事業成長のドライバーになる。SmartHRエンタープライズ カスタマーサクセスのこれから
2024年1月、SmartHRは組織体制を大きくアップデートしました。ビジネス部門が「機能別組織」から「事業本部+統括本部組織」に移行することに伴い、カスタマーサクセスもひとつだった組織を、以下の3つの組織に分けることにしました。
エンタープライズ事業本部 カスタマーサクセス本部
グロースマーケット事業本部 カスタマーサクセス本部
事業統括本部 プロダクトセールス・CS本部
今回はエンタープライズ事業本部におけるカスタマーサクセスについて、事業本部を率いるメンバーに話を聞きました。ここ1、2年で取り組みも組織規模も大きく進化してきたエンタープライズ領域のカスタマーサクセス。プロダクトも市場環境も変化する中で、事業成長を牽引していくことは簡単ではなく、今後も非連続な成長が求められます。組織がこれから目指す姿と、現状の課題を語ってもらいました。
登場人物の紹介
この記事に登場するのは以下の4名です。
名前は以下の写真の左から順に記載しています。
杉浦 俊貴
Nstock株式会社 カスタマーサクセス(2024年1月より出向)今泉 翔貴
カスタマーサクセス本部 第2カスタマーサクセス部 部長児玉 桃也
カスタマーサクセス本部 第1カスタマーサクセス部 部長稲船 祐介/インタビュアー・進行役
グロースマーケット事業本部 カスタマーサクセス本部 本部長
自分たちの役割は、事業成長のキャップを外すこと
稲船:早速ですが、新たに誕生したエンタープライズ事業本部のカスタマーサクセス本部はどんな役割を担っていますか?
杉浦:SmartHRをエンタープライズ領域に対応できるプロダクトにするために、プロダクトの進化に寄与する役割はもちろん、顧客ニーズとプロダクト間のギャップを埋めるという役割も担っていると思います。
SmartHRは企業規模に関わらずすべてのお客さまにご利用いただけるプロダクトとして進化を続けています。だからこそ、エンタープライズ向けに特化した機能を実装していけばいいというわけではなく、SmartHRのお客さま全体のことを考え、時にはプロダクト以外のアプローチでニーズを満たすよう動く必要があります。
エンタープライズ領域においては、カスタマーサクセスがいるからこそプロダクトだけでは叶えられないサクセスや受注拡大を提案し実現していると感じています。
児玉:プロダクトの成熟度的にも、エンタープライズ領域はまだまだ開拓していくフェーズです。だからこそ、事業成長の限界・キャップを外す役割を私たちは担っていると感じます。お客さまのサクセスを実現してこその事業成長だと思うので、お客さまと同じ方向を向いて、よきパートナーとして伴走することが求められていると思います。
稲船:エンタープライズ企業のお客さまにとっては、SaaSプロダクトの導入自体が大きなチャレンジですよね。どんな意識で取り組んでいますか?
杉浦:お客さまの挑戦に寄り添うことを常に意識しています。あとは、まだまだやり切れていませんが、お客さまと一緒に挑戦してエンタープライズ領域におけるバックオフィスSaaSの市場を確立していきたいと思っています。
児玉:杉浦さんと同じく、お客さま企業に入り込むことを意識しています。エンタープライズ企業のご支援では、カスタマーサクセスマネージャー(以下、CSM)が要件の細部までお客さまと一緒に詰めていくハイタッチなアプローチが求められます。
エンタープライズ企業は、会社規模が大きいだけにプロダクト導入の影響範囲が広く、またご在籍の社員が多いからこそ様々な業務においてイレギュラーな運用を想定する必要があります。そういった運用の細部を設計する際には、SmartHRから提供している業務担当者さま向けのヘルプコンテンツだけでは解消できない課題も多く出てきます。そこで、私たちエンタープライズのカスタマーサクセスは、お客さまにとって最適な運用を実現していくために、お客さまが抱えるニーズや課題に深く入り込み、ハイタッチでご支援していきます。CSMとしての介在価値を強く感じられる領域でもありますね。
また、エンタープライズ企業でのプロダクト導入は影響範囲が広く複雑であるため、導入を担当する業務担当者さまの負荷が大きくなりやすいです。その結果として導入遅延が発生することもしばしばあります。そのため、私たちは運用の設計に加えて、プロダクト導入・活用のいわゆるプロジェクトマネジメントにコミットしていくことも必要ですし、その役割はやはりハイタッチでないとできないと思っています。
稲船:顧客の企業規模(以下、Tier)によって介在価値の出し方は異なると思いますが、お客さまの課題解決にコミットしてダイレクトに価値を届けるという意味では、エンタープライズ領域ならではの難しさと面白さがありますね。
エンタープライズ領域におけるロールモデルを目指す
稲船:エンタープライズ領域のカスタマーサクセスとして、これから目指したい姿を教えてください。
杉浦:顧客のサクセスを実現できている状態、そしてSmartHRの事業成長に寄与できている状態を目指していきたいです。事業成長のドライバーになるのはやはりエンタープライズ領域だと思いますし、SmartHRの掲げている目標を推進する役割を担えればと思っています。
加えて、年末に公開された稲船さんのnote(SmartHR カスタマーサクセス 2023-2024)にもありましたが、世の中のエンタープライズ領域のカスタマーサクセスの在り方を確立していくことにも挑戦したいですね。SmartHRがエンタープライズ領域のカスタマーサクセスのロールモデルになっていくことを目指していきたいです。
稲船:ロールモデルになっているってどんな状態かイメージはありますか?
