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cdefgah_310
土嚢に預けた銃身をゆっくりとずらしながら、照準を群衆に向ける。
デモ隊の中に混じる、友を自称する男を探しているのだ。
「理解はするけれど、受け入れない」
この言葉が何を意味するか、友に説明する気にはなれなかった。彼とはどうにも生きて来た道が違いすぎるのである。根底が違うのであれば、話し合いも意味をなさないと安原は思っている。なぜ自分だけが相手を受け入れなければいけないかも分からなかったし、なんとか必死に生きてきたことを否定される言われもなきのだ。
やがて銃口はある一点で止まった。引き金に置いた指は震えもせず、心は強張りもしない。
ほら、と安原は思った。自分にはこれが似合いなのだ。
「受け入れない」
お前は、敵だと、宣言したつもりであった。
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