エンタープライズセールスの勝ち筋
こんにちは。SlidePlus宮城です。
前回note「創業エントリ/SlidePlusを創業しました」を投稿した所、様々な方から反響頂きました。ありがとうございます。
そして前回ご覧頂いた皆様、再度のクリックありがうございます。
初めて当社noteをご覧いただいた皆様、ぜひ前回のnoteもあわせてご覧いただけると嬉しいです。
創業エントリで記載させてもらったセールス担当者が輝くコンテンツを全6回(予定)でお送りします。
私がSaaS企業出身のため一つのスタイルとしてご理解ください。
エンタープライズセールスの勝ち筋
BtoB購買とフェーズ管理・フォーキャスト
価値ある提案でWin-Winを創る①
価値ある提案でWin-Winを創る②
価値ある提案を売上に変える
リカバリープランの考え方
セールス担当の皆様、営業企画・営業責任者の方へ送る、勝ち方の一つとなります。
エンタープライズ市場とは
"エンタープライズ"の定義はプロダクトによって変化するため、本noteではシンプルに以下のように定義します。
・従業員1,000名以上 → エンタープライズ市場
・1,000名以下 → SMB市場
統計局によると国内企業数は(およそ個人もあわせて)368万社。法人事業数は178万社、1,000〜1,999名以上は1,866社であり、1,000名以上は4000社。エンタープライズ市場は法人内でも0.2%、国内企業の中でも有数の企業であることが分かります。また、各産業のリーディングカンパニーが存在する領域です。
結論として、エンタープライズ市場とSMB市場は全く違います。同じ陸上でも短距離と長距離で利用する筋肉が違うように、異なる分野なのです。
最もがわかりやすいのは福田さん著作の「THE MODEL」にまとめられています。
上記に加えた私見です。
エンタープライズ・SMB市場の2つに分類すると凡そ上記の特徴に分けられます。市場定義は扱うプロダクトにより異なるのでプロダクトにあわせた傾向と売り方を掴む必要があるでしょう。
予算達成の組み立て方
企業によって評価対象期間や目標の持ち方は様々ですが、セールス活動で変わらないのは「期日」が決まっていることです。
つまり、「いつまでにいくらの売上をつくるか」ということです。
四半期(3ヶ月)であれば、約60営業日。この日数内で予算達成をしなければなりません。
SMB市場
SMB市場では以下の公式でほぼ完結すると考えられます。
MRR50万達成に向けた、3つの変数とその例です。
1.商談数:1日5件の商談を実施すれば、20営業日で100件の商談が可能です。(これは最大値に近い商談数とします)
2.単価:MRR5万円を獲得できるプロダクトと仮定します。
3.受注率:10件の商談のうち1件を受注できる提案力があると仮定します。
達成を組み立てる時、3指標を過去の傾向値から初期仮説を構築。
実際のセールス活動で生じたGap(商談数or受注率である事が多い)を埋めるような施策で期中にチューニングし、予算達成を目指します。
エンタープライズ市場
エンタープライズ市場では、達成パターンを分解し、「的」を定めることが重要です。
例えば、100の売上に到達するための5つの達成パターンがあるとします。
このように、複数のパターンを洗い出し、非現実的なものを除いた後、最も現実的な「的」を定めます。達成パターンを洗い出すと、非現実的な達成パターンが存在することに気づかれると思います。
例えば⑤が現実的に達成に近い場合:
50万の「的」
25万の「的」×2
このを2つ作る必要があります。
次に、保有している案件が「的」に当てはまるかどうかを精査します。ポイントは以下の2点です。
セールス担当者は多いと50件〜80件の案件数を抱えますが、この2つのポイントで精査することで、どの案件に注力すべきかが明確になります。
もし「的」に資する案件を保有してなければ新たに作成しなければなりません。
次に考えるべきは、新規案件の創出パターンです。
まず、過去の受注実績から必要な「的(ここでは50万or25万)」傾向を定量・定性で探ります。
初商談〜受注までの期間である「リードタイム」「提案テーマ」「購買部署」などリサーチする切り口は企業によって様々かもしれませんが、
最も重要なのは「期日」までの受注ですので
「的」となる案件サイズの「リードタイム」を把握します。
