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「エンタープライズ領域に、失注はない。」─SmartHR アカウントマネジメント部の挑戦

SmartHRは自社のフェーズを「スケールアップ企業」と定義し、事業・組織ともに急成長を続けています。このさらなる拡大フェーズにあって、これまで他社でキャリアを重ね、なお貪欲に成長を志向する方も続々とジョインしてくれています。そこで「マネジメント経験者の転職」をテーマに、全4名の社員にインタビューを実施。SmartHRでどんな腕試しができるか、多様な視点からお話を聞いていきます。

第1回は、エンタープライズ事業本部 セールス本部 アカウントマネジメント部 部長の安川 悠介さんです。


SmartHR転職の決め手は「社風」


──まずは、SmartHRに入社する前のキャリアについて聞かせてください。

安川:SmartHRが3社目になります。1社目は給与計算アウトソーシングのベンチャー企業に新卒で入社して、社員50人規模からIPOするまで18年半勤めました。そのあとSaaS企業に転職してエンタープライズセールスを1年半ほど経験し、SmartHRに入社という流れです。

──1社目からベンチャー企業を選んだんですね。

安川:ベンチャーでいろんなことを経験して自分のスキルを伸ばしたい、その中で将来につながる人脈を築けたらという思いで会社を探しました。そうは言っても学生だったので「できるビジネスマンになりたい!」くらいのイメージでしたが。
その頃はベンチャーのご多分に漏れず、大型案件の稼働直前には睡眠時間を削りながら働くような状況も経験してきました。当時の社長からしたら僕なんか息子みたいなもので、どんな部署、どんな役職に就こうが、ずっと怒られ続けていましたね(笑)。振り返るとありがたい経験ばかりです。僕のビジネスマンとしてのポータブルスキルの8~9割は、この1社目で身につけてきたと言っても過言ではありません。

──新卒から18年半勤めてIPOも経験され、その後転職を決めたわけですが、どんな思いがあったんですか?

安川:18年というと長いようですが、振り返ってみると一瞬なんですよね。あっという間に過ぎた感覚です。社員50人の頃からIPOするまで在籍して、新卒2期生ということもあって、ありがたいことに社内でも一定の発言力なども持たせていただき、気づけばある意味居心地のいい状態になっていました。でも、このままの環境でもう一回「あっという間」を過ごしたら、僕、もう60歳になるな、と。
僕自身の価値観としては、しんどいことも楽しいことも、人生のなかで体験できる新しいイベントがあればできるだけ体験したい、そのほうが結果として楽しい、というたちなんです。ここでもう一度外に出て、一から人間関係をつくって本当にうまくいくのか、今いる会社で得たスキルや評価は外でも通用するのか、試したくなったというのが転機ですね。

吉田さんの写真

──2社目の会社からSmartHRに入るまでの経緯も教えてください。

安川:転職先としては成長率が高く新しいビジネスモデルを体現しているSaaS領域で、かつ自身の強みをつくるためにエンタープライズセールスの経験値を積める企業を探しました。それで内資のSaaSとしては業界トップの会社に縁がありまして、1年半勤めました。一方で、18年半勤めた人事・労務領域でのキャリアを活かさない手はない。それで、人事・労務領域とSaaSの掛け合わせでSmartHRに至る、という流れです。

──SmartHR入社の決め手について聞かせてください。

安川:実はSmartHRに決まる前に、違う企業から内定をもらっていてほぼ入社を決めていました。でも、あるエージェントの方にSmartHRを熱烈に提案されたんですよ。「すごくいい会社だから受けてみるだけでも是非!」みたいな感じで。「1社目と競合になるような所は行かない」と勝手な筋を持っていて、最初は後ろ向きでした(笑)。

会議室でパソコンの画面を見ながら微笑む吉田さんの写真

──そこで考えが変わった理由はなんだったのでしょうか?

安川:理由は2つあります。まずはオープンに話しますが、待遇面。SmartHRは当時、前職の年収を聞かないスタンスをとっていて、オファー額が前職より下がることもあるとネットなどで見かけていました。自分もそうかなと想像していたのですが、意外とそうじゃなかったんですよね。
二点目の理由としては、面談で話をしたCOOの倉橋さんの存在が大きいです。僕が大事にしていることの中で「社風」はかなり大きな割合を占めています。1,000人規模の会社でCOOというポジションにいる人がこういうキャラクターなんだ!と、かなり惹かれました。

──こういうキャラクター、とは?

