邦画のひと、その記録〜手帳の佇まい(30)

先日、TVを流し見していた夜、
街ゆく人に突撃でインタビューし、
貴方の家まで着いていかせてください
という番組が始まり、
気付くと僕は見入っていました。

その回の街は、十条銀座商店街、
インタビュー対象は66歳のおじさん。
ダメージジーンズを履き、
肉屋で1つ数円の肉団子(ミートボール)を
10個買っています。
「これ、まずくないんだよ」と言って
番組スタッフにお裾分け。
そしてスタッフは彼の家まで同行。

そして分かったのは、
彼は狭いアパートに一人暮らし、
週に何度かバイトしていること、
何十年も前に奥さん、お子さんと別れ、
たまに、既に家庭を持つお嬢さんから
連絡が来ること。

何よりも僕が食いついたのは、
彼は自称「日本映画マニア」で、
大学ノートにDVD鑑賞記録が2000本、
そのノートの使い方も燻し銀。

そのノートには1行ずつ
映画のタイトルと評価マーク、感想が
ぎっしり書き込まれています。
評価マークは「なかなか良い」が○、
「もう一度観たい程良い」が⦿、
「いまいち」が△といった具合い。
邦画ならジャンルを問わず鑑賞。
絶妙なのが、1行感想です。

例えば「ビリギャル」なら「主演女優が素晴らしい!!」など僅かな言葉。1行だから、限られた数の文字に思いが凝縮される。長々と感想を書く使命感やプレッシャーは全く不要で自由。1行だから余計に表現力が必要だとも思います。

人生いろいろあれど、
3度の飯より邦画好き。
邦画があれば幸せ。

足繁くTSUTAYAに通い、
心躍らせ作品を選ぶ。
電気代が勿体なく省エネで、
毎夜、部屋の電気を消して、
邦画を映し出すTVモニターの、
画面の明かりだけが彼を照らすのです。

真の「日本映画マニア」。
ノートに書き記す記録も喜びも。
ひとつの幸せの形だと思いました。

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