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『異世界でも本屋のバイトだが、アマゾネスのせいで潰れそうだ』第6回

≪ファッション雑誌はモンスター?≫

女性の美の追求というのは何処の世界も同じようで。

ここ異世界においても、その探究心は凄まじく、執念すら感じるほどである。

基本、朝の品出しは店長と早番の僕の2人でやる。月に何度かある女性誌の発売日は、ある意味地獄だ。

「この、太ったオーク向けの『素敵なオーク様』ってのは?」

「それは若い子向けのファッション誌。一見、婦人誌っぽいけどな」

「特集が『目指せエルフ顔!』って。ブタ鼻ですけどね」

「ま、どの人種の女も、目指すは美の頂点エルフだからな」

僕はパラパラと中を見た、怖いもの見たさで。「この夏は着痩せするストライプ柄を着る…ダメだ、どのモデルもガッチリし過ぎてて全然痩せて見えない!」

「やめとけやめとけ。見てもサッパリ分からんから、どうせ」店長は達観した表情で、淡々と雑誌を並べている。その動きが不意に止まった。

「月刊ヘアカラーの特集は『腋毛』かぁ。トレンドは赤ね。追加だなコレは」

ヘアカラーなのにワキ? つうかワキ毛染めて誰が見る? 誰得?

「それ、追加ですか? 売れますかねぇ」

「売れるんだよ、この腋毛特集。100冊ぐらいは」

「100冊!!!」

『anan』で言う「セックス特集」みたいな名物企画なんだろうか?


この世界の書店業、まだまだ奥が深い。


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