杉浦:エンタープライズはお客さまの要望の独自性も高い領域ですが、お客さまの課題を解決に導きやすくするために手段の再現性を高めていこうと尽力している最中です。必要な手法の標準化を行うことで、個人の能力だけに依存するアプローチではなく、個人の能力と仕組みの両輪で顧客サクセスを叶えるアプローチを提示できればと思っています。
一方で、仕組みを「武器」とするならば、その「武器」をどう使いこなすか、使いこなせるか否かは個人の能力にもよるので、標準化と同時に個々のスキルを高めることも必要だと考えています。組織として必要な仕組みがあり、個々のレベルも高い、そういう組織を目指したいです。
今泉:その話を聞いて思いましたが、私たちの役割も変化し続けているため、標準化できていない業務もまだまだたくさん残されています。いまのフェーズにおいても自分で考えて動ける人を引き続き求めていきたいですね。
杉浦:そうですね。自分で考えて動ける人が集まった時に、業務効率を高めることやチームとして一定の質を担保し、より成果を出すための標準化を目指したいですね。
個々の知見を展開して、組織で成果を出す体制へ
稲船:エンタープライズ領域の中で、EB(大企業対象)とMMB(中堅企業対象)のこれまでの動きと直近の状況について話してもらえたらと思います。まずEBからお願いできますか?
児玉:EBのカスタマーサクセスは2022年に誕生しました。それ以前はTierで分けた組織にはなっておらず、ひとりが複数のTierを担当する状態でしたが、Tierごとにサポート要件が分かれるよねという議論があり、現在の形に移行しました。
発足当時は個々人が案件対応することはできていたものの型化は進んでおらず、まずはサービス設計をするところからスタートしていました。当時はまだ「解約されないよう最低限このラインは守ろう」という設計でしたね。
2023年は社内からの事業貢献への期待が高まったこともあって、エクスパンション(顧客の利用拡大)の定量目標を持ち、そのためのサービス設計を考えはじめました。数字へのコミットが強くなり、エクスパンションへの注力は進んでいるなと感じる一方、お客さまのサクセスを実現するという観点ではまだまだやり切れていない部分もあるというのが直近の課題です。
そのため、昨年2023年下期は「顧客志向への原点回帰」をテーマに掲げ、サービスレベルを上げるためにエンタープライズの全社横断プロジェクト(参考note:エンタープライズ企業の支援を加速する、全社横断プロジェクトの「今」と「これから」)や、解約防止のための分析プロジェクトなどに取り組んできました。
杉浦:児玉さんの話とは別の観点になるんですが、ここ1、2年でカスタマーサクセスのやり方自体はかなりアップデートされた実感があります。これまでは個人商店的で属人的な動きが多かったんですが、一部の標準化が進みチームとして動ける状態になってきている手ごたえがありますね。振り返りミーティングを組織で行ってナレッジの蓄積ができてきたり、業務フロー作成用のひな形をチーム内で展開し共通の型として浸透していたり……日々の働き方においても、個人がそれぞれ動いていた過去の状態から、組織として動ける状態に進化していると思いますね。
今泉:ボトムアップで作ったものを組織全体に展開しきるのは簡単ではないですが、大事なことですよね。それぞれの知見を組織に展開して活用するオープンさとスピード感は、SmartHRの強みなのではないかと思います。
稲船:もう少し深掘りたいところではありますが、続いてMMBのこれまでこれまでの動きと直近の状況についても教えてもらえますか?