安川:僕が勝手に考える「いいマネジメント像」の一つに「厳しさの中にも見え隠れする可愛らしさ」があります。倉橋さんも普段はもちろん厳しい顔もあるんでしょうけど、その時はメンバーとのコミュニケーションからちょっといじられキャラなところが垣間見えて。
社風って、経営層の人となりがじわじわと浸透していってできるものだと思うんですよ。人間として完璧なだけでなくて、隙も見せられるほうが、メンバーも人間関係をつくりやすいし、正解じゃなくてもものを言える空気が醸し出される。そこがすごくいいなと思いました。入社しても、面談の際に感じた印象は変わらず、会社のカルチャーにも繋がっていると感じます。

──安川さんはこれまでのキャリアの中でマネジメント経験も豊富ですが、SmartHRではメンバーからのスタートでした。SmartHRではこれまでパラシュート人事がない背景もありますが、そこに懸念はありませんでしたか?

安川:メンバーからスタートと聞いて、引っかかりがなかったわけではありません。もともと僕はマネジメントも大好きで、今後伸ばしていきたいスキルでもあったので。でもすぐに考えを改めましたね。成果を出して、適性があると判断されればしかるべきポジションに到達するだろうし、できなかったらそれはそれで、自分の力を過信していたということ。あまりこだわらなくてもいいかなと自分のなかで整理できました。
結果として、メンバーとして入社してよかったですね。自分が一担当者として入るので、現場がよくわかります。ほかのメンバーともフラットな目線で対話ができるのもすごく意味がある。結果的にしばらくして部長になりましたが、それも部長という役割があるだけで、発言のスタンスは特段変えていません。

エンタープライズ領域に、失注はない


──安川さんは従業員数が2,001名以上の企業を対象にするエンタープライズ領域で、アカウントマネジメント部に所属しています。部の役割について紹介してもらえますか?

安川:アカウントマネジメント部は現在10名ほどの部署で、ミッションは、国内の超大手企業を対象に、中長期的に関係を築き、社の成果の最大化に貢献することです。もう少し具体的に言うと、毎月の売上目標など短期的な指標をもって動くのではなく、対象企業のキーパーソンや経営層と何人、どのようにコミュニケーションを交わせたか、また具体的な商談機会をセールスにトスアップできたかなどをKPIにして活動しています。ただし、ここは見直しも含めて検討中です。

──セールスの進め方にも中長期的な戦略が必要ですね。安川さんが見出した、エンタープライズ領域でのセールスの肝はどんなことですか。

安川:「エンタープライズ領域に、失注はない」ですね。

吉田さんの写真

──「エンタープライズ領域に、失注はない」とは、どういうことでしょうか?

安川:エンタープライズ領域の場合は特に、たとえニーズがマッチして導入したいと思っていただけたとしても、導入に至らないケースは少なくありません。社内事情も調整も複雑ですし、今使っているシステムの減価償却が終わっていないなど、様々な理由で導入が見送られます。でもそれは「失注」ではない。1年後、3年後、はたまた5年後なのかはわかりませんが、導入の障壁が取り除かれればまたチャンスは訪れます。そういう意味で、目先の成否にとらわれずに「水をやり続ければ必ずいつかは花開く」という考えをもって活動を続ける必要があるんです。

──チャンスは何度でも来る、その時のために継続的に関係を築いていく役割ですね。

安川:直接的な成否がKPIにならないがゆえの難しさもあります。適切にプロダクトの提案をするセールススキルはもちろん必要です。しかし特にエンタープライズ領域ではそれに加えて、ちょっとうまく表現できないのですが、もっと泥臭いというか、懐に入っていくアプローチも必要だと思うんです。
部長・役員クラスには、細かい機能よりも「私たちはこういう世の中を目指している会社なんです」というビジョンを示すことのほうが響く場合もあるし、相手のビジネスを理解して課題をコンサルティングしていくスタンスを取ることもあります。もちろん最終的にはセールスに結びつけることが僕たちのミッションですから、そうやって対話してきたことを最終的にどうやってプロダクト提案に結びつけるかも考える。こういうアプローチは、教科書的に汎用性をもたせて伝えられない部分があるので、難しいんですけど。

SmartHRのメンバーは、本当にいい人が多いなと思っていて。真面目で前向きで、顧客への提案や説明も丁寧にきっちりやります。これはすごく強いところです。一方で、今述べたようなアプローチの変化球や、教科書化しきれないスキルについては、伸びしろがまだまだあるという思いがあります。

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──これからSmartHRのセールスとして強化していくべきポイントでもあるんですね。

安川:チームとしても、僕自身にとっても課題だと捉えています。ひいてはセールス全体にこういうマインドが波及することが大事で。対象となるエンタープライズ企業は数千社あるわけですから、10名ちょっとの僕たちのチームだけで追いきれるものではないです。セールスメンバーのなかでも30人、40人と強みを磨いていく人が増えて、もっとインパクトを大きくしていけるような将来を描いています。
私たちの活動は、中長期視点で、売上目標という外発的な動機づけがセールスよりも弱く、極端にいえば毎月顧客にただ連絡しているだけでも「やっているふう」にもなります。そんな人いないですけどね(笑)。
ここも、見直す余地はある部分だと考えているので、継続検討していきます。ある程度はマネジメントからの抑止力も必要ですが、SmartHRはマイクロマネジメントするようなカルチャーでもないですし、自律駆動がより求められる仕事ではありますね。

どこまでいっても正解はない、無尽蔵にやることがあるのが面白い


──先ほど「マネジメントが大好き」と言っていましたが、どんなところに面白さややりがいを感じていますか?

