【書評】『イノベーション・スキルセット~世界が求めるBTC型人材とその手引き』からPdMを志す人が学べること。
こんにちは!ファッション業界からテック業界に転職して、プロダクトマネジャーを目指すことになったSleepyheadです。
デザインイノベーションファーム Takramの代表である田川欣哉さんの著書『イノベーション・スキルセット~世界が求めるBTC型人材とその手引き』を読みました。デザインからUXに技術理解、はたまたユーザー理解、ビジネス、会計など幅広い領域をカバーすることを求められるプロダクトマネジャーが学べる姿勢がたくさん含まれた本です。
BTC型人材とは
BTC型人材とは
B = Business(文系)
T = Technology(理工学系)
C = Creativity(芸術系)
これらを統合する人材のことで、専門分野を越境し「新結合」を起こす役割を担います。「新結合」とは、経済学者ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターが使った言葉として知られていて、一見関係なさそうに見える物事をつなぎ合わせる、という意味で捉えられるかと思います。
ビジネス領域で仕事をしていればOK、というわけではなく技術やデザインにも理解があり、それぞれの専門家と対等に渡り合えるスキルセットを持っていることがBTC人材であるということです。
プロダクトマネジャーに求められるスキルとかなり近しいと思います。では具体的にどんな学びが得られるか、以下でお伝えしていきます。
プロダクトマネジメントとデザイン思考
田川さんは著書の中で「デザイン思考」を以下のように定義しています。
ソフトウェアを中心に据えてプロダクトを開発し、エンドユーザーを獲得していくフローは、デザイン思考を元に考えられるべきだろうなと思いました。つまり、ユーザーが持つ人間的で具体的な課題を起点としてプロダクトを作りましょう、という話です。
プロダクトマネジメントを語る上で「ユーザーインタビュー」の重要性は周知されています。本書の中では、デザイン思考を実践する上でユーザー理解の重要さを、Dysonの新しいドライヤーを開発する時のエピソードを持って説明されています。
Dysonの創業者である、ジェームズ・ダイソンは、新しいドライヤーの開発をスタートさせる際に、彼の企画コアメンバーをロンドンの美容室に送り込み、一ヶ月間実際に仕事をしたりドライヤーがどのように使われているのか、つぶさに観察したそうです。
"n"を定量的に集めるデータのサンプル数だとすると、従来のユーザー理解のためのアンケートであれば、大規模なアンケートをして定量的なデータを集めるケースが一般的だったかなと思います。
しかし上記のDysonのアプローチはn=1。具体的なユースケースにグッとズームアップしていくスタイルです。具体的で高解像度なユーザー理解をベースにドライヤーの設計に取り組んだわけです。
もちろん特定のユースケースを深掘りしていくユーザー理解の手法なので、ある特定のユーザーが持つ課題に偏っている可能性がありますよね。しかし、仮説ドリブンで開発を進めながらプロトタイプを作って検証したり、定量調査を行うことで普遍性を確かめていくことでデザインを改善していくことができます。
ソフトウェア開発だけでなく、プロダクトデザイン自体にアジャイルなスタンスを持ち込むことが重要そうです。
プロダクトを旅客機に例えるなら
仮説ドリブンでプロダクト開発を進めていると、最初に計画していた機能要件やデザイン、オペレーションに足りない要素があると気がついたりします。コアな技術が出来上がり、PoCも終わって「行けそうだ!」と思った後に、続々と必要な課題が浮かび上がってきたり。
仮説を持ってプロダクトを作り上げる過程を旅客機に例えています。プロダクト開発や周辺の課題に対しての解像度を高く持つ必要性がわかりやすくて「確かに…」と思います。
大きなアイデアを駆動させる小さなアイデアを生み出していく。くまなくアイデアを見渡して、一つのアイデアにまとめ上げていくことがプロダクトマネジャーに求められることなのかな、と想像します。
学習の4つの Aの"Awkward"の話
プロダクトマネジャーとして活躍するためには幅広い分野を学習する必要があるな、と僕は日々感じています。特に未経験でファッション業界からやってきた僕にとってあらゆることが勉強の対象となって結構きついな、と思うことも多々あります…
田川さんが著書の中でエイドリアン・スライウォツキーの「学習の4つのA」という考え方を引用しています。
学習を進めていると、必ず「違和感」の状態を通過します。本当に自分はこの分野が向いているのかわからない、みたいな感じです。そこで諦めずに学習を続けることである程度の成果を達成し、自分の知識や経験の中に取り込まれて一体化していきます。
特に新しいプロダクトを作る上ではドメイン知識や技術理解など学習するべことがたくさんあります。このステップの違和感の上に立っていると理解しておくことで、学習しても停滞している感覚を払拭できるんじゃないかと思います。特に僕みたいな経験が浅いプロダクトマネジャーは覚えておくと気持ちが楽になるんじゃないでしょうか。
センスはジャッジの連続から生まれる話
デザインやクリエイティビティを実践する上でセンスが求められるから自分にはハードルが高そう…と思う人も多いと思います。
田川さんは「センスはジャッジの連続から生まれる」といいます。
そして、そのジャッジを可視化していく学習方法が「ふせんトレーニング」です。
このジャッジを通して自分の「好き嫌い」や「良し悪し」の軸を作り上げていくことがセンスを磨く、ということなのでしょう。極論センスは好き嫌いでしかないと田川さんは言いますが、同時にその好き嫌いで仕事ができるデザイナーこそプロフェッショナルとも言えるはずです。
幅広い分野をカバーする人材
プロダクトマネジャーはビジネス・テクノロジー・デザイン全てにおいて高いレベルが求められる職種であり、得意分野は人によってさまざまです。
自分が得意としている領域に特化していくのもキャリアの選択肢の一つですが、BTC人材を目指して積極的に専門分野を越境していくこともハードルは高いけど面白そうです。
優しい言葉でBTC人材について語られている『イノベーション・スキルセット~世界が求めるBTC型人材とその手引き』。ぜひ気軽に読んでみてください。