今泉:MMBでは直近はオペレーションに手を入れることはほぼやっておらず、チャーンやエクスパンションにおけるコミットメントを高めることに注力してきました。
たとえば、これまではチャーンリスクがあるとカスタマーセールス(既存深耕営業)にお客さまとの交渉を依頼する流れがありましたが、この部分もカスタマーサクセスがオーナーシップをもって取り組み、カスタマーセールスと協働していく動きに変えました。
併せて、MMBはエクスパンションの商談機会を創出するというミッションを各自が持っており、そこについても目標達成への意識を醸成していきました。一方で、エクスパンション偏重の対応にならないようバランスを取っていくことの重要性もメンバーには伝えてきました。
杉浦:MMBは、チーフやメンバーそれぞれの役割が明確になったことも大きな変化のひとつだと思っています。チーフだと改善活動の担当領域が明確になっていたり、メンバーだと「顧客対応力を向上させる」など身に付けるべきスキルが落とし込まれたミッションが示されるようになったり。各自のやるべきことがわかりやすくなったことで動きやすくなり、同じ方向を見て話せる機会が増えたことで組織としてもまとまりが出てきたように思います。
今泉:成果を出せていることが個々人の自信になったことも大きな要因のひとつだと感じますね。成果を出せている組織だからこそ周囲への信頼も増して、それが組織への帰属意識や貢献度を高める好循環に繋がってるのではないかと思います。
マネジメントに関しては、定量目標設定の背景や数字ロジックについて丁寧に伝えることを意識して行っており、その結果メンバーが自分の案件だけではなくTier全体での数字や成果を自分ごととして捉えることに繋がっていると思います。
SmartHRを経営に欠かせないプラットフォームに
稲船:最後に、2024年はどんなことを目指していきたいですか?杉浦さんからお願いします。
杉浦:事業本部全体としてはアカウントサクセス*2 の仕組みを構築し、事業成長を牽引する役割をより強めていければと考えています。そのうえで顧客のサクセスも実現していく体制を作っていきたいですね。もう一歩先を見据えると、マルチプロダクトにおいてもサクセスを実現し続ける骨太な体制を作りたいです。となると、採用も大事ですね。
児玉:EBは、SmartHRの導入によってお客さまが求めるビジネス成果の実現を確実なものにすることを目指したいですね。現状大きく2つの課題を感じていて、ひとつはシステム導入後のアダプションフェーズでお客さまのフォローをやりきれていないという、サクセスを実現する精度と確度の課題です。もうひとつは、顧客サクセスは実現できていてもお客さまの経営層にシステム導入プロジェクトの成果を適切にデリバリーできていないという課題です。このことはお客さまとの未来のお取引をグリップできていないということを意味しています。
今後、導入後も徹底してお客さまの業務課題に向き合うことで、サクセスの精度と確度を向上し、業務担当者からの信頼はもちろん顧客経営層を含めた関係性構築や情報浸透を図っていきたいと考えています。それが、未来のお取引を確実にし、そして最大化していくことにも繋がるのだと考えています。そういったアカウントマネジメントを通じて、SmartHRが特定領域の業務効率化ツールにとどまらず、お客さまの経営戦略にアラインした人事戦略の実行に欠かせないプラットフォームになることを目指していきたいです。
今泉:MMBも来期はアカウントサクセスを立ち上げるのでEBと同じく、経営層と関係性を構築するアカウントマネジメントに挑戦していきたいですね。加えて、今以上に利用促進といった部分にカスタマーサクセスが注力できるようになると思うので、その成果を評価指標に落とし込むことも進めていきたいです。
もうひとつチャレンジしたいのは、業務の効率化です。CSMの日々のルーティン業務や報告業務にかかる負担を減らし顧客対応に向き合う時間を増やしていきたいです。MMBも30名を超える組織規模になったため、業務効率化によるインパクトも大きく出てくると思います。しっかり顧客対応できている今のタイミングで業務効率化に着手することで、この先もより機能する組織になれると考えています。
稲船:EBもMMBも進化している点もある一方で、事業成長に向けてストレッチしないといけない点も見えている状態ですね。引き続きコミュニケーションをとりながら、一歩ずつ進化していきましょう。今日はたっぷりお話を聞かせていただきありがとうございました!
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