[MasterClass]ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣
1%の改善がもたらす力
今回の記事では、ジェームズ・クリアー氏の習慣形成に関するマスタークラスを紹介します。特に「1%ずつの改善」の考え方を中心に、良い習慣を作り出し、悪い習慣を断つ方法について解説します。この記事を通して、目標設定よりも重要なシステム構築のポイントや、習慣とアイデンティティの関係性について学びましょう。
目標ではなくシステムを構築する
多くの人は目標を設定することが成功への鍵だと考えがちですが、クリアー氏はシステムの構築がもっと重要だと説きます。目標を設定しても、達成のための仕組みがなければ進展は難しいのです。一方で、日々の習慣に焦点を当て、それを継続する仕組みを作ることで、時間をかけて大きな成果を得ることができます。
具体的な例として、英国の自転車チームが「限界利益の集約」(aggregation of marginal gains)という手法を用い、小さな改善を積み重ねてツール・ド・フランスでの優勝を果たした事例が挙げられます。
この手法では、サイクリングに関連するほぼすべての分野で1%の改善を目指しました。たとえば、軽量タイヤの使用や人間工学に基づいたシートの設計、さまざまなマッサージジェルの試用、風邪やインフルエンザのリスクを減らすための手洗い方法の学習、さらに快適な睡眠を得るための枕の選定など、細かい部分にまで改善を加えていきました。その結果、英国チームは3年以内にツール・ド・フランスで優勝するという目標を達成したのです。
習慣がアイデンティティを形作る
習慣について議論する際、外部的な結果に目が行きがちです。ですが、習慣が重要な真の理由は、私たちが行うすべての行動が、自分がなりたい人物像への投票だからです。 習慣は、私たちが自分自身に語る物語を形作ります。 例えば、「甘いものが好きだ」と言うのは、自分がどのようなものを食べ、どのようなものを欲しがるかについての物語を自分自身に語っていることになります。
アイデンティティを再構築したい場合、次の 2 つのステップがあります。
●なりたい人物像を把握することから始めます。
●次に、その望ましいアイデンティティに貢献する小さな勝利や小さな習慣を考え出します。
例えば、作家になりたいのであれば、「毎日文章を書くタイプの人間である」というアイデンティティを持つことになります。そして、そのためのシステムは、「毎日午前 9 時に机に座り、空白のドキュメントを開いて 100 語書く」というものです。
毎日行う小さな習慣は、望ましいアイデンティティを強化します。それは、そのタイプの人間であることへの投票になります。 1 通のメールを送信したり、1 文を書いたり、1 分間瞑想したりと、その瞬間は小さな行動ですが、そのタイプの人間であることの証拠を提供してくれます。 このような証拠を積み重ねていくことで、自分の物語のその側面を信じる理由が増えていきます。
これは、長期的には非常に強力になります。なぜなら、一度物語を信じ始め、何かの証拠を持ち始め、自分が何者であるかのその側面に誇りを持ち始めると、その習慣を続けるあらゆる理由が得られるからです。
習慣ループの4つのステップ
クリアー氏は、習慣形成を理解するために「習慣ループ」という4つのステップを提唱しています。このプロセスを理解し活用することで、習慣を効率よく改善できます。
1.きっかけ(Cue): 習慣を開始するトリガー
習慣ループの第一ステップである「きっかけ(Cue)」は、特定の行動を引き起こすトリガーのことです。きっかけには以下の種類があります。
物理的きっかけ: スマホの振動、目覚まし時計の音など。
視覚的きっかけ: お菓子の入った皿、散らかった部屋など。
聴覚的きっかけ: 音楽や車のクラクション。
感情的きっかけ: ストレスや退屈感。
時間的きっかけ: 毎朝や特定の曜日。
場所的きっかけ: 職場や自宅など。
行動的きっかけ: 他の行動を終えた後。
きっかけをコントロールする方法
良い習慣を形成する: 目立たせることで行動を促す。
例: 瞑想を習慣化するために、瞑想用のクッションを目立つ場所に置く。
悪い習慣を断つ: 目立たなくすることで抑制する。
例: スマホゲームをやめるために、アプリを隠し通知をオフにする。
きっかけを意識的に管理することで、良い習慣を取り入れやすくし、悪い習慣を断ち切りやすくなります。これが習慣形成の第一歩です。
2.欲求(Craving): きっかけに基づく行動への動機
欲求(Craving)は、習慣ループの2番目のステップであり、きっかけによって特定の行動をしたいという衝動、または欲求です。
重要なのは、欲求とは単にきっかけを認識した後に生まれるものではなく、そのきっかけに対して脳が予測する「快感」によって引き起こされるということです。
例えば、仕事から疲れて帰宅した時に、テーブルの上にクッキーの入った皿を見たとします。この時、クッキーを見るという「きっかけ」に対して、脳は「クッキーは甘くて美味しい」という予測を行います。そして、この予測によって「クッキーを食べたい」という欲求が生まれます。
この「快感」の予測こそが、私たちを習慣的な行動へと駆り立てる原動力となります。つまり、習慣を形成するためには、行動によって得られる報酬を魅力的に感じることが重要なのです。
欲求を高める方法の例:
習慣をポジティブな感情と結びつける: 例えば、早起きの習慣を身につけたい場合、「早起きすると朝日を浴びて気持ちいい」「静かな朝の時間を有効活用できる」といったポジティブな感情をイメージすることで、早起きに対する欲求を高めることができます。
目標達成のイメージを鮮明にする: 例えば、貯金の習慣を身につけたい場合、貯金によって実現したい夢や目標を具体的にイメージすることで、貯金に対する欲求を高めることができます。
このように、欲求(Craving)は習慣ループの中で重要な役割を果たしており、欲求を高めるための工夫をすることで、習慣を形成しやすく、また継続しやすくすることができます。
3.反応(Response): 実際の行動
反応(Response)は、習慣ループの3番目のステップであり、「欲求」を満たすために実際に取る行動を指します。この段階では、「欲求」に基づいて具体的な行動に移します。
例えば、以下のようなケースが挙げられます:
・スマホの通知音(きっかけ)でメッセージを確認したいという欲求が生まれ、実際にスマホをチェックする。
・仕事で疲れた(きっかけ)ことで甘いものを食べたいという欲求が生まれ、お菓子を食べる。
・朝起きた(きっかけ)ことで顔を洗いたいという欲求が生まれ、洗面所へ行く。
これらはすべて、欲求に基づいて行動に移している具体例です。
よい反応を引き起こすための工夫
クリアー氏は、習慣を改善するための「第三法則」として簡単にすることを提唱しています。この法則は、習慣化したい行動のハードルを下げ、自然と反応を引き起こしやすくするための方法です。以下に具体的な工夫をいくつか挙げます:
物理的な環境を整える
例:運動する習慣をつけたい場合、運動着やシューズを目につく場所に置く。2分ルールを活用する
例:習慣を小さな行動に分解し、「読書を習慣化したいなら、1ページだけ読む」ことから始める。習慣を阻害するものを取り除く
例:スマホゲームを減らしたい場合、アプリを削除したり、スマホを手の届かない場所に置く。“If-Then”プランニングを活用する
例:「仕事から帰宅したら、すぐに運動着に着替える」といった具体的な計画を立てる。
4.報酬(Reward): 行動の結果として得られる満足感
報酬(Reward)は、習慣ループの最後のステップであり、反応によって得られる結果です。このステップは習慣を形成・維持する上で非常に重要な役割を果たします。なぜなら、私たちの脳は報酬を得ることで「この行動を繰り返す価値がある」と認識し、次回も同じ行動を取りやすくなるからです。
報酬には以下のような種類があります:
物質的な報酬:お菓子、お金、プレゼントなど。
精神的な報酬:達成感、満足感、安心感、楽しさなど。
社会的な報酬:称賛、承認、感謝、所属感など。
報酬を効果的に活用する方法
クリアー氏は、習慣を改善するための「第四法則」として「満足できるようにする」を提唱しています。これは、行動に満足感を伴わせることで報酬を得やすくし、行動を繰り返したくなる仕組みを作ることを意味します。以下は報酬を効果的に活用するためのポイントです。
即時性
報酬は行動の直後に得られる方が効果的です。脳は即時的な報酬を優先する傾向があるため、「すぐに報われる感覚」が習慣化の鍵になります。
例:運動後に好きな音楽を聴いてリラックスする。具体的な目標に対する進捗の見える化
営業マンTrent Dyrsmid 氏の事例:彼は、毎日100件の営業電話をかけるという目標を達成するために、「ペーパークリップを移動する」という視覚的な報酬システムを導入しました。 1件電話をかけるごとにペーパークリップを別のカップに移すという単純な行動は、彼に日々の進捗を目に見える形で示し、モチベーションを維持するのに役立ちました。 2年後には、彼は会社で最も大きな顧客基盤を持つ、最も成功した営業担当者の一人となりました。持続可能性
一時的な満足感だけではなく、持続的な利益を伴う報酬を選ぶことが大切です。
例:お菓子を食べる代わりに運動を続けることで健康や体力の向上を得る。
習慣トラッカーの活用
ジェームズ・クリアは、報酬の効果を最大化するために習慣トラッカーを推奨しています。カレンダーに印をつけたり、アプリを利用したりすることで、進捗が可視化され、達成感と継続意欲が高まります。
良い習慣を作る4つの法則
1.目立たせる(Make It Obvious)
良い習慣:行動の「きっかけ」を目立たせる(例:運動着を見える場所に置く)。
悪い習慣:きっかけを目立たなくする(例:お菓子を視界から隠す)。
2.魅力的にする(Make It Attractive)
ポジティブな側面を強調(例:運動後の爽快感を意識)。
他の楽しみと結びつける(例:音楽を聴きながら運動)。
3.簡単にする(Make It Easy)
行動を簡単に分解(例:読書を「1ページ読む」から始める)。
「2分ルール」でハードルを下げる。
4.満足できるようにする(Make It Satisfying)
明確な報酬を設定(例:運動後にスムージーを飲む)。
達成感や喜びを感じられる仕組みを作る。
まとめ
ジェームズ・クリアー氏の習慣形成に関するマスタークラスは、「1%の改善」というシンプルな考え方が、どれだけ大きな影響を持つかを教えてくれます。目標を追い求めるだけでなく、日々の行動を支えるシステムを構築し、習慣を形成するプロセスを楽しむことが重要です。
ぜひ、この記事で紹介した法則を実践し、小さな改善を積み重ねて理想の自分に近づいてください。