AIの間違いから大量発生した中学生の誤答の問題について考える【病的なレベルに達していると思う現代人のある思考】
今回はこちらのニュースから。
地味なニュースではあるものの、とても示唆に富むニュースだと感じます。
まずは、この部分。
私が中学生を教えていた頃は、何が何処で消化されるのかは、でんぷん、タンパク質、脂肪の三大栄養素と消化器官、消化酵素(リパーゼも含む)を関連づけて理解するように指導していました。
そのため、胃で消化されやすい状態は、中学理科的にはやはりNG的な表現と言えるでしょう。
サイト元の「キユーピー」としては、一般的で広範な理解を目指したともいえるので、厳密性という点では甘くしていたのだろうとも思います。まさか、このような事態になるとは想定していなかったはずで、キユーピーに問題があったとはとても思えません。
今回の件は、情報化時代では、意図しないフェイクが思わぬところから発生したともいえる事象ではと思っています。
ただ、気になるのは、これが中学生の課題であったという点です。
私はこれが一番の引っかかる点でした。
先にも書いたように、私は消化を理解してもらうとき、大切なことは、物質によって、消化される場所が違い、消化酵素が違うことだと思っていました。消化というプロセスを中学生の内容の範囲で理解することが大事だと思っていました。
なので、私はこれを課題とすることへの違和感があります。
調べることはとても大事な学習のプロセスの一環ですが、生徒の行動をみてもわかるように、彼らは「正解をさがして」、キユーピーのHPにたどり着いている。
そこに考えるというプロセスは発生していないことが一番のポイントで、
ハッキリ言えば、誰も唾液(アミラーゼ)のことなんか、興味もないと推定できます。それは中学生の責任とは言えない。
なぜなら、それは単なる知識であり、点Aと点Bを線で結んだという作業と何ら違いがないからです。
これを正解なにか?という観点で放置すれば、
デンプンは、唾液(アミラーゼ)によって、糖に分解される
という知識のインプットだけに帰着し、来るべきテストへのアウトプットとしての機能にとどまるだけになってしまう。
これでは、勉強が面白いと思う人が限られてしまうのは当然の成り行きとも言えます。
今の中学の先生のクオリティであれば、ここから彼らに興味を引かせるいろんなスキルはお持ちではと思っています。やはり、調べ学習は、そこを突破口として、中学生に科学の興味につながる学びにつなげてほしいかなと思います。
知識はあくまでも素材。それを科学への興味関心に高めるのは、先生のスキルのお力を借りないといけない。そこに先生が存在する根源的意味があると思っています。なので、ここは大切にしていただきたい価値観かなと感じています。
そして、あと一つ気になるのが、中学生の段階にもなると、根深く浸透しているなと感じる、「正解」への妄信です。これは大半の大人に浸透しているものでもあります。
世の中には「正解」なるものが存在し、さらにその「正解」なるものが確定したかのように感じると、そのことに対して、疑いすらしない。そんな現代人の一面を可視化されたと感じています。
サンプル数として結構な数の中学生がいたにも関わらず、だれもキユーピーのHPへの違和感を感じなかったのかという点は、見方を変えると恐ろしいことでもある。
正解にたどり着いたら、あとはどうでもいい。
そんな思考は、現代人のかかっている病的な思考ではないかなと思います。
逆張りをする必要はないと思いますが、答えを保留するくらいはあってもいいのではと思います。
答えがあると思うという思考こそが、フェイクニュースや世論操作を可能にする源流になっているのではと思います。
私たちは情報化社会にありながら、情報を峻別する能力をどんどん落としているのではと思わざるを得ません。
現代人は、案外操りやすい存在になっていないか?
情報化社会によって、人間が進化しているかのように考えている常識こそ、今まさに問い直されるべきかなと思います。