例えば、私のケースだと案件サイズを
「S:25万未満」
「M:25万以上」
「L:100万以上」
の3つに「的」を分けていました。
私の営業時代の傾向値として各リードタイムは以下。
「S」・・・60日未満
「M」・・・5ヶ月
「L」・・・9ヶ月
このように分解すると達成する為に必要なM以上の案件を獲得する場合、Qでは作れない事が分かります。
もしチーム内に新人や異動したてのメンバーがいる場合、評価に応じた半期・通期の帳尻を合わせる戦略に切り替えます。
ここまで傾向値を利用しましたが、エンタープライズ市場を新規開拓する場合も同様です。現実的な達成パターンを洗い出し、達成に資する案件創出(Pipegen)を行います。
大事なのは達成パターンを把握し、立てた仮説に応じて実行し、常にGapを埋めていく施策を講じることです。
ターゲットを絞る
この章が本noteの最も重要なポイントです。
「的」に届かない案件には触れないことが肝心です。
よく陥りがちなのは、達成に必要な「的」は25万円案件にもかかわらず、25万円以下の提案が各所で行われてしまうことです。(これ、本当によくあります)
セールス担当者は、目標に届かない案件でも、目の前の顧客に提案したいという欲求に駆られがちです。そして、高額な提案を避ける傾向があります。しかし、達成に届かない規模の案件を増やしてしまうと、達成できないにもかかわらず、リソースが逼迫し、悪循環に陥ります。
セールスは限られた時間の中で与えられた売上を作る「ゲーム」で、誰にも平等に与えられているのは「時間」です。どの企業と商談すべきか、または商談しないべきかを判断することが非常に重要です。
私自身、活動前に「攻めるべきでない企業」を判断するために、平日夜、土日を利用した精査の時間に10時間は使っていました。
SaaSサービスの提供方法の1つに、ユーザー課金があります。たとえば、セールス担当者が利用するサービスを販売する場合、以下のようなアプローチリストを作成します。
①営業人数:ターゲット企業の従業員数や所属営業の人数を把握し、ユーザーオポチュニティの規模をおおよそ推測します。
②役職者接点:接点を持っている役職者の数を確認します。SalesforceやSansanを使い、「役員以上・部長級」の接点数を把握します。
③決算時期の把握:予算編成や執行時期を把握します。
④案件の失注理由の把握:過去の商談履歴から、文脈が利用できるかを確認します。
これらの情報を基に、注力すべき企業の仮説を立てます。スプレッドシート(Excel)上での評価と、実際の商談状況が異なることもあるので、現場での実商談から狙えるかどうかを判断します。ここが最も重要なプロセスでしょう。
リストを俯瞰すると、次の4つのパターンが存在することに気付きます。
1.【最注力】既存顧客/オポチュニティ有り:既に利用しているユーザーがいる場合、ファンが存在する可能性が高く、拡大を目指す糸口が見つけやすい領域です。
2.【注力】新規顧客/オポチュニティ有り:ユーザーはいませんが、将来的に報われる可能性がある領域です。
3.【非注力】既存顧客/オポチュニティ無し:Churn(解約)を防ぐため、守りの姿勢で対応する必要がある領域です。
4.【非注力】新規顧客/オポチュニティ無し:基本商談は行わない領域です。もし行うとしても論点を絞り、短時間で対応しつつも顧客への真摯な姿勢は忘れずに対応する領域です。
1、2の違いには「1:5の法則」が関連します。
このように、「的」に届く案件をどの領域から創出するかを事前に注力領域を決める、その他の商談や業務を縮小させる判断を下すことが、エンタープライズセールスで勝つために必要となるでしょう。
最後に
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
私の意見は偏っているかもしれませんが、エンタープライズセールスでは「やらないことを決める」ことが非常に重要です。
例えば、MRR100万円の案件を期末に5本追うと、他の業務には手が回らなくなります。
業務負荷とプレッシャーで多くのセールス担当者が心身ともに疲弊していくのを見てきました。
このnoteが、皆さんのセールス活動に少しでも役立つことを願っています。次回は「BtoB購買とフェーズ管理・フォーキャスト」についてお話ししますので、引き続きご覧いただけると嬉しいです。