『センスは知識からはじまる』から学んだ、思い込みのとっぱらい方 #読書感想文
スマートキャンプ デザインブログ デザイナーの髙松です。
5月4日に緊急事態宣言が延長され、自宅で過ごす時間は今後も続きそうですね。自宅でできる趣味に投資する人も増えてきたのではないでしょうか。
私はこのリモート期間に、以前から大きい課題だった「本が読めない」ことを克服しようと取り組んでいます。
この記事ではnoteの #読書感想文 のタグを借りて『センスは知識からはじまる』を読んだ感想や気づきを紹介します。
センスは知識からはじまる | 水野学
2014年に刊行されたこの本は、2018年4月まで12刷発行されています。名著のため、タイトルを知っている方も多いかもしれません。
「センスとはなにか」「センスの身に付け方」を論理的かつ普遍的な視点で解説してくれるため、いまもなお読まれる一冊だと思います。
特に「経営やデザインは結局センスなのではないか?」と思っている人や、「センスが良いと言われるアウトプットの理由を知りたい」と感じている人にはオススメです。
この本では「センスとは、数値化できない事象を最適化することである」と定義し、全5章はこの定義を前提に「これからの時代におけるセンスの重要性」や「センスの磨き方」が説かれていきます。
読み進めていくと「私はセンスがないからわからない」「センスは先天的なものだ」「発想力がない人はセンスがない」といった陥りがちな誤解を解いた上で、センスがスキルとして身に付けられるものだと理解できます。
また、本中に書かれているセンスの磨き方についての章は、デザイナーやクリエイターが知らずのうちに実践していることも含まれています。無意識の行動を文字でインプットすると、目から鱗だと感じる部分も多く、デザイナーやクリエイターが読めば日常の制作から学びを得られると感じました。
センスの最大の敵は「思い込み」
本中で最も記憶に残っている1節のひとつに次のようなものがありました。
センスを磨く方法は知識を集積することと客観的になること。
逆に言うと、不勉強と思い込みはセンスアップの敵です。
デザイナーとして仕事を任されるとき、選択に迷うことが度々あります。よりよい意思決定ができるように心がけていても、ふと「あのときの選択は自分の思い込みではなかっただろうか」と不安になる瞬間があります。
ユーザー視点にたったつもりで作ったデザインが、自分の思い込みやエゴが反映されたアウトプットになっていたら...と思うと、怖くなってくる経験は、デザイナーなら誰でもあるのではないでしょうか。
「それなら客観的に物事を見よう」「好き嫌いで判断するのはやめよう」で解決するようにも思えますが、思い込みは無意識であるからこそ、意識的に改善することが難しいように思います。
Webサービス開発・デザインにおける思い込み
Webサービス開発・デザイン(以下プロダクトデザイン)をする過程では、次のような思い込みがたびたび挙げられます。
・ユーザーはこれが欲しいと思っているはず
・この機能はリリースされれば必ず使われるはず
・ターゲット層は把握できているはず
もちろん、データに裏付けれた仮説が立てられている場合もありますが、「社内の誰かがそう言っていた」「自分がユーザーならそうする」といった理由で、話が進んでいることも少なくありません。
これらは仕方がない側面もあります。すべての仮説に裏付けを作りながら進行するプロジェクトではスピードが出せません。不明瞭な点を完全に排除して進むことは、理想的ですが現実的ではないように思います。
(だからこそ、意図的にバイアスを外す努力をしなくても、客観的に判断ができる「センスがある」と言える人が必要なのですが・・・)
仮説も含みながらプロダクトデザインをするうえでは、重要度が高い場面で適切に思いこみから逃れるプロセスを取り込んでいく必要があるのでは、と私は考えました。
「思い込みをとっぱらうプロセス」を取り込む
本中では思い込みから逃れるためには「いつもと違うことをしてみる」ことが良い、と書かれています。小さいことでも良いので普段の自分と違うことをしてみようというものです。
重要なのは「普段と違う行動」というアクションそのものではなく、「意図的に自分の枠組みを外す」ことにあります。方法は、毎日のルーティーンでも、思考法でも、仕事のプロセスでもいいので、なにかを変えることです。そうすることで、自分を取り巻く環境や状況に変化を作り、センスの多様性を生み出すきっかけが生まれます。
プロダクトデザインにおいては「普段と違う行動」は「まだ実行していないアプローチ」とも言い換えられると思いました。
「思い込みかもしれない」と感じたときにできそうなアプローチ例
・定量的なデータから判断する
・ユーザーにあたって、事実の裏付けをとる
・業界の成功事例や王道と差分がないか確認する
・ユーザー視点から、ビジネス視点に切り替えてみる
・頭で考えず、視覚化して違和感に気づいてみる など
自分の中から生まれたアイディアや仮説に対し、無意識の思い込みを阻止する手札を持っておき、適切なカードを切る習慣ができると良さそうだと感じました。
自分の思い込みに気づいた実例
実際に、自分のバイアスに気づいた実例を挙げます。あるWebサービスのユーザー層を把握するというシーンでの話です。
ユーザーの属性を深掘りするにあたって、所属企業のITリテラシーが重要な要素だと感じていましたが、いまいち把握ができず困っていました。
この時だけは思い付きで、「ユーザーの所属企業リストをもとに、各社のWebサイトのキャプチャを100枚ほど撮り、4象限に分類する」ということを試してみました。Webサイトから企業のリテラシーが完全にわかるとは言い切れませんが、一助にはなるだろうと考えてのことです。
マッピングの結果、私が思い込んでいたユーザー層は全体の1/3程度しかなく、ターゲットとすべきユーザーのボリュームゾーンを把握できていないことを理解しました。
自分の認識の甘さに気付けば、次のアクションを変えることができます。「おそらくこんなかんじだろう」で進み続けていたら、危うくデザインをするところだった、と実感した実例です。
実在するWebサイトという事実をマッピングで視覚化したことで、自分の思い込みに気づくことができました。
業種・職種に関わらずセンスを身に付けたい人に
『センスは知識からはじまる』は論理的かつ普遍的な視点で「センスとはなにか」を解説してくれています。
業種・職種を問わず、応用の効く内容になっていたので、興味のある人は手に取ってみてはいかがでしょうか!
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リモート期間はまだ続くので、引き続きデザインブログで良書の紹介を続けていこうと思います!
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WRITER: Yume Takamatsu ( SMARTCAMP / Designer / TW: @dream_yt95 )
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