マインドフルネスと猫のいる生活 22
知り合いの住職によれば、瞑想をやり過ぎると統合失調症や自律神経失調症に罹患するリスクがあるとのこと。これは俗に禅病と呼ばれています。
もうひとつの弊害は、魔境に入ってしまうことだそうです。瞑想をやり続け、恍惚状態になると、何かを見ることがあるらしいですね。それが仏だったり、宇宙と一体化した自分だったりすると、「悟りを開いた!」と勘違いし、カルトなどに走ってしまう行為のことを、「魔境に入った」と表現しています。
臨済宗の開祖は、修行僧たちが魔境に踏み込んでいくことを防ぐため「仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し、父母に逢うては父母を殺し、親眷に逢うては親眷を殺し、始めて解脱を得ん」と戒めたそうですね。
なるほど……(・。・)
お坊さんはあくまで謙虚で真面目。カルトの教祖になるような人は、高慢な勘違い野郎ということでしょうか。
話はいきなり変わりますが、平成が始まって間もないころ、浜田山の駅前で、不気味なお面被って「しょーこー、しょーこー、あさはらしょーこー」と踊ってる人たちがいました。
衆議院議員総選挙に立候補する彼らのグル、麻原彰晃の応援パフォーマンスだったのです。「こりゃー当選は難しいだろうな」とみんなが思いましたがその通り、グルと、同じように立候補した真理党の幹部二十四名、計二十五名は、敢え無く全員落選しました。
その後、彼らがサリンによるテロを起こすのは、ご承知の通り。
オウム真理教が世間の耳目を集め始めた頃、麻原尊士の空中浮遊写真が話題になりました。写真週刊誌に載ったそれを見ると、確かに座禅を組みながら空中に浮いているようにも思えます。
「尊士は空を飛べるんです!」
信者たちは自慢げに語りました。スゲーなとわたしも唸りましたよ。遂に空を飛ぶ人間が現れたか。修行すると、信じられないことが本当に起きるんだなって。
しかし、程なく同じ週刊誌に、ベンツの後部座席に納まっている尊士の写真が載りました。10,000ccのベンツだそうです。キャデラックより排気量が多い、最高級ベンツです。まるで大企業の重役のような雰囲気の尊士を見て、わたしは
「えっ!? なんでベンツなんか乗ってんの?? 空、飛んできゃいいじゃん」
とマジで思いました。信者の方々からこういう声は、残念ながら公には聞こえてこなかったようです。
これがカルトの怖いところですね。みんな魔境に入っていたのです。
瞑想して恍惚状態に入って、偶然、法衣を来た禿頭の人物が夢の中に現れたからといって
「涅槃にワープした!」
「俺は、悟りを開いた!」
「俺こそ仏陀だ!! ガーッ! ハルマゲドンだーっ! ガーッ!!」
となってしまうのは、極めて危険な状況です。
話はもとに戻りますが、さすがにわたしは、魔境にはハマらないと、思いました。瞑想をして痙攣を起こしても、意識はちゃんとあります。ですから、痙攣を止めようと思えばできました。恐らく、気功でいう「小周天」のようなものだったと今では思います。
住職からは、くれぐれものめり込み過ぎに注意するように、と助言をいただきました。彼は
「禅の場合は歴史があり先師や師匠がいて行うので、そのようなこと(禅病になったり、魔境に陥ったりすること)になった場合でも対処しやすいですが、マインドフルネスは宗教的な部分をカットしたため、入りやすく広がりやすい反面その点は弱くなってしまいました」
と述べました。
正にその通りなのでしょう。一人で瞑想しているので、いざおかしなことが起きても、誰も助けてはくれないのですから。
とはいえ、やり過ぎないように注意するけど、瞑想を止めるつもりはありませんでした。
そして程なくして、さらなる肉体的変化が起きたのです……。(・。・)