安川:どこまでいっても「正解」には到達しないところ、ですかね。例えば一つ課題に直面して、それを乗り越えたとします。その乗り越えたノウハウはもちろんほかのケースにも転用できます。でもだからといって、そのノウハウで残り100個の課題をクリアして終わり、とは絶対にならない。必ず何かしら違う課題が出てくるわけです。そこでまた新たに乗り越える、というステップを続けていると、自分の経験値やスキル、視座が向上するのを体感できる。
人の育成もそうだし、PLの改善、組織のビルディング、経営とメンバーの橋渡し、顧客のトラブルシューティング……マネジメントでやれることはいっぱいありますよね。なんでも僕ができると言っているわけではなくて、やることが無尽蔵にある、そのことに魅力を感じます。

──なるほど。そんな安川さんにとって、今後のSmartHRでマネジメントをやっていくことに対してはどんな期待を持っていますか?

安川:まず事業について言うと、プロダクトのラインナップはまだまだこれからというフェーズです。顧客に提案すべきこともどんどん進化していくので、ここにも無尽蔵にやることがある。ずっと楽しめます。

マネジメントの観点で言ってもやっぱり、学ぶべきことの分母が定まっていないところが面白いと思います。SmartHRには特徴的なカルチャーがいくつかあって。入社して1年ほどになりますが、「ここまで徹底してやるんだ!」と驚くことも多く、勉強になります。
例えば情報の透明性は本当に徹底していて、「ここまで丁寧に説明するものなの?」と思うこともありますし、うっかりすると情報を開示する範囲が不足しそうになることもあり、よく自戒します。でもそうすると、メンバーたちはきちんと反応して、不足した部分について情報を求めてきます。自分の経験との差分が興味深いですし、日々勉強です。
人が自分で物事を判断して自律的に行動するかどうかは、その人がもっている情報の多さに比例すると思っています。だから自走する組織を実現するには可能な限り情報を開示することが重要で、結果としてそれが事業成長に繋がる。

こんなふうに、SmartHRでは信念をもって、コミュニケーションコストをかけても実践しているカルチャーがいくつもあると感じます。他社と比較しても、これによってかかっているコストもそれなりなのでは?と想像もしますが、僕は入社してまだ1年で、取り組みがそのコストを補って余りある事業成長に繋がっていることを身をもって体験できるのはこれからのこと。それが楽しみですね。

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──スケールアップ企業として、今後も守りたいカルチャーもある一方、変わっていくべきこともありますよね。そこの選択は常に迫られます。

安川:組織としてあるべき姿の理想を掲げてそれを実行するのは、会社としてものすごい我慢が必要なことだと思うんですよ。最初のほうに話に出た「パラシュート人事をしない」についても、会社としてマネジメントのポジションを充足させるミッションがあるなら、最初からマネージャー採用したほうがスムーズですよね。でも数か月我慢してメンバーからスタートしてもらうことにしているわけで。

社員の働き方についても、100がその人のリソースだとしたら常に120を出すよう求めるのではなく、あえて95に抑えて5の余白をつくる。この余白がサポーティブな空気づくりや離職率の低さに繋がり、結果として事業成長に貢献するという考え方です。これもやっぱり、経営が厳しくなれば120を求めたくなるところを、我慢して95の文化を守っているんですよね。
長期的に見たら絶対にそのほうがいいんだ、と信念を持ち続けないことには、本当に難しいことに挑戦していると思います。

会社として、今後は事業のステージによって変わるべきところも見極めていかなければいけないとは思うのですが、僕個人的には、可能な限り踏んばってこの我慢を続けたい、支えたいと思っています。僕は今までこういう会社を見たことがないので。今後SmartHRが、カルチャーを守りながら飛躍的に成長するところを見届けたいし、一緒にその時を迎えたいですね。


マネジメント経験者の転職シリーズ 第2回は以下よりご覧ください。

SmartHRのセールスに関するその他の情報は以下よりご覧ください。

制作協力:イトウヒロコ
撮影:@garashi(SmartHR)