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剣道の稽古に立ち会って「空気を震わせるほどの大きな声を出してみたい」と気づいた話

「大きな声を出すのは、相手を威圧するためでもあるけど、自分に喝を入れて集中するためです」

毎週2回、小学生と保育園の娘を剣道の稽古に引率している母親だ。私にはまったく剣道の経験はないが、夫が子どもの頃に剣道をしていたので、娘に習わせたいと思い、通わせている。そんな感じで私は剣道について素人だけど、だんだん剣道の稽古に引率するのが好きになった。

毎回、先生から身が引き締まる話を聞かせてもらえるからだ。


大きな声を出すのは、自分に喝を入れるため

背筋をシュッと伸ばし、胴着を着こなし竹刀をサッと振る。稽古をつけてくださる先生方は、皆とてもかっこいい。御年70歳を超えているであろう先生方が、娘に熱心に指導してくださる。なんてありがたいことだろう。

稽古の前には、子どもたちが正座をして2列に並び、竹刀を左に置いて面を外し、先生の言葉に耳を傾ける。その光景がとてもいい。

今日の話は「大きな声を腹から出す理由」についてだった。

普段は静かに喉で声を出している

剣道の道場では、いつも大きな声が響き渡っている。先生方は「もっと声を出して!」と指導し、子どもたちも「ハイ!!!」と大きな声で応えている。

一方で、普段の私たちの生活はどうだろう。東京のマンションで暮らしている私たちは、周囲への配慮から大きな声で喋ることを避けている。「近所迷惑だから静かにしなさい」と注意することもしばしばで、私自身も幼少期に「うるさいからやめなさい」と叱られた記憶が強くある。その名残か、公衆の中で大きな声を出すことが苦手だ。

そう、私はもう何年も大きな声なんて出していない。いや、そもそも出し方を忘れてしまったのかもしれない。

腹の底から出るエネルギーがのった大声

しかし、剣道の道場には、大きな声が響き渡ります。「メーン!」「ヤーーーーー!」。先生方は「『めぇぇぇ〜ん』ではなく『メーーーーン!!』としっかり声を出しなさい」と指導している。

娘たちも先生に続き、腹の底から声を出し、それはどんどん大きく覇気を帯びる。稽古を重ねるたびに、彼女たちの声の質が良くなっているのを見て取れる。

子どもたちの大きな声には、気持ちよさがある。スッキリとして覇気があって、勢いも感じられる。単なる大声ではなく、エネルギーがのった「腹から出る声」なのだ。

剣道で大きな声を出す理由は、相手を威嚇するため、そして自分の気持ちを奮い立たせ集中するため。この声は、ただの音ではなく、気合いそのものだということを教えてもらった。

私には出せない大きな声

道場に響く子どもたちの大きな声を聞きながら、自分自身に矢印が向く。「私にはこんな綺麗な大きな声は出せないな」と。何年も出していないし、そもそも出したことがあるのかも怪しい。

普段の生活では、大きな声を出す機会がない。多くの大人も同じではないでしょうか。スポーツをしている人や声を使う職業の人以外は、私のようにパソコンに向かう生活やオフィスでの業務が主な日常で、Zoomで会話する際も、抑揚のあまりない省エネな声で話しているのかもしれない。

出し惜しみせずに大きな声を出してみたい

そんなことを考えているうちに、1時間半の稽古が終わってしまった。先生の締めの言葉が胸に刺さる。

「今日はみんな大きな声が出ていました。でも、もっと出ます。出し惜しみせずに全部使って声を出しましょう。練習で出し惜しみして、本番で出そうとしても出ませんよ。」

出し惜しみ…
そう言われてハッとした。私はつい明日に備えて余力を残してしまう。「念のために」と出し惜しみしてしまう。練習で出し惜しみをしていたら本番で出せないのだ。毎日に練習はないし本番もない。「今を全力で生きる」ことの大切さを教えてくれた気がした。

自分を奮い立たせる声を出したい

剣道の道場で子どもたちの大きな声を聞きながら、「私もこんな声を出したい」と思った。そして、自分が大きな声を出すことをすっかり諦めていたことに気づいてしまった。

道場中に響き渡るような、空気を震わせ、相手に伝わり、自分を奮い立たせるような良い声。そんな声を出せるようになりたいと思いながら、娘の竹刀袋を2本背負って、マンションに帰ってきた。


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坂口佳世|ぐっち
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