SF小説は、やっぱディテールなのです!(飛浩隆の『鹽津城』)
年末年始はSF三昧になってしまいました。
毎年、8~11月は新作ミステリーに集中しちゃうので、その反動なのか、ずっとSF小説を読んでました。
どの本も読みたかった新作なんですが、どれも面白かったのです。
今回はその中から、飛浩隆さんの最新中短編集『鹽津城』を紹介していこうと思います。
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◎SFはディテール!
SFに求めるものは人それぞれだと思います。
"深淵なテーマ" や "想像を超える壮大なビジョン" などなど、SFらしい部分はもちろんなのですが、私自身は "作品世界のディテールのこだわり" に魅かれる性質のようです。
ディテール部分のこだわりって伝えづらいのですが、私なりに言うと ”ガンダムのプラモデルで頭部アンテナを尖らせないと気が済まない” !みたいなやつです。(←その例えが分かりにくいわ!w)
作品世界を緻密に描く作家のこだわり!
そんなとこに無茶苦茶魅かれちゃうんですよね。
飛浩隆さんの『鹽津城』も、そんなディテールを持った作品集なのです。
『鹽津城』
著:飛浩隆
2018年以降に発表された6編が収録されています。
どの作品も現実と虚像が同居する ”異質な世界” が描かれているのですが、あまり説明的ではないので、読んでるうちに、ふとした違和感を感じちゃう… そんな感じの作品が多いです。
異質な部分に触れた瞬間にゾワゾワさせられちゃうんですが、こういう "ゾワっとする感覚" って、海外作品ではあまり感じられないので国内作品特有のものかもしれませんね。
読んでみて一番魅かれたのは、やはり表題作である「鹽津城」です。
この中編は現代と近未来、遠未来の3つのパートで構成され、それぞれのパートが交互に描かれていきます。
読者は読み進めていくとそれぞれのパートの関係性が見えてくる構成になっているのですが、それぞれのパートのつながり方が単純な時系列ではなく、別次元の世界が干渉しあってるような "ねじれのある構成" になっていて、それがこの作品独特の読み味になっています。
もちろん、それぞれのパート世界は緻密に描かれているのですが、同じ世界線にいるようで違っていたり、でも繋がっていたりと、なんか境界線をさまよわされちゃうんですよね。
そこが魅力的な作品なんです。(伝わりづらくてすみません💦)
ちなみに、”シンプルで地味” に思えるカバーデザインなんですが、この「鹽津城」を読み終わると、”そうか、このデザインってアレだったのか” と気づく仕掛けもあります。
◎作者:飛浩隆について
作者の飛浩隆さんは、現在の国内SFを代表する1人で、大好きな作家さんです。
寡作な作家としても知られていて、1982年のデビュー以来、2冊の長編と、今回の『鹽津城』を含めた中短編集が5冊と、計7冊しかリリースされてないんです。
まあ、リリース年を見てもらえば、その寡作家ぶりが伝わると思うのですが、初期作品をまとめた『ポリフォニック・イリュージョン』を除き、新作が出される度にSF界隈では話題となるんですよね。
星雲賞や日本SF大賞などの受賞もそうですが、先日、SFマガジン上で行われた「2025オールタイム・ベストSF」でも、2冊の長編と各短編集の表題作となっている3つの短編が選ばれているなど、SFファンから高い支持を得てるのです。
興味を持たれた方が最初に読む本としては、短編集が飛浩隆さんらしさを感じられて良いと思います。
特に今回紹介した『鹽津城』と、2016年の短編集『自生の夢』はつながりのある作品も収録されていて、この2冊から入るのをお薦めします!
性に合えば、『グラン・ヴァカンス』や『ラギッド・ガール』などの<廃園の天使シリーズ>や、『零號琴』に進んでみてください。
『自生の夢』
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新年、最初の記事となりました。
PCの不調や私事のあれやこれやで、以前ほどnoteに来れてなくて、返コメもままならない感じなんですが、今年もボチボチとやっていくと思いますのでよろしくお願いします!
(関係note)
【国内SF作家シリーズ①】