子どもに読んでもらいたい①『メメンとモリ』——— 命の儚さと力強さに寄り添う、ヨシタケシンスケが贈る珠玉の絵本
仕事から帰り、ソファに座って思索にふけっていると、妻が「この本、ええねん」と手渡してくれた一冊の絵本。確かに良かった。絵本を読んで感動することは滅多にないが、これは違った。扱っているテーマがヘビー級だ。それでも、子どもの読解力で、いや、むしろ子どもだからこそ、大人以上に深い部分で共感できる内容なのではないかと思った。ヨシタケシンスケ氏は、まさに真理を探究する哲学者であり、少ない言葉で圧倒的な共感を誘う真の教育者でもあると感じた。
「どんなに短い命でも、その存在には必ず意味がある。」
ヨシタケシンスケ氏の『メメンとモリ』は、命の儚さをテーマにしつつ、その中に見出せる喜びや力強さを描いた一冊だ。この絵本は、子どもにも分かりやすい形で「生きること」と「死」を優しく問いかけ、読む人の心に深い余韻を残してくれる。
特に印象的なのは、雪だるまの物語だ。溶けていく運命を受け入れつつ、その一瞬一瞬を楽しみ、大切に生きる姿が描かれている。短い命の中にも、大切な出会いや意味があることを教えてくれるこの物語は、子どもだけでなく、私たち大人にとっても忘れてはならないメッセージをそっと届けてくれる。
悲しみや喪失、そして不安――これらは私たちが生きるうえで避けられない感情だが、『メメンとモリ』はそれらに寄り添いながら、「それを受け入れた先にこそ、本当に大切なものがある」と優しく教えてくれる。ヨシタケシンスケ氏の温かなイラストとユーモアに満ちたストーリーは、重いテーマを軽やかに包み込み、読むたびに新たな発見を与えてくれるのもこの作品の魅力だ。
『メメンとモリ』は、人生の悲しみと喜びを通じて、自分自身の存在や他者とのつながりを考えるきっかけを与えてくれる。この本はただ読むだけではなく、読後も心の中で響き続け、何度読み返しても新たな感動をもたらしてくれるだろう。
ぜひお子さまと一緒に手に取ってみてほしい。人生の儚さの中にある輝きを見つけ、目の前にある日常をもっと愛おしく思えるようになるはずだ。