り上がらないし、広がらないですよね。

爲國さん:
そうそう!
それだったら、
「入院される前は何されてたんですか?」とか
「日中はどんな過ごし方をされてますか?」とかって質問したら、
自然と患者さんから話してくれることは多いですよ。
入院中って話す回数が極端に減るので、
発声の量とか嚥下機能も落ちやすいっていうから、
私は意識して患者さんに話してもらうようにしてますね。

りほ:
ありがとうございます。
私の周りでも「フリートークが苦手」っていう子は多いので、
今の爲國さんのお話は非常に勉強になると思います。

では、次の質問は今お話しいただいたことを、もう少し大きな視点で。
爲國さんが普段の生活の中で、
大切にされている想いや価値観ってありますか?


大切にしている想い、価値観

爲國さん:
私のキャリア全体で言うと、
①人との縁、人脈を大事にする
②人が喜ぶこと、人の役に立つことをする

っていうのが大きな2本の柱かなと思っています。

その背景としては、
私が小さい頃に喘息持ちだったことでいじめられていて。
その時、学校行きたくないなと思っていた時期があって、
人がすごい怖かったんです。
だけど、恩師のお陰で学校に行けるようになって、
こういう人に恩返ししたいなと思ったのが1つのきっかけです。

あとは、大学や病院で活動するにあたって人脈の大切さを知ったから、
そういう人とのつながりは大事にしていこうって思っているのが、
今の2本の柱の背景ですね。

りほ:
なるほど、ありがとうございます。
私もつながりはとても大切にしたいと考えていますし、
そのつながりによって、
思いがけず巡ってくる機会新しい出会いもありますよね。
爲國さんが人脈を大切にされる中で、
意識されている具体的なアクションは何かありますか?

爲國さん:
普段臨床で会う人の場合は、まず対話を丁寧にしようと思ってる。
準備が8割だと思って、
質問したかったら事前に質問用紙を作っていくし、
名刺の準備、身だしなみはもちろん、
予定が終わったらすぐにお礼のメールを送るとかっていうように、
対応を丁寧にすることを意識しています。

そういうつながりって、
ずーっと濃いつながりっていうわけではないんだけど、
広く浅いつながりがずっとあったら、
どこかで活かせる機会が来るので、
1回のコンタクトする機会を大事にしておくと、
後々人脈を活かせるようになっていくんじゃないかなと思います。

あと、手土産は持っていくようにしてるかな。
一言メッセージを添えたりすることもあります。

りほ:
なるほど。私も共感するポイントがいくつもありました。
1つずつのアクションは小さいことかもしれませんが、
それを積み重ねるのが大切ですね。

爲國さん:
そうですね。
あとお土産とかは、話のネタにもなるしね。
やっぱり、経営者の人とか、他県の違う職種の人とかと
話すとなると困るじゃないですか。
そういう時に、お土産をきっかけにして話を始められることもあるので、
結構良いツールだと思います(笑)


メッセージ

りほ:
ありがとうございます、ぜひ参考にさせていただきます!

では最後に、このページをご覧になっている方、
特に医療福祉系の専門職を目指されている学生さんへ向けて、
ひと言メッセージをお願いします!

爲國さん:
はい。ひと言と言わず、2つくらい伝えさせてください!(笑)
みなさんが目指されているお仕事って、
人の幸せに貢献する素敵な仕事だと思うので、
ぜひその資格取得を目指して頑張って欲しいというのが1つです。

2つ目は、繰り返しになりますが、学生という立場を活かして、
様々なバックグラウンドの人と柔軟に関われるのは今だけなので、
ぜひ自分の専門領域以外の領域に、
勇気を持って自ら足を踏み出して欲しい
です。
そうすることで視野が広がって、
将来のキャリアが広がるきっかけになると思います。

りほ:
はい、ありがとうございました!

(インタビュー日:2023年2月21日)


インタビューを終えて

今回のインタビューを通して、
爲國さんから「学生の今だからできること」について教えていただいたき、
改めて今自分が置かれている環境のありがたみを感じると同時に、
私自身の活動にも少し自信を持つことができました。

これからも、1つ1つの出会いや小さなことの積み重ねを
大切にしていきたいと思います。

この度は、お忙しい中インタビューにご協力いただき、
本当にありがとうございました。


おわりに

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

メディカルゼミでは、
インタビューにご協力いただける医療従事者の方を募集しております。
ぜひ皆様のご経験や学生に伝えたい想いをお聞かせください。

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