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スティーブ・ジョブズから始めるSDGsの歴史
学生にSDGsを説明するとき、私はスティーブ・ジョブズの伝説のスピーチの紹介から始める。その意図は、国連が創りだしたSDGsの源流が1972年のストックホルム人間環境会議にあり、その時代の雰囲気を理解しておくことが重要だと考えているからだ。そして、スティーブ・ジョブズを取り上げることで、工学と社会の潮流との関係を理解し、今、学んでいること、そして今後やるべきことを「哲学」するきっかけをもたらせる。
さて、スピーチ全般から学ぶべきことが多いので、Youtubeでの視聴を薦めるが、本題で伝える箇所は、最終部分である。「Stay hungry, Stay foolish.」という有名なフレーズの導入部分である。だか、私は学生に対し、「Hungryであれ、Foolishであれ」、などと煽ったりはしない。着目すべきは、この言葉がWHOLE EARTH CATALOG (1968年〜1972年)からの引用である点だ。そして、期せずして、あるいは必然として、その刊行が前述の1972年のストックホルム人間環境会議と重なっている。
©NHK
「私が若い頃、WHOLE EARTH CATALOG
という、すごい雑誌があって、それは同世代のバイブルでした。スチュワート・ブランドという男が、ここからそう遠くないメンロパークで編集したもので、彼の叙情的なスタイルで彩られていました。
(中略)最終号の裏表紙に書かれていた言葉
―”Stay hungry, Stay foolish.” ―
私は常に自分自身がそうありたいと願ってきました。そして、新しい人生を踏み出す君たちに、同じことを願います。Stay hungry, Stay foolish.」
-2005年6月14日スタンフォード大学卒業式, S.ジョブズ-
アメリカでは、草の根的に伝統的な西洋の価値観が揺らぎ、活路を見出すためにヒッピー運動、エコロジー運動といったライフスタイルの試みとオルタナティブな技術としてオーガニック、再生可能エネルギー、そして情報技術が育ってきた。そのバイブルがWHOLE EARTH CATALOGである。
一方、アメリカ政府は、アポロ計画の成功とベトナム戦争の挫折を味わっているタイミングで、環境問題が初めて国際社会で取り上げられ、対外的なイメージアップと国内の自信回復へとつなげる目論見をもっていた。もともと国内の問題と考えられていた当時の環境問題は、すなわち公害問題が、北欧において酸性雨が国境を越えて影響があること報告され、国際問題としてクローズアップされた。そして、国連が大規模な会議を主催した。それがストックホルム人間環境会議である。
そこで、サステイナビリティを哲学する、意義
次回より、WHOLE EARTH CATALOGをつくった男、スチュワード・ブランドの知見を皮切りにサステイナビリティを哲学する意義を書いていこうと思う。特に、時間的、空間的な軸で世界をみる視点を提示する。その狙いは今のところうまくいっており、学生から「国連の会議の名前は現代社会の教科書で習ったことがありますが、今は、私たちが歴史を創る側になっているんですね。」といったフィードバックをもらったりする。プレゼンなら説得力があっても、文章になるとありきたりになるかもしれないが、工夫してみよう。
その後、ストックホルム人間環境会議以降の国連での議論を随時、紹介する。私は幸いにも恩師の一人が、1972年のストックホルム人間環境会議、1992年のリオネジャネイロ地球サミットに日本代表団として参加した人物である。その会議の意義を生の声として聞く貴重な機会をもってきた。できるだけ人間味のある文章を心がけようと思う。
読んでくださり、ありがとうございました!!!!
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