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私たちがこの30数年で失ったものを問う(7)【NHKドラマ『ガラパゴス』に心が「踊らない」理由を考えてみた】
私たちは、この30数年で何を失ったのか。それを考えています。
前回はこちら。
全録画機能のついたBRレコーダーは便利ではあるものの、録画しているからいいやと思ってなかなか視聴しないという問題点があるなと感じています。
危うく消去されそうになっていたNHKドラマ『ガラパゴス』を視聴しています。
本作は、2月にBSプレミアムで放送された2時間ドラマの前編後編を再編集して、全4話として地上波で放送されたようです。
結論から言うと、よくできたドラマだと思います。
織田裕二さんを筆頭にバディ役になる桜庭ななみさん、ヒール役の伊藤英明さん、被害者となる満島真之介さんなど俳優陣の演技も光ります。
また、怪車プリ〇スや、派遣労働錬金術企業パ〇ナを彷彿させる設定もあり、民放では1000%不可能な設定も「攻めている」と感じます。
シナリオも練られており、恐らく原作も社会派ミステリーとして水準が高いのでしょう。
しかし、心が「踊らない」ドラマだったと感じています。
織田裕二さんが主演を務める刑事は、所謂コールドケースを扱う部署に所属し、病気もあり最前線からは引いた立ち位置の設定。
「地取り」「鑑取り」を徹底する「昭和型」の刑事。携帯電話もガラケーというのもタイトルに沿っています。
田川信一という役名がついていますが、どうしても私は、青島俊作のその後と見えてしまいました。
そして、痛感するのは、「正義」はどこに行ったんだろうかということです。
観ている私自身が、社会正義を信じていないなとあたらめて実感しています。
『踊る大捜査線』のテレビシリーズが高視聴率を叩き出し、その後の映画も大ヒット。当時であってもお題目になりかけていた「正義」を織田裕二さん演じる「都知事と同じ名前の」青島俊作が希望を与えてくれたように思います。
それから約30年。
本作で、大企業の不正や派遣労働の問題に切り込み、社会派ミステリーとしてよくできているとは思いつつも、心が「踊らない」のは、この作品の問題ではなく、社会の問題なんだろうと感じました。
与党の政治家の不祥事は日常化しているとさえ思います。「募っているが、募集していない」政治家を収賄で捜査すらしないのだから、下々の政治家など、無罪放免かトカゲのしっぽ切程度で済まされてしまう。
一方で、異論を封じることは、いろんな手法が「発明」された。それを学習した不祥事を起こした芸能プロダクションが厳しい追及をかわすために、「子供もみています。ルールを守ってください」といって、自分たちの都合で作った「ルール」を押し付け、それを無視して追求する側が問題だと世論を誘導する。そして、それがある程度、目論見通りになる現実・・・。
こんな社会で、正義を信じる方が、どうかしているのかもしれません。
正義が幻想なのであれば、強者にコミットするのが心身ともに健全でいられる人も多いのでしょう。
右でも左でもない「若手社会学者」は、政府の新しい試みに即応し、プロパガンダに勤しむ。これが自然な行動だと感じられるのでしょう。
私自身、この方と同じ年齢の立場だったら、青臭い正義など鼻で笑ってこのような思考になっているのかなと感じます。
・正義を信じて、一体いくらになるんですかね?
・批判して、権力側から目をつけられて何かいいことあるんですか?
・強者はこれまでも、そして、これからも強者でありつづけるんですよ。ちょっとの不祥事に騒ぐ方がどうかしてませんかね?
となり、
さらに
・権力にコミットすれば、仕事も回してもらえるし、テレビにも出られて、本も売れる。美味しいことだらけじゃないですか。
となるのかもしれません。その通りと首肯せざるを得ない現実は、私自身に対しても、「そうじゃないんだ!」とは言い切れず、「正義とはなにか」と自問自答している自分がいます。
いま、青島俊作はどうしているんだろうかと思うと、本作の織田裕二さんが演じた田川のように、黙々と捜査をしているのかなと感じています。
正義は語らず、黙して信じて行動する。そんな市井の人が多い時代なのかもしれません。それがサイレントマジョリティーであることを信じたいとも思っています。