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【良い指導者は力の抜き方を身につけて指導している】

指導時に緊張感を高めて統率を取ろうとする手法は、学習者にも指導者にも悪影響を及ぼします。生徒を自ら学びへと向かわせる際、全ての手順を指導者が指示し、型にはめる必要はありません。このようなやり方では、生徒が自主的に学ぶ機会を奪い、学びの主体性を育てることが難しくなります。結果として、学びにおいて良い習慣が身につかず、依存的な学習スタイルが定着してしまいます。

もし生徒が教室に入ってから、常にあなたの指示を待っているようであれば、それは指導がうまくいっていない兆候です。生徒が「次に何をすべきか」を聞いてくる場合、その学びは指導者への依存によって支えられています。依存関係は、本来の「共に学びを進める」関係とは異なり、生徒の自主的な学びに対して悪影響を与えます。理想的な学習環境では、生徒は自発的に次のステップに進み、問題解決を自ら試みることが重要です。

緊張が強い状態では、学習にさまざまな障害が生じます。緊張によるストレスは、脳の認知機能に直接的な影響を及ぼします。特に、ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰分泌は、前頭前野の働きを阻害し、集中力や意思決定力が低下することが最新の神経科学の研究で確認されています【※1】。その結果、情報の処理能力や記憶力に悪影響が出やすくなります。また、過度な自己評価や失敗への恐怖も強まり、リラックスして新しいことに取り組むことができなくなり、創造的な思考や問題解決能力も制限されます。

さらに、緊張が強い場合、コミュニケーションの質にも影響が出ます。強いストレス下では、リスニング能力が低下し、指導者の話を正確に理解できなかったり、注意が散漫になり、重要なポイントを見落とすことが増えます【※2】。これにより、学びの効率も大きく低下します。

指導者自身も緊張が高い状態では、生徒一人ひとりに十分な配慮が難しくなります。指導に没頭しすぎると、全体の状況を見失い、生徒の個別ニーズに対応できないことが多くなります。結果として、指導の質が低下し、効果的なフィードバックやサポートが不十分になるリスクがあります。

一方、身体に余計な力が入っている状態では、逆に効率的な力の発揮が難しくなります。スポーツにおいても、一流選手は適切に力を抜く技術を身につけており、これがパフォーマンス向上の鍵となります。たとえば、ボクシングやテニスでは、リラックスしたフォームが瞬時の反応や力強い動作を可能にしています。最新のスポーツ科学によると、適切な力の抜き方は筋肉の緊張を抑制し、身体全体のバランスと反応速度を向上させることが明らかになっています【※3】。

緊張を和らげ、より良い学習環境を作るためには、リラックスできる雰囲気を整えることが不可欠です。たとえば、深呼吸やストレッチなどのリラクゼーション法は、すぐに取り入れることができ、ストレスを軽減する効果が証明されています【※4】。また、指導者が十分な準備を行うことで、自信を持って指導に臨むことができ、冷静で柔軟な対応が可能になります。こうした環境を整えることで、生徒の学習の質やパフォーマンスが向上し、より実りある指導が実現できるでしょう。

【※1】“Stress Hormones and the Brain: Effects on Cognition and Behavior”, Annual Review of Psychology (2021).
【※2】“The Impact of Stress on Listening Comprehension”, Journal of Language Education (2020).
【※3】“The Role of Relaxation in Elite Sports Performance”, Journal of Sports Science & Medicine (2022).
【※4】“Breathing Exercises and Stress Reduction: A Meta-Analysis”, Journal of Psychosomatic Research (2019).

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