長谷部誠選手の「心を整える」を読んで
この本には、長谷部選手の具体的な経験を元に、勝つための心の持ち方や習慣が書かれていました。今回はそれらについて、メンタルコーチの視点でなぜその習慣が良いのかを考えてみました。特に心に残った8つの習慣を紹介します。
①意識して心を鎮める時間を作る
30分間ベッドに横になり、何もしないことで、頭の中、心の中のざわつきを鎮める。普段、自分を見つめる時間というのは、意識しなければほとんどない。だからこそ、意識的に取り入れることが大切であり、自分と向き合うことで自分を深く知り、自分の状態がわかるのだと思う。目標達成において、まず初めにやることが「現状把握」である。自分の状態を知った上で、今の自分は何をしたらいいのか?を考えることができる。そう言った意味でも、とても優れた習慣だなと思う。
②整理整頓は心の掃除に通じる
ドイツのことわざに「整理整頓は人生の半分である」というものがあるらしい。こんまりの「人生がときめく片付けの魔法」にもある通り、このことわざは言い当てていると思う。部屋が片付いていると心も落ち着く。心がザワついている状態でいい作業ができるはずがない。周りの環境が自分に及ぼす影響は無意識のうちに必ずあるし、それは意外と大きい。上手くいっている人の部屋が汚かった試しはない。整理整頓が思考と心をクリアにするんだと思う。
③頑張っている人の姿を目に焼き付ける
真夏の炎天下の工事現場のおじさん。子どもを乗せて自転車を走っているお母さん。長谷部選手は身近な頑張っている人を見て、自分も頑張ろう!と思える。そもそもそういう人に気付ける余裕があることが大切だと思うのと同時に、余裕がなくなる前にパワーをチャージすべきなんじゃないかと思う。
④いつもじいちゃんと一緒
寡黙なじいちゃんが、プロか大学進学か悩んだ時に「マコト、人生は一度しかないんだよ。男なら思い切って挑戦するべきではないのか。」と言ってくれた。長谷部選手は、それから迷うことがある度に「じいちゃん、どうしようか。」と問いかける。心の中に自分以外の声があることはとても強いし大事。その人なら何て言うか?その人が見ていたらどう思うか?など、自分にとっての一つの指針となるような存在。それがあることで、自分を客観視しやすくなり、決断するスピードも上がる。確かな決意や覚悟を持って先に進めるようになる。
⑤常に正々堂々と勝負する
ドイツのチームでプレー中、日本語を話せるコーチが気を遣って日本語で話してくれたのを「やめてくれ」と断っていた。理由は、他の選手からすると何を話しているのか分からないから不気味だし、そのおかげで試合に出れていると思われたくなかったから。「普段から正々堂々としていれば、例え陰口が聞こえてきたとしても、全く気にならない。」全くその通りだと思う。大事な局面でどっしりしていられるかどうかは、日頃の行いによるところが大きい。だから長谷部選手はいつどんな時でも堂々としていてカッコいいんだなと思った。「常に」正々堂々とすること、ズルしないことが、自分はやってきたから大丈夫だという自信となり、それが結果に繋がる。
⑥勝負どころを見極める
長谷部選手はリーグ優勝がかかる大事なシーズンに膝の怪我をしてしまった。シーズンが終わるまで手術せずに騙し騙し出場するか、手術し一度離脱するかの2択を迫られた時に、長谷部選手は、手術を選択した。シーズン終盤で必ず勝負どころがくると予想したからだった。その予想通り、シーズン終盤に大事な試合が訪れ、そこでフル出場し大活躍した。この選択ができたのは、目の前のことだけに捉われず、未来のことへ考えを巡らせる余裕があったからだと思う。常に冷静に、自分の状況を分析し、長い目で見た時のことを考え、最善の手を打てることが大きな強みだと思う。そして長く活躍し続けられる選手の特徴なのだと思う。目の前のことに集中することは大切だけど、何かの選択をするときには、焦らず未来を見据えることも大切だと気付かされる。
⑦楽な方に流されると、誰かが傷つく
学生時代に塾をサボり、ゲームセンターに行ってしまった長谷部選手。その時、母親や監督の信頼を裏切ってしまったと深く反省。それ以来、楽な方に流されそうな時は、両親や恩師など色んな人を思い浮かべることで弱い心にブレーキをかけている。そうやって自分の中に「この人は裏切りたくない」と思える大切な人がいることがすごく大事だと思った。人間一人の力には限界がある。自分のためだけじゃなく、誰かのためと思えるた時、それはすごいパワーになる。
⑧感謝は自分の成長につながる
「僕は関わる人だけじゃなく、その人たちの家族も思いやれる人間になりたい」という一文から目指している理想の人間像の大きさが伺える。また「感謝の気持ちを忘れなければ、どんどん自分に周りの人がポジティブなエネルギーをくれる」とも書いてある。そんな人が応援されないはずがない。関わる人の家族からもエネルギーをもらえる人であるとするなら、とても大きな力をもらえることになる。そうやって関わる人の期待や応援を力にできるから、長く活躍できたのだろうなと思った。
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