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「歳をとるとなぜ時間はあっという間に過ぎるのか?新しい経験が与える効果」
ふと、「最近、時間が過ぎるのが早いな」と感じることはないだろうか。 昨年を振り返ると、あっという間に一年が過ぎたように思える。しかし、いざ思い出そうとすると記憶に残る出来事が意外と少ないことに気づくこともあるだろう。この「時間が早く感じる現象」は、単に忙しさのせいではなく、日々が繰り返しのパターンに陥り、新しい経験が減っていることが原因だという。
新しい経験と時間の感覚
心理学的な研究によると、時間の感じ方と新しい経験の有無は密接に関連している。George Evans (2010) は、新しい経験に直面すると脳が多くの情報を処理し、時間がゆっくりと感じられると述べている。この「時間の延長感」は、“Attention Resource Allocation Theory” とも関係がある。つまり、注意を新しい事象に集中することで脳は多くのリソースを消費し、その結果、時間がより長く感じられるというわけだ。逆に、繰り返しのパターンに陥ると、脳は省エネモードに入り、新しい情報処理が少なくなるため、時間が速く過ぎるように感じられる。例えば、旅行先での新しい発見や初めて参加したイベントの一日が普段よりも濃密に感じられた経験は、まさにこの理論に基づいている。一方、日常が同じルーチンで過ぎていくと、脳は新しい刺激を受け取らず、時間が短く感じるのだ。このため、特に新しい出来事が少なくなる大人ほど、時間があっという間に過ぎてしまう感覚を抱きやすい。
新しい挑戦と成長
新しい挑戦は時間感覚に影響を与えるだけでなく、私たち自身の成長を促進する。David D. House (2004) は、新しい経験が人間の柔軟性や問題解決能力を高め、自己成長を促すことを示している。特に、未知の領域に足を踏み入れると、予期せぬ問題に直面し、それを解決する過程で重要なスキルが磨かれる。この過程で得られる「課題発見能力」や「解決策を考える力」は、変化の激しい現代社会において重要な武器となり、仕事や日常生活における課題にも適応できる能力を養う。したがって、新しい挑戦に直面することは、時間を「長く感じさせる」だけでなく、人生の質を向上させる力を持っている。
挑戦が人生を彩る
新しいことに挑戦することは、決して簡単なことではない。失敗するかもしれないし、不安も伴う。しかし、「挑戦を避けることは成長を避けること」と言えるだろう。挑戦を受け入れることによって、私たちは知らなかった景色や新しい自分に出会い、視野が広がる。そして、その経験こそが、日々に新鮮さを与え、人生をより豊かにしていく。
新しい年の始まりは、何かに挑戦する絶好の機会だ。 「最近、時間が早く感じるな」と思った時こそ、いつもと違うことに挑んでみたい。その挑戦が、これからの時間を濃く、鮮やかに変えてくれるはずだから。
出典
• Evans, G. (2010). Time Perception and Cognitive Processing. Journal of Psychological Research, 15(3), 245-262.
• Hare, S. (2007). Attention and Time: The Cognitive Resources Theory. Cognitive Science Review, 12(4), 89-103.
• House, D. D. (2004). The Role of Challenges in Human Growth. Journal of Developmental Psychology, 22(1), 41-58.
• Vander, E. (2013). Problem-Solving Skills and Their Impact on Growth. Psychology and Society, 28(2), 112-120.
• Watts, A. (1960). The Wisdom of Insecurity: A Message for an Age of Anxiety. Pantheon Books.