巷(ちまた)の悪事は妖怪の仕業なのです。(京極夏彦の「巷説百物語」シリーズ)
なんと、再び、このシリーズが読めるとは思っていませんでした。
それが、11年ぶりのシリーズ新作となった
『遠(とおくの)巷説百物語』
いや~、もうすでに完結したと思っていたので、連載してる事さえチェックしてませんでした。
(杉江松恋さんによる京極夏彦さんへのインタビューはこちら)
久しぶりに読んだので、あれ、このキャラクター誰だっけ?みたいな部分もあったのですが、読み進めていけば、「これこれ、これが巷説百物語の世界だね~。」って感じで、とっても楽しく読み終えることができました。
しかも、嬉しいことに、すでに雑誌「怪と幽」では、シリーズ完結編となる『了(おわりの)巷説百物語』の連載が始まっているということです。
と、とても楽しみです!
このシリーズ面白いんですよね、ほんと!
ということで、今回は、この "巷説百物語" シリーズの面白さについて "note" していきます。
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【どんな物語なのか】
このシリーズについて、あらすじは知っておく必要はありません。
ただ、どういう構造の物語なのかを知っておくと入りやすいかなって思います。
まず、
妖怪話ですがホラーではありません。
表紙が怖いし、百物語ですから、お化けや妖怪の出てくる怪談のように思うかもしれませんが、全然、そんなことはありません。
"巷説百物語" シリーズは
妖怪話を仕掛ける話なのです。
そもそも、妖怪というのは、人間の理解を超える奇怪な現象や、それらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的な存在のことと言われています。
"巷説百物語" シリーズでは、いろいろと困った事情を解決するため、それを "妖怪" の仕業に見せかける仕掛け人たちの物語なのです。
例えば、なんか仕事をしてて書類の提出が間に合わない時に「すいません、妖怪 "書類食べ坊" が出てきて、提出するはずの書類が食べられちゃいました。」みたいに言い訳できると、丸く収まることあるじゃないですか。(←いや、ないだろ)
それと同じようなもんなんですね。
各話で、様々な怪異な事件が起きるのですが、最後に、裏の事情やその仕掛けの種明かしが行われるのが定型となっています。
もちろん、定型があるとマンネリしちゃいそうなのですが、そこは、魅力的なキャラや、仕掛けられる怪異譚が面白く、全く飽きることがありません。
読めば読むほど人間関係が広がったり、仕掛け人たちが背負ってる事情なんかもわかってくるので、どんどん面白くなっていくんです。
【"巷説百物語" シリーズ】
最新刊の『遠(とおくの)巷説百物語』を含めて、これまでシリーズは6冊リリースされています。
シリーズと言っても、連続した話ではなく、それぞれ、短編集、連作として独立しています。
もちろん、登場人物や、過去の事件が関係する話もあるので、刊行順に読んでいくのが望ましいです。
どの巻も面白いのですが、正直に言うと2巻目の『続巷説百物語』が、群を抜いて面白いんです。
ただ、1巻目の『巷説百物語』と2巻目の『続巷説百物語』は関連した作品なので、シリーズを読んでみようと思った方は
まず、『巷説百物語』と『続巷説百物語』をセットで読んでみる。
これが鉄則です。
『巷説百物語』の方は普通の短編集なのですが、『続巷説百物語』の方は連作の体裁をとりつつ、1巻目の『巷説百物語』の各話と連動する仕掛けがあるのです。
『巷説百物語』のあと、『続巷説百物語』を読むと、いろんな裏側が見えてきて、どんどん面白くなっていくわけなのです。
そういう仕掛けがあるので、1巻目を読んで、こんなものかと思った人でも、必ず2巻目の方を読んでいただくことをお薦めします。
多分、この面白さにハマってしまえば、残りのシリーズについては、読まずにいられない身体になってると思います... はい。
アニメ化や実写化もされた作品なんですが、原作が一番面白いと思うので、ぜひ、『巷説百物語』と『続巷説百物語』をセットで読んでもらえればと思います。
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蛇足ながら、京極夏彦さんには、もう一つ ”百鬼夜行” シリーズという人気シリーズがあります。”百鬼夜行” シリーズは、まるで妖怪の仕業に見えるような怪異を、現実の事件として解決していく構造の物語なんです。
つまり、この"巷説百物語" シリーズとは逆の構造になってるとこが、また面白いとこなのです。
その ”百鬼夜行” シリーズの正編も途絶えて早や15年なんで、そろそろ続きが... と思うのですが、それは、また別の記事で....
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