私はモリミーに「影の本屋大賞」をあげたい!(本屋大賞アレコレ②)
HONYA AWARD Ⅱ
さて、「2021年本屋大賞」に向けて、過去の「本屋大賞」を振り返っています。前回の①では、2次投票による得票数データをもとに "note" してみたのですが、今回は、ノミネート回数に焦点をあてて "note" してみようと思います。
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現在、「本屋大賞」17回行われています。
毎年、1次投票で10作品が選ばれてるのですが、第3回と第10回は得票が同率で11作品が選ばれたため、17回までに172作品がノミネートされています。
これを、作家さんで数えてみると、ちょうど100人の作家さんがノミネートされてるんです。
ということは、差し引いた72作品は、1度ノミネートされた作家さんの2回目(3回目以降も含めて)のノミネート作品となるわけです。
.....「本屋大賞」って、同じ人の名前をよく見かけるなぁと感じることがありませんか?
人気のある作家さんは、毎年のようにノミネートされてるはずなので、ちょっとノミネート回数を調べてみたのです。
17回まで、ノミネートされた回数の多い順に並べてみると下のようになりました。(敬称略)
<ノミネート数(作品数)上位作家陣>
11回:伊坂 幸太郎
6 回 :森見 登美彦
5 回 :三浦 しをん
4 回 :小川 洋子、西 加奈子、万城目 学
百田 尚樹、辻村 深月、有川浩
3回ノミネートが、横山秀夫、東野圭吾、吉田修一、原田マハ、小川糸、知念実希人の6人
その他、2回ノミネートは22人
調べてみると、多いのか少ないのか.... けっこういるんですが、同じ人の名前をよく見かけるなぁと、感じさせるには少ないようにも思うんですよね。
ただ、こうしてみると、伊坂幸太郎さんの強さが目立ちますね。(ちなみに、阿部和重さんとの共著『キャプテン・サンダーボルト』を別の1作でカウントしています。)
伊坂さんは、特に00年代が強くて、第1回(04)から第6回(09)まで6年連続でノミネートされています。さらに第1回と第3回は2作品同時なので、のべ8回ノミネートされたことになるのです。
そして、第5回では『ゴールデンスランバー』が大賞に選ばれています。
10年代に入ると連続ノミネートは途絶えるのですが、ここ数年、また、ノミネートが増えてきています。
今年の第18回でも『逆ソクラテス』がノミネートされてるし、まさに ”本屋大賞の申し子” や "ミスター本屋大賞" と言ってもいい存在ですね。
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複数回ノミネートされている作家さんごとに見てみると、作家さんによって、ノミネートされる時期が集中してることに気が付きます。
たとえば、4回ノミネートされている百田尚樹さんの場合は、第6回→第8回→第9回→第10回(大賞)、辻村深月さんの場合は、第11回→第12回→第13回→第15回(大賞)と、概ね5年間に集中しています。
最近だと、小川糸さんが第14回→第15回→第17回、知念実希人さんが第15回→第16回→第17回と、短期間にノミネートされています。
自分の中で、小川糸さんなんかは、よくノミネートされているなー、って印象だったのですが、回数としては、まだ3回なんですよね。
でも、時期が集中してるから、そう感じたわけで、そういう作家さんがたくさんいることが、「本屋大賞」って、同じ人の名前をよく見かけるなぁという印象につながっているのだと思うのです。
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また、ノミネート回数は少ないけど、インパクトのある作家さんが2人。
一人は、恩田陸さんで、ノミネートは第2回『夜のピクニック』と第14回『蜜蜂と遠雷』の2回だけなのですが、その2回とも大賞に選ばれてるなんてすごいですよね。
また、もう一人は、和田竜さんで、和田さんもノミネートは2回なんですが、第6回『 のぼうの城』が2位、第16回『村上海賊の娘』が大賞と、こちらも高いアベレージです。まあ、和田さんは寡作なので、分母を著作数にするとかなりの確率になります。
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さて、今回、ノミネート状況データを作成しながら、あらためて感じたのは、森見登美彦さんの人気です。
(これまでのノミネート作品)
第4回『夜は短し歩けよ乙女』2位
第5回『有頂天家族』3位
第8回『ペンギン・ハイウェイ』3位
第11回『聖なる怠け者の冒険』9位
第14回『夜行』8位
第16回『熱帯』4位
伊坂幸太郎さんのような派手さこそありませんが、第4回から最近まで、コンスタントにノミネートされ続けています。
眺めてみると、いいラインナップなんですよね~。
今年も『四畳半タイムマシン・ブルース』あたりがノミネートされていれば完ぺきだったのですが.... まあ、森見さんの代表作のラインナップみたいな感じですね。
ノミネート時期が集中する傾向のある「本屋大賞」においては、持続的にノミネートされる森見さんのような作家さんは珍しいのです。
特に、執筆を制限し始めた2011年以降は、著作数自体が少ないのですが、久しぶりの長編がちゃんとノミネートされていて、多くの読者(書店員さん)に支持されてますよね。
未だに大賞に選ばれたことがないのは不思議なんですが、きっとタイミングなんでしょうね。
ただ、継続的に「本屋大賞」を支えている作家さんとして、森見登美彦さんには、影の「本屋大賞」作家の称号が相応しいと思うのです。
そのうち大賞を取ってほしいとも思うし、今のポジションが森見さんらしいとも感じられて、何やら複雑な気持ちだったりするのです。
ただ、いつでも、新作が楽しみな作家さんなのは間違いないんですよね。
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